引きこもり勇者とアクティブな魔王

@listil

第1話 引きこもり勇者

「おい、勇者よ!まだ部屋に引きこもっているのか?いい加減旅に出てはどうだ!」


黒を基調とした服、漆黒の髪に瞳。

忌むべき色を纏った彼は、ある時より魔王と呼ばれ始めた。



「うるっさいなああ、お前魔王だろ!?ラスボスだろ!?こんなとこうろついてんじゃねーよ!」


「失礼な、うろついてなどいない!ここには真っ直ぐ来たぞ!」


「そういう意味じゃねぇぇぇ!!」


こいつは昔からこうだ。

マイペースというか、なんというか。


「そんな事より、今日はこれで勝負だ!」


円盤型のアーティファクト。

…間違いない…これは…!!



「ふふふ、目の色が変わったな!そう、これはかの名作と名高いプラットルの新作だ!!」


「な…なんという物を!お前はっ、お前はあああ!!」


おもむろに立ち上がった俺達は、熱い握手を交わした。




「…なぁ、勇者」


「…なんだよ、バカ魔王」


「バ…お前、会う度に辛辣になってきてないか?」


「気のせいじゃね?」


「そ、そうか。気のせいか」


「あ、ジュース切れた。新しいの買ってきて。ツケで」


「違う、辛辣とかの問題じゃない。我の扱い酷くないか!?」



似合わねー口調。

違うだろ。

お前もっと普通に喋ってたじゃん。



「…ばーか」



俺達を取り巻く環境は変わってしまった。

だから、俺だけは変わってやらない。

レベル上げするのは、ゲームの中だけでじゅうぶんだ。


「…あ、そうだ。我のレベル50まで上がったぞ」


「…そうかよ」


「お前は……いや、なんでもない」


「はい、勝ち」


「ぬぉぉぉぉ!!」


魔物相手に、お前と肩を並べて戦った。

俺が勇者になったあの日。

お前が魔王になったあの日。


あの日のまま、俺はレベル5のままで良いんだよ。

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