湖の不思議

あっくる

第1話 湖畔からの眺め

 夜の湖畔は魔法にかかったように煌きを放っていた。心なしか不思議な空気感が漂っていた。月夜にきらきらと湖面が光り輝き美しかった。


 昼間は貸しボート屋から手漕ぎボートを借り、端から端まで漕いでその情景を味わった。波も静かで小鳥たちのさえずりが聞こえる。 見渡す限り周りは森に覆われている。

 手漕ぎボートに乗ったのは何年ぶりだろう。小学生の頃、父と一緒に乗って以来だ。自分で漕ぐのは初めてかもしれない。思いの外、水の抵抗を感じ重く感じるが決していやではない。一緒に乗っている女性は、白いワンピースにつばの大きな帽子を被っている。風でとばされないように手で押さえている。彼女は僕のお付き合いしている女性であった。付き合って約1年、そろそろ結婚でもして落ち着こうかとも考えている頃合いだった。少なくとも僕はそう思っていた。

 僕たちの出会いはごく平凡で友達の紹介だった。僕は一目で彼女を気に入った。

名前は相羽奈津子。僕は小酒井透。正直名前なんてなんでもいいのだけれど一応書いておく。

初めて会った日、紹介してくれた友達を交え喫茶店でたわいもない話をしたのを覚えている。何か特別な特徴があるとかといった女性ではなかったけれどもその雰囲気は僕をとてもリラックスさせてくれた。髪をかき上げる仕草も僕はとても気に入った。彼女が僕をどう思っていたのかは知らない。きっと退屈な人間だと思ったはずだ。

その日を境に二人で会うようになりごく自然に付き合うことになった。

2人ともインドア派ということもあって、趣味も合ったし価値観も近かった。

そんな日々の中で、小旅行として湖畔の近いロッジを借りてつかの間の休日をのんびり過ごしてみることにした。

 そして平凡ながら手漕ぎボートに乗った訳だ。湖畔を往復して地上にもどってから僕たちは借りたロッジへ戻った。

 ロッジに戻りコーヒーを飲んで読書して過ごした。その後、夕暮れ時に抱き合った。静かな空間が心地よくそのままつかの間寝てしまった。

 気付いたら夜になっていた、彼女はまだ寝ていたので、服を着て外に出てみた。

昼間行った湖畔の淵まで歩いて行った。湖畔をのぞいたらこちらを見返す何かがいた。

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