第二十八話:大会へのお誘い

 前回までのあらすじ。

 知らない間に、アイドルとお知り合いになってたよ。


 いや予想外が過ぎるだろ!

 本当に人生何があるか分からんな!


 そんな衝撃を受けたまんま、翌日の学校を迎えるわけなのだが……

 当然俺の動揺は消えていない状態なのでして。


「どうしたんですかツルギくん? 顔がすごいことになってますよ」

「なんか、うん……色々衝撃を受け過ぎて、ね」

「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。俺元気」


 ソラが滅茶苦茶心配そうにこちらを見てくる。

 なんとか平然を装いたいが、顔が言うことを聞いてくれない。

 おかげでさっきから数学記号の∵みたいな顔のまんまだ。


「それよりツルギくん。次の大会どうしましょう?」

「次? 公式戦なら色々あるだろ?」

「受験に向けての大会なんですけど、どれが良いか迷っちゃって」


 恥ずかしそうに笑み浮かべるソラ。

 どうでもいいけど、受験に向けてのサモン大会出場って、ちょっとしたパワーワードだよな。


 何故こんな話をしているのかというと、年明けに受験する俺達の第一志望校、聖徳寺しょうとくじ学園に行くためである。

 ウチの中学からは俺と速水はやみ、そしてソラが受験予定だ。

 しかしそこは流石のサモン専門学校。

 一般科目も見られるが、それ以上にサモンの成績を重要視される。

 ここでいうサモンの成績というのは、単純なサモンの知識だけではない。

 中学在学中の公式大会での成績も問われるんだ。

 それだけ公式大会が多いってのも、良い世界だよ。


 で、俺達三人は受験に向けて公式大会に出場しまくっているんだ。

 どれくらいの成績が有ればいいのか分からないからな。もう手当たり次第よ。

 ちなみに俺は出た大会全部優勝してる。

 そして決勝戦の相手は全部、速水かソラの二択だよ!


「ツルギくん、聞いてます?」

「んあ、聞いてるよ」

「色々な大会で上位に入賞できましたし、思い切ってランクの高い公式大会に出てみるのも良いかなって思ってるんです」

「ランクの高い公式大会っていうと……年齢制限のないやつとかか?」

「はい。プロの人も出るような大会ですね」

「流石にハードル高くないか?」


 強さ的な問題ではなく、ソラの精神的な問題。

 プレッシャーに飲み込まれそうで心配だ。


「だけど私達、中学生向けの定期公式大会は大体制覇しちゃいましたよ」

「まぁ、そうなんだけど」


 しかし、高ランクの公式大会か。

 今言った年齢制限の無い大会を除くと、招待制の大会だったり、出場条件厳しい大会ばっかなんだよな。

 なにか良い感じの大会はないものか。


天川てんかわ赤翼あかばね。大会の話か?」

「速水くん」

「大正解。ソラが次の大会どこにしようか悩んでる」

「天川はどうなんだ。次の大会決まっているのか?」

「なーんにも決めてない」


 だって小難しい環境読みとかしなくても勝てちゃうし。

 うん……自分で言って少し悲しくなった。

 もっと強い奴と戦いたいよー!


「俺もソラと一緒に高ランク大会に出ようかな」

「ツルギくん、一緒に出てくれるんですか!」

「ソラ一人じゃ心配だし。速水も一緒に出ようぜ」


 俺がそう言った瞬間、ソラはガクッと項垂れた。

 どうしたんだ?


「天川、お前はもう少し人の気持ち考えるといい」

「なんでさ」


 速水はたまに訳の分からない事を言う。


「だがまぁ、出る大会が決まっていないなら、今回は好都合だな」

「ふぇ?」

「好都合?」


 速水のメガネがキラリ光る。

 何かいい話でも持ってきたのか?


