第六章2
――あ、あれ? そちらにおわしますのは? か、彼氏が? 停学を? 喰らったのにも関わらず? 一度も? え? 一度も? 連絡を? 一つも寄越さず? 一週間も? え? 一週間も? 放置プレイを? しくさった? かの? 有名な? 一年四組の? 杜若? 羽伊奈さんで? いらっしゃいますでしょうか?
おはようございます。そして、お久し振りでございます。わたくし、杜若羽伊奈様の彼氏、満を持して戻って参り――その半眼やめてっ! 傷つく!
羽ー伊奈さーん! 寂しかったよー! だってー! もう一度も会いに来てくれないどころか、連絡一つくれないんだもんー!
……。
なんか言ってっ!
おーい。見えてるー? 見えてますかー?
や。連絡くらいしてくれてもいいじゃないの。詩衣奈から聞いたでしょ? うんうん。詩衣奈は良い奴だよ。そこ今重要? 俺より良いってたいして変わんなくない?
はあ~。もー大変だったんだよー。これからは毎日会えるね♪ あ、そうだ♪ 久し振りにおっぱい揉んでもいいかな♪ いだいっ! ありがとうございます!
報告? いつの間に恒例行事と化してたの? 化してたんだったら毎日定時報告をする為に、毎日電話してきてくれてもいいのよ? 希望としては十七時と二十時と二十三時とおやすみなさいのお電話を――調べてたって何を?
ああ、はいはい。言いますよ。そっから? だいぶ長くなるから、たぶん途中で授業始まっちゃうよ? 詩衣奈から事情は聞いてたんじゃないの? 俺の口から改めて話す意味ってあるの? 二時間目の休み時間突入コースだよ? ひょっとしたら昼――はいはい話します話します。
ええっと、事の始まりは、一週間前の昼休み。俺の中学の同級生で田中良子ってのがいるんですがね。そいつが訪ねてきたところから始まります――。
――って、いう事の次第なんでございます。
如何でしたでしょうか? ねえ、聞いてる? 聞いてます?
なにその膨れっ面。かわいー。えいっ。ぷしゅー。えいっ。ぷしゅー。あはは。これ、詩衣奈も機嫌悪くなると膨れる癖あるから、そういう時ぷすぷす指で突っついてやるんだよ。えいっ。ぷしゅー。えいっ。ぷしゅ、いだだだだだだ。指はっ、指はっ、そっちの方向曲がらないから! 羽伊奈さん! ……羽伊奈さん!?
ふう、ふう。三回目辺りから明らかに楽しんでたでしょ……。
感想は? 難しい顔してるね。ま、難しいよね。こんなん聞かされても。
……昼休み突入しちゃいましたね。
ううん。ごめん。今日は旧校舎の方行ってくる。もう三十分以上経ってるし、残ってないかもしれないけど。
お昼大丈夫? 一人で食べれますか? はいはい、いらん心配でしたね。
じゃあねー。
って、誰もいないんかーい。
そりゃいねえか……。後十五分も残ってないし……。書き置き……。ええっと。黒板でいっか。チョーク……一個くらい落ちて……。お、あった。
『拝啓。井ノ瀬未無生様。この前は色々言っちゃってごめんなさい。実は停学喰らってました。それで来れなかったんです。明日は必ず来ま
……電話でよくね? あーそういや、連絡先聞いてたの忘れてた……。くそう。色々有り過ぎてすっかり忘れてたぜ。
……緊張するな。ショートメッセージ……って、七十文字しか無理なのね。
ええいっままよ! って、一度は言ってみたかったんだよねー。
……あ、もしもし? 井ノ瀬さん? ……うん。……うん。そう。ごめんね。急に電話しちゃって。この前はごめんね。うん。大丈夫? 俺、停学喰らっててさ。知らなかった? あはは。みんなに知れ渡ってると思ってた。友達って――まあ、友達なんてどうでもいいじゃん。俺が井ノ瀬さんと仲良いし。それでいいじゃん。友達なんて片手で数えるくらい居れば、それで十分なんだよってよく言うじゃん。なんなら俺、指五本も上がらないし。
なに? 聞こえない。うん。明日は来るよ。俺も話したいことあるからさ。うん。
それじゃあ。
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