第四十六話:聖天使VS妖精の女王

 決勝戦第二戦。ソラVSミオ。

 その試合は大いに盛り上がっていた。


 そして迎えたミオのターン。


「アタシのターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 ミオ:手札手札6枚→7枚


 【妖精】デッキの特性故に、その手札は潤沢なものであった。


「メインフェイズ! アタシは〈ウインドピクシー〉と〈トリックフェアリー〉を召喚!」


 再び二体の妖精がミオの場に召喚される。


〈ウインドピクシー〉P2000 ヒット1

〈トリックフェアリー〉P3000 ヒット2


「そしてアタシは〈トラップピクシー〉を召喚!」


 ミオの場にピンク髪の妖精が召喚された。


〈トラップピクシー〉P1000 ヒット1


 ステータスの低いモンスターだが、油断はできない。

 ソラは警戒を強める。


「アタシは魔法カード〈かくれんぼ!〉を発動! 効果で【悪戯いたずら】をするよ!」

「【悪戯】をする魔法カード!?」

「アタシは系統:〈妖精〉を持つモンスター〈トリックフェアリー〉と〈トラップピクシー〉を手札に戻すよ」


 二体の妖精が手札に戻る。

 そしてここからが本番だ。


「〈かくれんぼ!〉のメイン効果! 【悪戯】で手札に戻したモンスターの数だけ、相手モンスターを疲労させるよ!」


 戻されたモンスターは二体。

 ソラの聖天使を全て疲労させるには十分な数であった。


「ブロッカーがいなくなった」

「それだけじゃないよ。手札に戻った〈トラップピクシー〉の効果発動! 相手モンスター1体をパワー-6000するよ! 〈ソードエンジェル〉をパワーマイナス!」


 トラップピクシーのいたずらを受けて、ソードエンジェルは弱体化する。

 そのままソードエンジェルのパワーは0となり、破壊された。


「更に、モンスターが手札に戻ったから〈ウインドピクシー〉の効果も発動! デッキを上から2枚確認して、1枚を手札。1枚を墓地。そして1点回復」


 ミオ:ライフ8→9 手札5枚→6枚


「それからそれから! 〈トラップピクシー〉と〈トリックフェアリー〉を再召喚!」


 またまた召喚される妖精二体。

 そろそろ肩で息をしはじめている。


〈トラップピクシー〉P1000 ヒット1

〈トリックフェアリー〉P3000 ヒット2


「さぁ! 思いっきりキラめくよ! アタシは系統:〈妖精〉を持つ〈トリックフェアリー〉を進化!」


 トリックフェアリーの身体が、巨大な魔法陣に飲み込まれる。


「キラキラ輝いて、みんなを照らして! アタシ達は最高の妖精女王! 〈クイーンフェアリー〉を進化召喚!」


 魔法陣が弾け、新たなモンスターが降臨する。

 ミオの場に神々しい輝きを纏った、妖精の女王が召喚された。


〈クイーンフェアリー〉P9000 ヒット2


「妖精の進化モンスター……」

「これがアタシの切り札。すぐに倒れないでよね」

「はい! 来てください!」

「アタシは〈クイーンフェアリー〉の効果発動! 1ターンに1度だけ【悪戯】をできる!」

「発動タイミングが指定されてない!?」

「アタシは〈トラップピクシー〉と〈ウインドピクシー〉を手札に戻す!」


 二体の妖精が手札に戻る。

 しかし発動したのは仮にも進化モンスター。

 それだけで終わるはずがなかった。


「モンスターが手札に戻ったことで〈クイーンフェアリー〉の効果発動! 手札に戻ったモンスター1体につき、相手モンスター全てのパワーを-3000する!」

「戻ったモンスターは2体っ!」

「合計で-6000! 全員に与えるよ!」


 クイーンフェアリーの放った光が、ソラのシールドエンジェルを飲み込む。


〈シールドエンジェル〉P7000→1000


「更に〈トラップピクシー〉の効果で、パワー-6000を〈シールドエンジェル〉に!」


 トラップピクシーの効果を受けたシールドエンジェルはパワー0となり破壊される。

 これでソラの場にブロッカーはいなくなった。


「〈トラップピクシー〉と〈ウインドピクシー〉を再召喚。そしてアタックフェイズ!」


 場ががら空きのソラに、ミオは攻撃を仕掛け始めた。


「まずは〈トラップピクシー〉で攻撃!」

「ライフで受けます」


 ソラ:ライフ19→18


「次は〈ウインドピクシー〉で攻撃!」

「それもライフです」