 そんな事を考えていると、速水は一枚の紙を机に置いた。


「何これ。大会要綱か?」

「お前たちが望んでいる高ランクの大会だ」

「これ、ランクAの大会じゃないですか! プロもたくさん出るランク帯ですよ!」

「ところが、コレはそうでもないんだ」

「どういう事ですか?」


 速水は紙の一箇所を指差す。

 そこには『中学生以下限定』と書かれていた。


「中学生以下限定でこの高ランク。珍しい大会だな」

「その代わり出場条件が厳しく設定されている」

「本当ですね。直近一年間に開催された公式大会で三回以上ベスト4入りをしている事が条件です」

「更にその条件を満たしたファイターを三人集めたチームで出る必要がある」

「滅茶苦茶な条件だな」

「そうだな。だが俺達ならどうだ?」


 速水に言われてハッとする。

 確かに俺達三人はここ一年間で、何回もベスト4以上に入っている。

 というか余裕で出場条件をクリアしている。


「出場はチームである必要がある。お前達さえ良ければ、一緒に出ないか?」

「おいおい速水。少なくとも俺はどう答えるか分かってるだろ」

「私もです。まさに求めていた大会って感じです!」

「二人とも、ありがとう」


 これで話は決まった。

 次なる目標は大会で優勝……っとその前に。


「これなんて名前の大会だっけ?」


 速水とソラがずっこけた。


「天川、そのくらい最初に見ろ」

「アハハ、悪い悪い」


 では改めまして。


「ジャパン・モンスターサモナー・セレクション・カップ?」

「あぁ、毎年開催されていてテレビ中継もされている」

「主催があのUFコーポレーションですね。言われてみれば毎年中継やってますね」


 そうなんだ。

 異世界人には分からないでござる。

 ちなみにUFコーポレーションってのは、ユニバーサル・ファンタジー・コーポレーション事。

 この世界でサモンを作ってる会社ね。


「通称JMSカップ。中学生ファイターが目指す最大の大会一つだ」

「へぇ……いいじゃん。燃えるじゃん」


 参加条件の厳しさから、かなり腕のあるファイターが集まる筈だ。

 これは、俺も真に全力全開を出せるかもしれない。

 やべぇ、ニヤニヤが止まらない。


「ツルギくん、またスゴい顔になってます」

「……少し早まったか?」

「失礼だな。まだ見ぬ強者に期待してるんだよ」

「天川、間違っても地上波に恐怖映像を流すんじゃないぞ」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ!」

「殺戮兵器。もしくは無情なる1Killマシーン」

「ごめんなさいツルギくん……否定しきれません」


 流石にソラにまで言われるのはショックだぞ。

 だけどまぁ、二人が言うこと一理ある。

 最近は理不尽を押し付けるようなコンボを使い過ぎた。


 よし、ここは心機一転して王道な強さのデッキを使うか!


「大会は六月からか。もう少し先だな」

「あぁ、だからそれまでは準備期間となる」

「いいね。大会に向けてデッキを十分に調整できる」

「チーム戦に関しては俺が勉強しておこう。天川と赤翼は自分のデッキを磨いていてくれ」

「はいです!」

「任せたぜ速水」


 速水はこういう時に頼れる男だ。

 本当に良い友人だよ。


「さーて、相手が強いって分かってるなら勉強会も力入れないとな。ハードにいくぜぇ」

「頼りにしてるぞ、天川」

「うぅ、お手柔らかにお願いします」


 待ってろよまだ見ぬファイター達。

 俺達で全員倒して、優勝をもぎ取ってやる!


「あっ」

「どうしたソラ」

「あの、これチームで出場するんですよね」

「チームだな」

「……私達のチーム名、どうしましょう?」


 ソラが出場要綱の一箇所指差す。

 そこには、チーム名をつける事が義務付けられていた。


「速水、どうしよう?」

「……まぁ、締め切りまで時間はある」

「じゃあチーム名は宿題ですね」


 ちょっと帰ったらネーミングセンスを鍛えよう。

 どうせならカッコいいチーム名で出場したい。


 きっとこれが、中学校生活における最後公式大会になる気がするから。

 悔いのないようにしたい。


「JMSカップか……絶対制覇してやる」


 次なる目標が決まった。

 ならば大会に向けて、デッキ調整を始めよう。

 そろそろ相棒の新しい姿とか、お披露目してもいいかもしれないしね。

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