ウィッキーラウス

ウィッキーラウス

　やめましょうよ。

　こんなお金儲けの仕方、最悪ですよ。

　そりゃ、契約のことを言われたらこっちは何も言えませんけど。

　でも、間違っているじゃないですか。だって、これ。

　ウィッキーラウスですよ。

　ミッキーじゃないんですよ。

　ネズミじゃないんですよ。

　ウィッキーラウスですからね。

　これは、ギリギリ過ぎますって。音が凄く似てるし、実際、パクってるって言われてるし、逃げられないですよ。

　もう、消されるんじゃないですか。本家に。

　僕、嫌ですよ。ウィッキーラウスとして死ぬの。こんな腐ったコンテンツと心中したくないですからね。分かってますか。

　指示されて、この仕事をしているだけですからね。別に、このウィッキーラウスに関する責任を取ることはしませんから。

　え。

　僕も悪いんですか。

　なんでですか。

　着てるから。は、ウィッキーラウスの着ぐるみを着てるからですか。

　だって、これは借金を返済するために、着てるだけですよ。僕は知りませんよ。関係ありません。じゃあ、ここで脱ぎます。今、脱ぎます。

　え。

　脱いだら借金帳消しの話はなかったことにする。

　ちょっと、待ってください。それはおかしいでしょう。だって、やりきったのは事実じゃないですか。さっきあの場所で僕は踊りに踊って、子どもたちを喜ばせに喜ばせて、幸せを届けに届けたわけですよ。やれることはやりました。元々、依頼されていた仕事はすべて完了しています。

　責任を取るのは、僕の仕事に入っていません。

　いや、確かにそんなことを言える立場ではないですけど。でも、約束は約束じゃないですか。

　他のやつも帳消しにしてやるから、やれ。それはどういう意味ですか。僕に借金以外に何があるっていうんですか。

　はい、この写真。見てますよ。女の子が映っていますね。これがなんですか。

　はい、いやいや。あ、そんなことを言われても。

　ふうん。

　調べたんですか。

　そうですよ。大学生の頃に作った子どもですね。はい。

　今どこにいるのかって、そんなこと聞かないで下さいよ。分かってるくせに。

　死体を掘り返したんですか。

　うわー、マジですか。ちょっと待ってくださいよ。あれ、全裸だったでしょ。あ、もう骨になってるか。そりゃそうですね。

　あ、ちょっと肉も付いてたんですか。

　はいはい、なるほど。

　でも、帳消しってどういうことですか。

　身代わりを用意してやると。だから、ウィッキーラウスをやり続けて、責任を取れと。

　殺人を帳消しですか。悪くないですね。でも、それってそっちにうまみがあるんですか。その身代わりが、マジでいらないとか。公的に抹殺しておきたいとか。そういうことですか。

　あはは。まぁ、こたえませんよね。別にいいですけど。

　ウィッキーラウスかあ。

「みんなー、元気かなー」

「元気ー」

「僕の名前はウィッキーラウス。友達からは気軽にウィッキーって呼んでもらってるんだ。みんなも呼んでね、せーの」

「ウィッキー」

「とーっても嬉しいよー。みんなのこと大好きだよー。さて、今日はこのダイヤモンドトロピカル遊園地に来てくれてありがとう。ここには観覧車やお化け屋敷、ジェットコースターもあるから、最後まで楽しんで帰ってね」