第七十六話:合宿開始!
ゴールデンウイークが終わり、遂にやってきました合宿当日。
俺達
「さぁ、ツルギくん番だ!」
「これ。はい上がり」
「あぁー!? またアタシの負け」
俺達は道中の暇をトランプで潰していた。
というか
「もう一回、泣きのもう一回を、ツルギくーん!」
「お前全敗しすぎ。少し休め」
流石にそろそろトランプも飽きてきた。
俺は窓の外を見る。
森林の緑しか見えないな。
「そういえば、合宿施設って山奥でしたっけ?」
「らしいな。学園が運営してるっていう修行専門の施設だって」
ソラに合宿のしおりを見せながら、俺が説明する。
県を跨いだ先にある山奥。そこに建てられた巨大修行施設。
そこが今回の合宿場所だ。
サモンの修行に適した様々な設備があるらしい。
そして広い。山二つ分はあるらしい。
改めて思うけど、この世界サモンに力入れすぎだろ。
山二つ丸々サモンの修行場ってなんだよ。
そんなこんなで一時間後。
俺達は目的地に到着した。
「おぉ~、これ全部学園が持ってる施設なのか」
俺は目の前にそびえ立つホテルを見上げながら、そう漏らす。
いやだって、見るからに豪華なホテルよ。
パッと見はリゾート地にあるやつよ。
でもこれだけで終わらないのが、聖徳寺学園のスゴいところ。
「ツルギくん……これ本当に学園が運営してるんですか」
「らしいな。これに追加で各種修行施設があるらしい」
「私……なんだか目が回ってきそうです」
「俺もだよ。実際目にしたらスゲーな」
俺とソラが唖然としている横で、藍は子供のようにはしゃいでいた。
アイツは単純だな。
「中々良さそうなホテルね。これは期待できそうだわ」
「アイが言うと更に恐れを感じるんだが」
「お金持ちの施設です」
リアルお嬢様の言葉で、ソラが更にポカンとした顔になる。
俺も間抜け面を晒しそうだ。
「全員集まれー! 移動するで御座る!」
というか伊達先生よ、バス移動も鎧武者スタイルだったのか。
汗だくになるくらいなら止めればいいのに。
一度ホテルから離れて、道を進む。
すると巨大なホテルの裏側には、巨大なドームが建っていた。
またドームですよ。この世界の人たちドーム好きだな。
俺達一年生はドームの中に案内されて、中央のスタジアムに通された。
「……なんだあれは?」
速水が中央スタジアムに用意されているものを見て、そう口にする。
それは他の生徒も同様であった。
広々としたスタジアムに並んでいるのは、何やら謎めいた機械達。
機械的な二本のアームと、中央には召喚器が埋め込まれている。
生徒一同が頭に疑問符を浮かべていると、一人の男の声がスタジアムに鳴り響いた。
「ようこそ。一年生諸君」
ライトに照らされて、スタジアム中央に現れたのは長い金髪の男。
入学式で大きなインパクトを残した人物だからか、生徒全員が驚いた。
「驚いたな、まさか
速水が言うように、スタジアムに登場したのは
政帝、政誠司だ。
「今回の合宿は、六帝評議会もサポートをする。存分に研鑽をしてくれたまえ」
学園最強の組織がサポートすると聞いて、一年生がざわめく。
まぁ無理もないか。流れ的に六帝と戦う可能性まで考えられてしまうからな。
まぁ運次第だと思うけど。
「まぁそう警戒はしないでくれたまえ。
俺と藍は同時に「ちぇ~」と言ってしまった。
上級生組はあくまで補助だけらしい。
「では僕から、この合宿について説明をさせてもらおう」
政帝が指を鳴らすと、スタジアムのモニターが表示された。
かっこいい演出だな。
「知っての通り、合宿は五日間。その期間内で君達一年生には三つの試練に挑んでもらう」
三つの試練?
いや俺は知ってるんだけどね。
「心技体を強める事を目的とした試練だ。その達成度合いによって君たちの成績が決定する」
つまり試練の内容次第では成績が落ちるし、上がる事もある。
成績が落ちるという事は、クラスの降格もありうるという事だ。
それを理解した生徒たちが、顔を強張らせる。
「途中でドロップアウトする事も可能だが、その場合の進退は保証しかねる」
サモン至上主義とはいえ、中々怖い世界だな。
不出来を見せ過ぎたら最悪退学ってことじゃないか。
まぁ俺はドロップアウトなんかするつもり無いけど。
「宿泊施設は和室と洋室を用意してある。洋室を選んだ生徒は道中に見たであろうホテルだ」
うんうん。いかにも豪華なホテルだったからな。
洋室を選んだ生徒が露骨に喜んでいる。
「ねぇツルギくん。どっち選んだの?」
「和室。藍は?」
「アタシも和室。やっぱりお布団が一番」
和室を選んだ生徒たちもテンションが上がり始めている。
わかるぞその気持ち。
豪華な旅館があると思うだろ?
