第八十一話:貯める?使う?第二の試練
翌朝。
第一の試練をクリアした生徒は全員、ホテルの広間に呼び出されていた。
ただし最終日でもないのに全員荷物を抱えているという、少し妙な光景になっている。
「
「調子に乗って夜更かしした」
あくびする俺を、
ちなみに速水曰く、洋室は中々快適だったらしい。
他の和室組が怨嗟の声を上げるわけだ。
「あら、
アイの声で、俺と速水は広間に設置された舞台へと視線を向ける。
長い金髪のイケメン野郎こと、
「やぁ一年生諸君。まずは第一の試練突破おめでとう」
なんか白々しさを感じるけど、まぁ実際俺達の事なんかチェスの駒、それもポーンくらいにしか思ってないんだろうな。
それはそうとして、このタイミングで現れたということは……
「さて、合宿二日目。第一の試練を突破した君達には、次の試練に挑んでもらう」
ほーら、試練発表だ。
俺はとりあえず召喚器を取り出せるようにしておく。
「全員、召喚器をだしてくれたまえ」
政帝の指示で、俺達は全員召喚器を取り出す。
そして召喚器に小さく表示される仮想モニターには『2000p』と表示された。
あ~、やっぱりコレやるのか。
「第二の試練、それは『ポイントファイト』だ」
広間の生徒達が頭上に疑問符を浮かべる。
それと同時に、俺の近くに
「ねぇねぇツルギくん。ポイントファイトってなに?」
「俺も知らん」
そういう事にさせてくれ。
どうせ今からルール説明だ。
「君達には明日の午後五時までに、その手持ちポイントを『10000p』にしてもらう」
そして政帝からポイントファイトの説明が始まる。
結構長い説明なので、ルールが書かれたプリントを貰った。
まぁ要するに今回の試練はこういう事だ。
・参加者は全員、試練開始時に2000pを付与される。
・明日の午後五時までに『10000p』以上保有していれば試練クリア。
・もしも達成できなかったら翌日2000pからやり直し。
・ポイント保有者とファイトして勝利すれば、相手のポイントを総取りできる。
・ファイト以外にも、このホテルに設置されいるマシンで『詰めファイト』をクリアすれば、1問につき『200p』与えられる。
一見すると単純明快なポイントの奪い合い。
だが俺は知っているぞ、この試練がとてつもなく厄介なのはこの後だとな。
「皆基本的なルールは理解できたかな。ではこれより……追加ルールを発表する」
広間がざわつく。
まぁいきなり追加ルールとか言われたらそうなるよな。
あと皆、本当の地獄はこの後だぞ。
「第二の試練に挑戦している間は、物品の購入他、施設の利用にポイントを消費してもらう。金銭は使えないのでご注意を」
数瞬の無言が場を支配する。
だが理解してしまった生徒から順に、顔を青ざめさせた。
まぁそうだろうな。
だって要するに、試練中は手持ちのポイントがお金になってしまうんだからな。
食事や寝床などなど、全部ポイントを必要とする。
ちなみに金銭の利用は全面的に不可だ。バレれば即罰則を受ける。
「あ、あの……ポイントの利用ってどこまで適用されるんですか?」
一人の男子生徒が質問をした。
やめとけ、どうせ「全部」って言われるのがオチだぞ。
「もちろん全部だ。だが安心してくれたまえ、開始から二時間はファイトを拒否できる……その後は強制ファイトだけどね」
ほらな。
広間が嘆きの声で包まれてしまった。
あとようやく荷物を全部持ち出すように言われた理由が分かったな。
どうせ施設からの脱出を妨害する策は用意してるんだろうし、諦めて試練に挑むしかないんだ。
「それでは一年生諸君、第二の試練を頑張ってくれたまえ……開始だ」
召喚器にタイムリミットが表示された。
広間は既に阿鼻叫喚の地獄になっている。
とりあえず広間から逃げる者、早速狩りを始める者、様々だ。
「天川、随分と落ち着ついているな」
「まぁ、そうかもな……速水、チーム全員で移動するぞ」
「何か策があるのか?」
「策というよりは……コツだな」
とりあえず大きなヒントは、共有しておかなきゃな。
俺達ゼラニウムのメンバーと藍は、一度ホテルの外へ出る事にした。
◆
「それでツルギくん、どうするんですか?」
ホテルから少し離れた場所。
静かなその場所で俺達は作戦会議を始めた。
早速ソラが策の内容を聞いてくる。
「この試験、一見するとポイントを稼げば稼ぐほど便利だと思うだろ」
「はい……違うんですか?」
「もっと効率のいい方法があるんだよ」
俺は他のメンバーにコツを説明する。
確かにこの試練はポイントを稼いだ方が有利だ。
しかしポイントを多く抱えるという事は、狙われやすくなるという事でもある。
ならば最小限のリスクでクリアするにはどうすれば良いのか?
簡単だ、個々人で本当に必要なポイントを予め計算しておくのだ。
「予め必要なポイントだと」
「あぁ、食事と寝床、そして試練クリアに必要な10000pだ」
「なるほど、ヘイトコントロールをしながら上手くクリアできるように影を潜めるってことね」
アイさん大正解。
とにかく最小限にとどめて、ひっそりとクリアしてやるんだ。
下手に目立ちすぎると総攻撃を食らいかねないからな。
「う~ん、でもまずはクリアに必要なポイントを溜めないとだよね」
「藍、残念ながら不正解」
えっと驚く藍。
まぁ確かに普通ならそう考えるだろう。
だけど優先すべきはそこじゃない。
「俺達がまずすべき事は、物価調査だ」
「ぶっかちょーさ?」
よく理解できず間抜けな声を出す藍。
だが速水はすぐに理解してくれたようだ。
「なるほど。そもそもポイントがどれ程の価値を持っているのか、それを把握しなければ必要ポイントの算出もできない」
「そういうこと。まずは手分けして寝床と食費の調査だ。クリア用のポイントを考えるのはその後」
何をするにも、まずは足場を固めないとな。
食事と寝床さえ確保できれば、あとはクリア用のポイントを稼ぐことに集中できる。
「念のために言っておくけど……藍、変なポイントの使い方するなよ」
「しないよこんな時まで!」
「あとソラ、食費は抑えろ」
「うぐぅ! ぜ、善処します……」
「最後にアイ、一番高い部屋を選ぼうとするなよ」
「……ル、ルームサービスは」
「却下だ。我慢しろ」
項垂れる女子三人。
これで釘は刺せただろう。
特にソラ。マジで食費は抑えてくれよ。
……念のため俺の食費多めに考えておくか。
「じゃあ調査先決めるか。安全なのは二時間しかないんだ」
そして俺達は調査先を決める。
俺は施設内に点在している売店を調べる事になった。
報告はこまめにメッセージアプリでとる予定だ。
「じゃあみんな、絶対に生き残るぞ!」
俺がそう言うと、全員力強く頷いて解散した。
さて、俺もしっかり調査しますか。
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