【大奥様への取材】

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 はあ、アンタが雑誌記者。そうかいそうかい。こんなところまでご苦労だねえ。

 いやはや、アタシらも舐められたもんかね。


 なにそうじゃない?

 敬意? 時代? ふうん……。


 まあ、今更どうでもいかねえ。で、アンタはわざわざこのアタシに面会までしてなにが聞きたいんだい。


 ほお。七本脚チーベンジャオの話。そりゃあアンタ、七本脚の話をわざわざアタシに聞きに来たってわけかい?

 一応聞いとくがね、アタシとの面会に懸ってものを承知してないわけじゃああるまいね?

 この席にはね、アンタの命が懸かってるんだよ。それだけの覚悟をして質問はそれってことで良いんだね?

 いやいや、なるほどこいつあアタシが悪かった。アンタ大したタマだよ。デカいのか空っぽなのかまではまだわかんないがねえ。


 わかったよ。とはいえ、だ……。

 それじゃ、今日さっそく全部教えてやる、ってんじゃあ面白くないねえ。アンタとは出来れば長く付き合いたいね。だから今日はひとりだけ。誰かひとりだけ話をしようか。


 さて、とはいえ。どいつもこいつも丙丁つけ難い悪ガキ揃いと来たもんだ。誰から話すと面白いかねえ。

 ああそうだ、そういえばアイツがそろそろ動く頃合いだったかねえ。どうだったかい娘々。もう、この歳になるとなんでもすぐ忘れちまっていけないねえ。


 ほう、今夜。今夜かい。そりゃあ丁度いい。それじゃあアンタ、今日は黒狗ヘイゴウの話をしてやろう。話の間に特急チケットを買っておいてやるから、終わったら実際そこまで行ってその目でちいっとでも見てみると良い。七本脚が一本 《大暴食ダーバオシー》がどんなもんなのかね。


 なあにチケットはアタシの奢りさ。いいんだよ。言ったろう?アンタとはって。遠慮は要らないよ。アンタにその命運があるうちはね。

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