 ソラ:ライフ18→17


「フルアタックだ! 〈クイーンフェアリー〉で攻撃!」

「ライフです」


 ソラ:ライフ17→14


「うーん、ライフが多すぎて削り切れないか~。ターンエンド」


 ミオ:ライフ9 手札3枚

 場:〈クイーンフェアリー〉〈トラップピクシー〉〈ウインドピクシー〉


 大幅にライフを回復しておいたおかげで生き延びたソラ。

 だが場にモンスターは0体。手札も0枚。

 かなりピンチな状態であった。


「なにか引き当てないと……私のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 ソラ:手札0枚→1枚


 ドローしたカードをソラは確認する。

 それを見た瞬間、ソラの顔は明るくなった。


「これなら! メインフェイズ。私は魔法カード〈オーバーライフドロー〉を発動します!」

「〈オーバーライフドロー〉?」

「このカードは自分のライフが相手より4点以上多い時にのみ発動できます。ライフを2点払って、2枚ドローです!」


 ソラ:ライフ14→12 手札0→2枚


 ドローしたカードを確認するソラ。

 決定打にはならないが、ひとまず次へ繋げられるカードは手にできた。


「私は〈ピスケスエンジェル〉を召喚します!」


 カードを仮想モニターに投げ込む。

 ソラの場には、天使の羽が生えた二匹の魚が召喚された。


〈ピスケスエンジェル〉P5000 ヒット2


「アタックフェイズ! 私は〈ピスケスエンジェル〉で〈クイーンフェアリー〉を指定アタックします!」

「【指定アタック】持ち!? でも〈クイーンフェアリー〉の方がパワーは高いよ!」

「なら強化すればいいんです! 私は魔法カード〈エンジェルオーラ〉を発動します! 【天罰】効果も合わせて〈ピスケスエンジェル〉のパワーを+5000です!」


〈ピスケスエンジェル〉P5000→P10000


「これで〈クイーンフェアリー〉のパワーを上回りました。お願いします〈ピスケスエンジェル〉!」


 強化されたピスケスエンジェルは、クイーンフェアリーに体当たりをする。

 その一撃でクイーンフェアリーはあっけなく破壊されてしまった。


「アタシの、切り札が……」

「モンスターを戦闘破壊した瞬間〈ピスケスエンジェル〉の【天罰】を発動します。私はデッキからカードを1枚ドローします」


 ソラ:手札0枚→1枚


「……私はこれでターンエンドです」



 ソラ:ライフ12 手札1枚

 場:〈ピスケスエンジェル〉


 ひとまずライフレースでは勝っているが、手札の差が大きすぎる。

 ソラは残った1枚の手札に全てを託す他ない状態だ。


「まさかアタシの切り札が倒されるなんて……でも、まだファイトは終わってない! アタシのターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 ミオ:手札3枚→4枚


「来た! アタシのプランB! メインフェイズ。アタシはライフを3点払って〈ヒートフェアリー〉を召喚!」


 ミオの場に松明を持った妖精が召喚される。

 ソラはこのカードを知っていた。予選で愛梨が使ったカードだ。


〈ヒートフェアリー〉P3000 ヒット1


「魔法カード〈いたずらオバケ〉を発動! 場の〈トラップピクシー〉を手札に戻して〈ヒートフェアリー〉のヒットを2上げるよ!」


〈ヒートフェアリー〉ヒット1→3


「妖精が手札に戻ったことで、更に〈ヒートフェアリー〉のヒットを1上げる」


〈ヒートフェアリー〉ヒット3→4


「更に! 手札に戻った〈トラップピクシー〉の効果で、パワー5000の〈ピスケスエンジェル〉を破壊!」


 トラップピクシーのいたずらによって、ピスケスエンジェルはパワー0になってしまった。

 破壊されるピスケスエンジェル。

 これでソラの場にモンスターはいなくなった。


「モンスターが手札に戻ったから〈ウインドピクシー〉の効果も発動。2枚確認して、1枚手札。1枚墓地、ライフを1点回復」


 ミオ:ライフ6→7 手札3→4枚


「そしてコレ! 魔法カード〈サルベージサルベージ!〉を発動!」

「っ!? そのカードは確か!」

「このカードは、手札を1枚捨てることで、自分の墓地から系統:〈回収〉を持つ魔法カードを1枚手札に戻すカード。アタシは墓地から魔法カード〈いたずらオバケ〉を手札に戻すよ!」

