第四十八話:最終戦開幕!
遂に始まった最終決戦。
コンピューターによって先攻後攻がランダムに決められる。
俺が先攻か。
「さぁ行くぜアイ! 俺のターン!」
俺はデッキに手をかける。
「スタートフェイズ。メインフェイズ!」
相手はあのアイだ。一切の油断はできない。
まずは防御を固めよう。
「俺はライフを1点払って〈コボルト・ガードナー〉を召喚!」
カードを仮想モニターに投げ込むと、俺の場に巨大な盾を手にした獣人が召喚された。
ツルギ:ライフ10→9
〈コボルト・ガードナー〉P6000 ヒット0
「まだまだいくぞ! 〈コボルト・ウィザード〉を召喚!」
続けて召喚されたのは、獣人の魔法使い。
〈コボルト・ウィザード〉P2000 ヒット1
「召喚時効果発動! デッキからカードを1枚ドローする」
ツルギ:手札3枚→4枚
ドローしたカードを確認する。うん、いいカードだ。
「魔法カード〈トリックカプセル〉を発動! ライフを2点払う事でデッキからカードを1枚除外する」
ツルギ:ライフ9→7
俺はデッキから望んだカードを1枚、トリックカプセルの中に封印する。
「この効果で除外したカードは、2ターン後のスタートフェイズ開始時に、俺の手札に加わる」
ちなみに除外したのは〈ダイヤモンドボックス〉だ。
制限級の激強コンボだぜ。
ひとまずはこれで様子を見るか。
「俺はこれでターンエンドだ」
ツルギ:ライフ7 手札3枚
場:〈コボルト・ガードナー〉〈コボルト・ウィザード〉
ある程度の防御は用意できたけど……さぁ、アイはどう来る?
「私のターン。スタートフェイズ。ドローフェイズ」
アイ:手札5枚→6枚
「メインフェイズ。私はライフを3点払って、魔法カード〈不平等契約〉を発動するわ」
わぁい制限カード。
なんでそれまだ制限カードなの?
てか開幕早々それの発動は勘弁してくれ。
アイ:ライフ10→7
「デッキを上から8枚墓地に送るわ。更に相手の場のモンスターの数が私より多いから、墓地からモンスターカードを1枚手札に加えるわ」
アイは何を手札に回収する?
「私は〈ベビーシード〉を手札に加えるわ」
だから制限カードで制限カードを回収しないでくれ!
洒落にならないんだよ!
つーかこの状況でベビーシードは不味い。墓地にカードが7枚もあるぞ。
「今手札に加えた〈ベビーシード〉の効果を発動。このカードを手札から捨てるわ」
「まぁ、そうするよな」
【樹精】を知らない観客席の人々は、頭の上に疑問符を浮かべている。
まぁ、知らないと意味不明な効果だよな。
だがその実力を知る俺からすれば、とんでもなく凶悪なムーヴだ。
「ツルギは分かるわよね? この後の展開」
「あぁ。分かるから怖いよ」
来るぞ、樹精の本領発揮!
「私は墓地の〈アルストロメリアプラント〉〈パンジープラント〉〈チューリッププラント〉の【再花】を発動!」
アイの墓地から三つの魔法陣が出現する。
「私が手札を捨てた事を引き金に、3体のモンスターが墓地から開花するわ。来なさい! 〈アルストロメリアプラント〉〈パンジープラント〉〈チューリッププラント〉!」
召喚される3体の植物モンスター。
妖精からは程遠い怪物が登場した事で、観客席からは小さな悲鳴がいくつか聞こえる。
〈アルストロメリアプラント〉P6000 ヒット2
〈パンジープラント〉P3000 ヒット2
〈チューリッププラント〉P4000 ヒット1
一度に3体のモンスターを召喚。そのタクティクスに、驚く観客もいる。
まぁ対峙している俺からしたら堪ったもんじゃないけどな!
「さぁ、連鎖させていくわよ。まずは〈アルストロメリアプラント〉の効果発動! 召喚に成功した時、私はライフを2点回復するわ」
アルストロメリアプラントの花……というか顔面から出た蜜が、アイのライフを回復させる。
これ絵面もう少しどうにかならないのか?
