なんか読まなくてもいい話

砂鳥はと子

その1 怖いもの


 怖いもの。


 誰にでも一つはある怖いもの。


 今回はそんなものの話。


 

 私が怖いもの、その1「でかい水」


 要するに海とか川とか湖のことです。私、子供の頃からかなづちでして、泳げないまま大人になってしまいました。そのせいか今でも「水」は怖くて仲良くなれないものの一つ。


 小さい頃に湖を見に行ったことがありました。大きな湖に橋がかかってて、そこを渡って何か見に行ったんですよ。多分ダムなのかな。何を見たかはもう覚えてません。


 私の記憶にあるのは橋の遥か下に横たわる暗い青緑の湖面。湖ですから波はありません。その静かな湖面を見ていると吸い込まれて、あの水の中に連れ込まれそうな恐怖をいつも感じていました。


 川なんかも怖いです。小さい川はそこまで怖くないですが、一級河川なんかは湖を見た時と同じ感覚になります。流れもありますから、見ているとそれだけで目眩がします。


 家の近くにはその一級河川があるので、自転車で渡ることがありますが、なるべく水面を見ないようにして渡っています。藍色の水面を見ているだけでぞくぞくします。思い出すだけで、ちょっとくらっとするくらい。


 海は真上から見る機会がそんなにないので、川や湖ほど恐怖はないです。


 空撮映像なんかを見ると南の島の美しい海でもやはりぞわりとします。


 ともかく巨大な水の塊は苦手です。

 

 


 私が怖いもの、その2「エレベーター」


 デパートとか駅とかに動く階段ありますよね。あれが怖いです。どこが?と思われる人もいるでしょうが、上手く乗れるかいつもまごつくんですよ。


 子供の頃に段差の隙間に連れ込まれるような感覚があって、大人になってもどことなく怖いんです。


 私は水でも段差でもそこに引きずり込まれそうって思うと怖くなるんです。実際にそんな人を見てなくても怖いんです。


 乗る時に一瞬ためらう。後ろに人がいると失敗するんじゃないかってちょっと冷や冷やします。



 

 私が怖いもの、その3「電車とホームの隙間」


 隙間怖くないですか?


 子供の頃に「落ちたらどうしよう」と思いながら乗っていた名残が未だにあるんです。今はそこまで怖くはなくなりましたが、足元をしっかり確認して、隙間を跨いだことを視認しなければ不安になる。


 電車やホームにきちんと立てた時の安心感と言ったらありません。


 小さい頃はあの隙間が今より大きく感じましたから、落ちるという恐怖心があったんだと思います。



 

 私が怖いもの、その4「背の高い草」


 木とかは全然怖くないです。でも草花が自分より大きいと何か身構えてしまって怖いんです。ヒマワリなんかきれいですけど、実際に自分より高いヒマワリを目にするとちょっとぎょっとする。見下されてると怖い。


 ヒマワリは一般的に大きくなるものみたいな認識があるので、そんなしょっちゅう怖くはなりませんが、名も知らない背の高い雑草は怖いです。


 道端をあるいていて、ふと横に大きな草があるとびくっとしてしまいます。


 確か菊の仲間の、駐車場とか空き地によく生えてるあれとか。セイタカアワダチソウとかも怖いです。見ているだけで背中がぞわぞわするんです。


 どうしてかは自分でも分かりません。


 何か襲われそうな気がしてくるんです。


 ちなみに雑草に襲われた経験はありません。

 




 私が怖いもの、その5「茎がまっすぐの植物」


 多分これはその4にも通じる部分があると思います。怖いのは彼岸花とかガーベラなんかですね。茎が比較的まっすぐ伸びてるやつ。


 中学生の頃に母親がどこかから花をもらって来たんです。ピンクのガーベラ。


 普段花なんて飾らない家でしたから、花瓶なんてなくて。ラベルを剥がしたペットボトルに水入れて飾ってあったんです。


 私はしなやかなガーベラの茎を見ていたら、くねくねと曲げられそうな感覚になったんですよ。


 中に針金が入ってて自在に曲げられるぬいぐるみとかあるじゃないですか。


 あんなのを想像してガーベラの茎を曲げようとしたらぽきって折れたんです。


 もちろんガーベラの茎に針金なんて入ってないですし、曲げようとしたら折れるに決まってる。でも私はびっくりして、人を殺めてしまったような、そんな気持ちになってしまったんです。


 ぽきりと折れてしまったガーベラが心に刺さって、その時以来、茎がしなやかに伸びる植物が怖くなりました。


 あのピンクのガーベラには申し訳ないことをしてしまいました。



 

 私が怖いもの、その6「非常口の誘導灯」


 建物とかの非常口付近にある誘導灯。あの緑のやつです。


 人が出口向かって駆けて行くシルエットが描かれたあれ。


 何か怖くないですか?


 緑色だからでしょうか。


 これも子供の頃から怖いものの一つです。


 すでに閉店したお店の中で緑色にぽうっと光るあれを見ると何か怖くなるんです。


 病院に入院していた時、私の病室は廊下の突き当りの近くでした。


 すでに消灯されて薄暗い静かな廊下の奥の天上から吊り下がった誘導灯。


 見ているだけで怖くて、夜にトイレに行く時はなるべく視界に入れないようにしていました。


 夜になるとより目に入りやすくなるので、夜の怖いイメージと結びついたついたのかなと分析しています。


 閉店後の人気のないお店で光る様はいつ見ても異界への入口を見てしまった気分になります。これは妄想癖の賜物かもしれません。

 

 

 以上が私の怖いものでした。


 誰もが怖いものではなく、「何で?」と言われがちなものを紹介してみましたがいかがでしたでしょうか。


 共感してくださった方がいたら嬉しいです。

  

 

 

 

    

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