「それ、回収持ってたんですね」


 これはかなり不味い状況となった。

 ソラは焦る。

 あの魔法カードにターン1制限は無かったはずだ。


「手札に戻した魔法カード〈いたずらオバケ〉を発動! 〈ウインドピクシー〉を手札に戻して〈ヒートフェアリー〉のヒットを2上げる。更に〈ヒートフェアリー〉の効果でヒットを1上げるね!」


〈ヒートフェアリー〉ヒット4→6→7


 ヒット数がかなり上昇してきた。

 だがまだソラが耐えきれる範囲である。

 それを見抜いていたのか、ミオは不敵に笑みを浮かべた。


「このカードで決めるね! アタシは魔法カード〈フェアリーカーニバル!〉を発動!」

「なんだか……嫌な予感がします」

「コストで手札を2枚捨てるね。〈フェアリーカーニバル!〉の効果で系統:〈妖精〉を持つモンスター1体のヒット数を、このターンの間2倍にするよ!」

「ヒット数2倍!? ということは」


 ヒートフェアリーの松明が更に巨大化していく。

 もはやどちらが本体か分からないほどだ。


〈ヒートフェアリー〉ヒット7→14


 予想外の展開。

 モンスターのヒット数がソラのライフを上回った。

 派手派手しい演出により、観客の声も大きくなっていく。


「アタックフェイズ……これで、終わらせるね! アタシは〈ヒートフェアリー〉で攻撃!」


 ヒット14まで強化されたヒートフェアリーの松明が、ソラに振り下ろされる。

 これを食らえば試合終了。チーム:ゼラニウムは敗北してしまう。

 しかしソラの手札に攻撃を無効化するカードは無い。

 手札にあるカードは……


「私は魔法カード〈デストロイポーション〉を発動します!」

「それは、不確定の回復カード」

「はい。デッキを上から5枚墓地に送って、その中のモンスターカードの数だけライフを1点回復します」


 現在ソラのライフは12点。

 ヒートフェアリーの攻撃を凌ぐには3枚以上のモンスターカードが美地に送られなければならない。

 ソラとミオだけでなく、観客席の人々も固唾を飲む。


「……いきます」


 ソラはデッキからカードを5枚墓地に送る。


 墓地に送られたモンスターカード:〈サジットエンジェル〉〈アリエスエンジェル〉〈ジャスティスエンジェル〉〈ヒーラーエンジェル〉〈【天翼神てんよくしん】エオストーレ〉


「うそぉ!? 全部モンスター!?」

「やりました! 私はライフを5点回復します」


 ソラ:ライフ12→17


「そして〈ヒートフェアリー〉の攻撃をライフで受けます!」


 ヒートフェアリーの松明がソラに襲い掛かる。

 しかしその一撃は、ライフを全て焼き尽くすことは無かった。


 ソラ:ライフ17→3


 まさかの展開。

 賭けに勝ったソラは、見事攻撃を凌いだ。

 その展開に、観客のテンションが最高潮に達する。


「まさか耐えられるなんてね~」

「そう簡単には負けられませんから」

「……いいなぁ」


 羨ましそうに、ソラを見つめるミオ。

 これ以上の攻撃はもうできない。

 

「ターンエンド」


 ミオ:ライフ7 手札0枚

 場:〈ヒートフェアリー〉


「私のターン」

 