アイ:ライフ7→9
「次は〈パンジープラント〉の効果。1枚ドローして、手札を1枚捨てるわ」
手札交換か、優秀だな。
一つ幸いなのは、アイの場が全部埋まっているおかげで【再花】は発動しない事だ。
「そして最後に〈チューリッププラント〉の効果発動。召喚成功時に、相手モンスターを1体疲労させるわ。私は〈コボルト・ガードナー〉を疲労状態に!」
妥当な判断だな。アイはパワーの高いコボルト・ガードナーを疲労させてきた。
チューリッププラントの花粉を食らって、ガードナーは膝をついてしまう。
「アタックフェイズ。さぁ咲き乱れるわよ! まずは〈アルストロメリアプラント〉で攻撃!」
アルストロメリアの怪物が襲い掛かって来る。絵面が怖い。
ヒットは2。致命傷にはならないけど、ここで余計なダメージを受ける事はなんとしても避ける!
「この瞬間〈コボルト・ガードナー〉の効果発動! 1ターンに1度だけ、このカードは回復できる!」
「つ! 厄介なブロッカーね」
「誉め言葉として受け取っておくよ。〈コボルト・ガードナー〉でブロックだ!」
起き上がるガードナー。そしてアルストロメリアプラントの攻撃を巨大な盾で防いだ。
しかし相打ち。ガードナーはアルストロメリアプラントと共に爆散する。
まずは1体撃破……と言いたいけど、系統:〈樹精〉の性質上すぐに蘇るんだよな~。
「次は〈パンジープラント〉で攻撃よ」
「それは……ライフで受ける!」
パンジープラントの花粉が、俺に降りかかる。
これダメージ含んでるんだな。
ツルギ:ライフ7→5
「更に〈チューリッププラント〉で攻撃よ」
「流石にこれ以上のダメージは不味い! 〈コボルト・ウィザード〉でブロック!」
チューリップの怪物と、コボルト・ウィザードが戦闘する。
だがパワーに差がありすぎる。
コボルト・ウィザードはあっけなく破壊されてしまった。
「私はこれでターンエンドよ」
アイ:ライフ9 手札5枚
場:〈パンジープラント〉〈チューリッププラント〉
流石はアイだな。これだけ動いてもライフ9点、手札は5枚も持ってる。
モンスターが全部疲労しているとはいえ、かなり有利な状況に立たれたな。
これは流石に気が抜けない。
だけどそれはそれとして……俺はアイの表情が気になって仕方なかった。
「なぁアイ! 楽しいよな、サモンファイト!」
「そうね。こんな大舞台でこの子達を咲かせる事ができるなんて、考えたこともなったわ」
「これから沢山やればいいだろ。俺達の未来はまだまだ続いているんだ」
「ツルギ……」
そうだ。アイの未来はこれからなんだ。
必要なのはアイ自身の決断。あとは未来が照らしてくれる。
きっとアイもそれに気づいているんだろう。
何故なら今のアイは……
「ふふ。本当に楽しいわね」
「なぁアイ、今めっちゃ良い顔してるな」
「当然よ。アイドルよ」
「そうじゃなくて。今のアイ、すごく綺麗な笑顔してる」
俺がそう言うと、アイの顔は少し赤く染まった。
照れるなよアイドル。
「もう、貴方って人は」
「事実だ。今のアイの方がすごく可愛い」
「そう……そうなのね」
アイは自分の胸に手を当てる。
そうだ、この自然さこそが一番美しいんだ。
もしもアイの中にまだ鎖があるっていうなら、俺がそれを壊してやる。
「手加減はしない。派手にいくぞアイ!」
「来なさい。私のライバル!」
絶対に勝つ。アイを助けて、チームを優勝させてやるんだ。
「俺のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」
ツルギ:手札3枚→4枚
「まずは回復からだ。メインフェイズ! 魔法カード〈デストロイポーション〉を発動!」
効果でデッキを上から5枚墓地に送る。
墓地に送られたカードは……
モンスター:〈ケリュケイオン〉〈アサルトユニコーン〉
魔法:〈トリックボックス〉〈逆転の一手〉〈トリックミラージュ〉
ん? 今日の回復量はイマイチか……まぁいい。
「墓地に送られたモンスターは2枚。ライフを2点回復するぜ」
ツルギ:ライフ5→7
「続けて俺は〈トリオ・スライム〉を召喚!」
『スララー!』
いつもお馴染みのスライムが、俺の場に召喚される。
「召喚時効果でデッキから〈トリオ・スライム〉を手札に加える。そして〈トリオ・スライム(B)〉を召喚! その召喚時効果で3枚目の〈トリオ・スライム〉を手札に加えて、それも召喚だ!」
『『スララー!』』
〈トリオ・スライム〉(A、B、C)P1000 ヒット1
観客席からは笑い声が聞こえる。まぁこの世界じゃ侮られるモンスターだからな。
だけどアイは違う。今までの俺のファイトを覚えているのか、あからさまに警戒していた。
よし、その警戒に答えてやろう。
「俺はパワー3000以下のモンスター、〈トリオ・スライム(C)〉を素材に進化!」
トリオ・スライム(C)が魔法陣に飲み込まれる。
頼むぜ優秀さん!
