そう

棚花束

Episode1 老人

 私は今、非常に退屈である。色のはげた机に向かい、ただ何をするでもない日々を過ごしている。これほどまでに暇なことがあろうか。ああ、実に暇である。

 ──こんな日々が始まったのはつい最近という訳では無い。もう何年もこんな暮らしなのである。

 元々私はサラリーマンだった。しかしある日突然、それもなんの前兆もなく上司にこう言われたのだ。「君を解雇させてもらう。」私は理解が出来なかった。覚束無いながらも、あの会社では一生懸命務めてきたつもりだった。人生何が起こるかわからないとはまさにこの事である。結局理由も分からないまま会社を後にすることになった。もっと質問すべきだったと、今では後悔している。

 それから約六年、ずっとこんな暮らしなのである。

 そろそろ寒くなってきた。暖炉に薪を焚べようか。

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そう 棚花束 @acacia_maqen

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