去る決意

シヨゥ

第1話

「生きることをベースに考えないといけないよね」

 そんな会話が聞こえてくる。

「こんな環境じゃ生きていけないと思ったら環境を変えないと」

「生きていくことは可能だとしても?」

「可能だとしても。毒ガス充満している部屋でもしばらくは生きられるんだよ。でも次第に弱って死んじゃう。それが分かっていてその場にとどまるのは自殺行為だよ」

 昼時のレストランの会話としてはなんて物騒な会話だろうか。

「自殺行為か。たしかにね。このまま今の場にいたらいずれダメになるのは分かっているんだ。たぶん自分で引き金を引くね」 

「そうなる前に、さ」

「決断しろと言うんだね」

「そうそう」

「分かったよ。ちょうど空気のいい世界を見てみたいと思っていたんだ」

「おめでとう。君の決断を祝福しないと」

「昼間っから酒かい? 怒られちゃうよ」

「怒られたっていいじゃない。どうせ去る会社だよ」

「それもそうだね」

 自分の部下なら叱りつけるとこだろう。だが見ず知らずの他人の事。ここは新たな門出を祝うのが正解だろう。

「おめでとう」

 そう独り言ちて席を立つ。決断した勇気にどうか称賛を。そう思わざるをえない。

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去る決意 シヨゥ @Shiyoxu

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