 ミオの手札は0枚。ブロッカーもいない。

 だがソラのライフは残り僅か3点。

 このターンで決めなくては負ける。

 ソラの心音は一気に激しくなってきた。


「スタートフェイズ。この瞬間〈フューチャードロー〉の効果発動! デッキからカードを2枚ドローします」


 ソラ:手札0枚→2枚


 ドローしたカードを確認するソラ。

 良いカードは引けた。しかしライフが足りない。

 次のドローで何かを引かなければ、勝ち目はない。


「ドローフェイズ……ドロー!」


 ソラ:手札2枚→3枚


 ドローしたカードを、ソラは恐る恐る確認する。


「……っ! きた!」


 最高の1枚が手札に来た。


「メインフェイズ! 私は魔法カード〈フェイカーポーション〉を発動します!」

「それって、予選で使ってたカード」

「〈フェイカーポーション〉はこのターンの終了時にライフを5点失う代わりに、私のライフを5点回復するカードです」

「つまり、一時的な回復カード?」


 何のために……そう言いかけた瞬間、ミオは思い出した。

 ソラの聖天使が持つ【天罰】、その発動条件を。


 ソラ:ライフ3→8


「これでミオさんのライフを上回りました。【天罰】が使えます」

「あ、アハハ……うっそー」

「そしてこれが決め手です! 私は魔法カード〈再臨〉を発動します! 手札を1枚捨てて、墓地から〈ジェミニエンジェル〉を復活です」


 ソラの墓地から、双子の天使が召喚される。


〈ジェミニエンジェル〉P5000→10000 ヒット2


「更に〈再臨〉の【天罰】を発動します! もう一体の聖天使〈アンカーエンジェル〉を蘇生です!」

「1枚で2体も蘇生できるの!?」


 ソラの場に錨を持った天使が召喚される。


〈アンカーエンジェル〉P1000 ヒット0


「〈ジェミニエンジェル〉は【天罰】によってパワー+5000。更に〈アンカーエンジェル〉の【天罰】を発動です! 召喚に成功した時、墓地から系統:〈聖天使〉を持つモンスターを1枚手札に戻します」


 墓地から1枚のカードが出現し、ソラの手札に加わる。


「私が回収するのは……〈【天翼神】エオストーレ〉です!」

「っ!? SRカード」

「いきます! 私は系統:〈聖天使〉を持つモンスター〈アンカーエンジェル〉を進化!」


 アンカーエンジェルが巨大な魔法陣に飲み込まれる。


「天空の光。今翼と交わりて、世界を癒す輝きとなる! 最後まで一緒に戦ってください。〈【天翼神】エオストーレ〉を進化召喚!」


 魔法陣が弾け飛び、大天使が光臨する。

 ロップイヤーのウサ耳が生えた光の化身が、ソラの場に召喚された。


〈【天翼神】エオストーレ〉P11000 ヒット3


 SRカードの登場により、歓声が更なるものとなる。

 さぁ、最後の攻撃だ。


「アタックフェイズ! 〈エオストーレ〉で攻撃です!」

「ッ! ライフで受ける」

「この瞬間〈エオストーレ〉の【天罰】を発動! 〈ヒートフェアリー〉をデッキの下に戻します!」


 ヒートフェアリーが場から消される。

 そしてエオストーレの攻撃は、ミオの身体に着弾した。


 ミオ:ライフ7→4


 ブロッカーもいなくなった。これで安心して攻撃できる。


「続けて〈ジェミニエンジェル〉で攻撃です!」

「ライフ!」


 双子の片割れが、ミオに攻撃する。


 ミオ:ライフ4→2


「ギ、ギリギリ生き残った~」

「いいえ、これで終わりです」

「えっ?」

「〈ジェミニエンジェル〉は【2回攻撃】を持っています」

「……そっかぁ~」


 ミオは全てを受け入れたような笑みを浮かべて、両腕をだらんと下ろす。


「ねぇ……アイっちのこと、お願いね」

「はい。ツルギくんが、必ず」


 だから信じて欲しい。

 言葉にせずとも、ソラの意図はミオに伝わった。


「お願いします〈ジェミニエンジェル〉!」


 もう一人の天使の片割れが、ミオに最後の攻撃を仕掛けた。


「アイっち……戦ってね」


 ミオ:ライフ2→0

 ソラ:WIN


 試合終了のブザーが鳴り響く。


『決勝戦第二戦。勝者、赤翼あかばねソラ!』


 観客席から盛り上がりの声が聞こえる。

 これで一勝一敗。

 決着は大将戦に持ち込まれた。

 立体映像が消えゆく中、ソラはチーム:ゼラニウムのベンチを振り向く。

 だがそこに、速水とツルギの姿はまだ無かった。


「速水くん……ツルギくん……」


 不安がソラを飲み込もうとする。

 決勝戦最終試合は、もう眼前に迫っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る