「〈ファブニール〉を進化召喚!」
『クォォォォォォォォォォォン!』
俺の場に巨大な黒竜が召喚される。
〈ファブニール〉P10000 ヒット?
「ヒット数が決まってない?」
「こうやって決めるんだ! 〈ファブニール〉の召喚時効果で〈パンジープラント〉を破壊!」
ファブニールの放った炎が、パンジープラントを焼き尽くした。
「〈ファブニール〉のヒット数は、この効果で破壊したモンスターと同じになる」
パンジープラントのヒットは2。よってファブニールのヒットは……
〈ファブニール〉ヒット?→2
俺は手札を確認する。うん、防御カードもある。
これなら思いっきり攻めて問題なし!
「アタックフェイズ! 〈ファブニール〉で攻撃だ!」
ファブニールが咆哮を上げる。
口の中に炎を溜め始めた。
まずはライフを削ってやる!
「この瞬間、私は魔法カード〈ポイズン・オア・ヒーリング〉を発動するわ」
「げぇッ!? そのカードは」
あの魔法はちょっと不味い!
「〈ポイズン・オア・ヒーリング〉は三つの効果から一つを選んで発動する魔法カードよ」
アイの言う通り、あのカードは器用に動ける魔法だ。
ちなみに三つの効果は「自分のライフを2点回復」「相手のライフ回復の妨害」「お互いに手札交換」だ。
この状況で使うのは間違いなく三つ目。
「私は三つ目の効果を発動。お互いに手札を1枚捨てて、1枚ドローよ」
俺は渋々手札から〈ルビーバリア!〉を捨てる。
さぁて問題は、アイが手札を捨てた事だ。
「もう分かってるでしょ? 私は墓地から〈アルストロメリアプラント〉と〈パンジープラント〉の【再花】を発動!」
アイの墓地から、さっき倒したばかりの樹精が2体復活する。
〈アルストロメリアプラント〉P3000 ヒット2
〈パンジープラント〉P3000 ヒット2
「〈アルストロメリアプラント〉の召喚時効果でライフを2点回復。〈パンジープラント〉の召喚時効果で手札を交換するわ」
アイ:ライフ9→11
不味いな。ブロッカーが増えただけじゃなくて、あっという間にライフまで回復された。
「〈ファブニール〉の攻撃は……ライフで受けるわ」
ここはモンスターの温存を選んだか。
ファブニールの攻撃がアイを襲う。
アイ:ライフ11→9
アルストロメリアプラントの回復のおかげで、実質ダメージ0だな。
今アイの場には2体のブロッカー。いずれもトリオ・スライムよりパワーが高い。
無暗に攻撃してこちらのブロッカーを減らす意味は無い、か。
「……俺はこれでターンエンド」
ツルギ:ライフ7 手札1枚
場:〈トリオ・スライム(A、B)〉〈ファブニール〉
俺は残った1枚の手札を確認する。
防御カードではない。
次のターン、間違いなくアイは猛攻を仕掛けてくる。
さぁて、どうやって凌いだもんか。
「ツルギ……貴方も楽しそうね」
「あぁ、次のターンどうやって凌ごうか考えると、滅茶苦茶楽しい」
「本当にサモンが好きなのね」
「それはアイもだろ」
「……そうね」
優しい笑みを浮かべながら、アイがそう呟く。
俺達の楽しい戦いは、まだまだ続く。
次はアイのターンだ。
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