「そして和室を選んだ生徒だが」
スタジアムのモニターに宿泊場所が写真と共に表示される。
その瞬間、スタジアムから音が消えた。
うん。俺は知ってたよ。知った上で和室を選んだよ。
「ホテルから少し離れた場所に
和室組の悲痛な叫びが鳴り響いた。
まぁ落差がありすぎるもんな。
「おぉ~、きっと味わい深いお寺だ~」
「おっ、藍わかってるじゃんか」
俺と藍はお寺でも満足だ。
まぁ俺の場合は他にも目的があるんだけどな。
「ちなみに原則部屋の交換はできない。交換を望む生徒はサモンで交渉することだ」
あっ、和室組の目に闘志が宿った。
洋室組も警戒心をむき出しにしている。
うーん、このピリピリムードよ。
「まぁ部屋の交渉は後にしてもらおう。早速だが君達一年生には、第一の試練に挑んでもらう」
政帝がそう言った瞬間、後方に並んでいた機械達が次々に分散し始めた。
機械に埋め込まれた召喚器が、次々に一年生の召喚器に無線接続する。
ちなみに俺も接続された。
「今スタジアムに散らばったのは、UFコーポレーションが開発したファイトロイドだ。君達にはこのファイトロイドと戦ってもらう」
「要するに、このロボットとファイトして勝てばいいの?」
藍が疑問を口にすると、政帝は「そうだ」と肯定した。
「ただしこのファイトは通常のファイトではない。特殊ルール【ボスファイト】となる」
「【ボスファイト】……ってなに?」
藍が知らないようなので、俺が解説する。
「簡単に言えば【ボスファイト】専用のカードを採用したデッキを相手にする特殊ルールだ」
「専用カード? 普通のサモンのカードとは違うの?」
「通常のファイトでは使えない代わりに、普通のカードよりも強い。それをいかにして攻略するかを試すってわけだ」
「なるほどな。分かりやすくて良いじゃん!」
やる気を燃やす藍。
それは俺も同じだ。
この特殊ルールは普通と違うファイトができるから楽しいんだ。
「今回の【ボスファイト】は三つのデッキを用意してある。どのデッキと戦うかは完全にランダムだ」
ちなみに今回のボスデッキは以下の通りだ。
モンスター効果無効デッキ。
魔法カード無効デッキ。
超鉄壁回復デッキ。
うん。どれも倒しごたえがあるデッキだな。
強いて言えばモンスター効果無効デッキは、少し遠慮したいけど。
「第一の試練は【ボスファイト】をクリアせよだ。クリアした者から宿で休める。クリアできない生徒は、このスタジアムで寝泊まりだ」
よく見たらテントらしき袋が用意されているな。
毎年いるんだろうな……クリアできない人。
「それではターゲットロックされた生徒から挑んでもらおうか」
俺はターゲットロックしてきたファイトロイドの前に移動する。
他の生徒も同じだ。
「準備はできたね? それでは第一の試練、開始だ!」
「「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」」
俺達一年生は一斉にファイトを始めた。
さーて、俺の相手はどんなデッキなのかな?
できればモンスター効果無効デッキ以外でお願いしたいんだけど。
『ワタシのターン。スタートフェイズ。メインフェイズ』
ちなみに【ボスファイト】での先攻は強制的にボス側がするルールだ。
『ワタシは〈【
機械的な音声と共に、ファイトロイドの場には三体のメカ鹿が召喚された。
〈【試練獣一型】スキルキャンセラー〉P11000 ヒット3
「……」
『〈スキルキャンセラー〉が場に存在する限り、相手の場のモンスター効果は全て無効となります。ワタシはこれでターンエンド』
ファイトロイド:ライフ10 手札2枚
場:〈【試練獣一型】スキルキャンセラー〉(A、B、C)
うん……心の中で叫ばせてください。
ど畜生ォォォォォォォォォ!!!
大ハズレじゃねーかぁぁぁ!!!
「俺……これ相手にしなきゃいけないの?」
面倒臭さの極みだなこれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます