絶対にNTRない彼女
鬼頭星之衛
【初章】高校生編
#1 英雄と真桜
俺の名前は
この春から県内の高校に進学し、早一か月ぐらいが経とうとしている。
春先の陽気が梅雨を経由して夏に向かいだそうとしている時期。気が早い奴は夏服を着たりする。
俺や周りの生徒も新生活にも慣れだした頃で、部活に勉強にそれぞれの青春を謳歌している。
今日一日の授業を終えた生徒達がそれぞれの部活へ足早に教室を出ていく中、俺は下駄箱で靴を履き替えて、正門に向かっている。
俺は小学校からサッカーをしており、高校でもサッカー部に所属している。普段なら授業を終えれば、他の連中と同じく速攻で部活に行くのだが、今日は諸事情でグラウンドが使えず、部活の顧問も休むのも練習の内だと言い、今日のサッカー部はお休みだ。
正門を出た所で、スマホをいじりながら待ち人を待っている俺に何人かの顔見知りが通り過ぎたので軽い挨拶をした。
仲良くなりだしたクラスメイトや、部活での仲間。そして、部活の先輩も通ったのでしっかり挨拶をした。
運動部は上下関係が厳しいので、しっかり挨拶をしないと後が怖い。
俺が通っている高校は部活動に力を入れており、若干他の高校より練習内容や上下関係が厳しいらしい。
その為、県大会は勿論、地方大会やたまに全国に行く部活もある。
だから、ここの生徒で部活に所属している奴はある程度覚悟を持って、入部している。
俺も当然その覚悟を持って入部している。エース級とまではいかないが、そこそこ上手い自信はある。
軽く挨拶するぐらいの知り合いしか通り過ぎない中、俺の傍に駆け寄ってくる人物がいた。
「おーい! 英雄! こんな所で何してるんだ?」
俺に声を掛けてきた人物は
堅豪は俺と同じ一年生で同じサッカー部所属だ。
堅豪は俺よりも中学時代での実績があり、三年生の先輩達が引退したら、レギュラー入り出来るんじゃないかと噂されている。
今の時期の一年生はボール拾いや先輩達の雑用や体作りの為の筋トレが主なので、実際にどれ程俺よりサッカーが上手いかどうかは知らない。
まぁ、多分上手いんだろう。性格良いし、イケメンだし。
堅豪はその整った顔立ちと優しい性格で、すでに一年生の女子に人気がある。
さすがに、上級生までには知れ渡っていないとは思うが、兎に角、人気者だ。
イケメンで性格が良くて、サッカーが上手いんだから、モテて同然だろう。
まぁ、俺はあまり羨ましいと思わないが・・・
俺は堅豪とは結構仲が良い。話しやすいし、変に気を遣わなくていい。
ただ、部活中に先輩からの雑用をサボろうとする癖は直してほしいと思う。
他の一年生に押し付けたりするが、嫌な押し付け方じゃなくて、相手が断りづらい頼み方をしている。
性格が良く、誰にでも優しいと評判らしいが、一緒に部活をしているとちょっとした二面性が垣間見れる。
まぁ、それを差し引いても良い奴なんだろうけど。
「あぁ、真桜を待っているんだ。今日は部活が休みだから久しぶりに放課後デートする事になったんだ」
「はぁ~、羨ましいねぇ あんな美人の幼馴染が彼女だなんてなぁ~ 俺も美人の彼女がほしいぜ」
「よく言うよ・・・」
モテ男の堅豪の戯言はほっとくとして、俺が今待っている人物がさっき口に出した
真桜とは所謂幼馴染ってやつで、幼稚園の頃からの知り合いだ。
家も隣同士で、お互いの両親も仲が良いい。
当然、家が隣同士だと校区も一緒なので、小中学校も同じだ。常に一緒のクラスという訳ではなかったが、何度か同じクラスになった覚えがある。
幼稚園や小学校低学年までは俺の後ろにべったり付いて来るような真桜だったが、成長するにつれべったり付いて来る事は無くなったが、それでもお互いの距離感は特に仲の良い友達って感じだった。
なので、途中で疎遠になったりとかも無く、結構仲良く一緒に成長したと思う。
そして、真桜との関係に転機が訪れたのは中学三年生の三学期の頃。
大体の生徒が高校受験を終え、俺と真桜もこの高校に合格が決まった時に、俺から真桜に告白して、恋人同士になった。
正直断られる気はしなかったが、不安じゃなかったかと言えば、嘘になる。
ただ、それほど俺と真桜はお互い通じ合っていたと思う。
受験を終え、正式に付き合うようになった俺達は初デートでキスをした。
付き合う前から真桜とは頻繁に一緒に出掛けていたので、デートと言ってもいつもと変わらなかったけど、やっぱりそれは特別なものだった。
幼稚園の頃から知っている真桜とキスをするのは少し照れくさかったが、好きと言う気持ちに偽りはなかったから、真桜の瞳を真っすぐ見つめ口づけした。
少し照れながら顎を突き出し、唇を俺へと向けてきた真桜は凄く可愛かった。
「ヒデ君、おまたせ。あら?・・・繁味君。こんにちは」
堅豪と無駄話をしていると噂の人物が現れた。
真桜の髪は亜麻色で肩下まで伸びており、陽光に当てられキラキラ輝いている。
その瞳はアーモンド形をしており、クールビューティーでありながら可愛らしい印象もある。
鼻立ちもすーっと通っており、身内のひいき目で見てもかなりの美人だ。
身長は俺よりちょっと低いぐらいの160センチ程で、同じ年の女子にしては高身長な方だ。
幼稚園の頃から真桜を知っている俺からしたら、彼女の体の成長具合に一番驚いている。
その豊満な胸は制服の上からでも分かるし、腰はくびれ、ヒップもちょうど良い丸みを帯びている。
何度でも言うが、身内のひいき目で見ても真桜はスタイル抜群の美人だ。
・・・堅豪の言っていた事も分からんでもないし、周りの男共のやっかみがあるのも自覚している。
でも別に真桜と俺が不釣り合いだなんて捻くれた考えはしていない。
俺は真桜とずっと一緒にいたいし、真桜の事を幸せにしたいとしか考えていない。
「こんにちは、井手亜さん。今ちょうど英雄と井手亜さんの話をしていた所だったんだ。こんな可愛い彼女がいて羨ましいって!」
「フフフッ、ありがとう。でも、繁味君だったらすぐに可愛い彼女が出来るわよ。私のクラスでもあなたのファンは沢山いるからね」
「そうなのか? ・・・まぁ、いいや。アツアツな二人の邪魔になるから邪魔者はここらで退散するよ」
「邪魔者とは思ってねぇけど、またな!」
「またね、繁味君」
堅豪が俺達に気を遣って先に下校した。
「じゃ行っこか?」
「そうだな、今日は何処に寄るつもりだ? 〇△駅前のGloria Jean’sCAFEか?」
「う~ん、そこは私達の地元の駅でいつでも行けるから、今日は別の場所にしない?」
「いいけど、俺はあんまり詳しくないぞ?」
「大丈夫、大丈夫。クラスで仲良くなった子が教えてくれたいいカフェがあるのよ」
「そうか、なら真桜に任せるよ」
「うん、うん。では私に付いてきなさい!」
「アハハッ、はい、はい。仰せのままにお嬢様!」
俺達は少しふざけながら通学路を通って駅まで向かった。
どちらからともなくお互いの手を握り、恋人繋ぎ。
俺は真桜とのこんな幸せな時間がずっと続くと信じている。きっと真桜もそう思っているはずだ。
ε
私の名前は
私には幼馴染でカッコいい自慢の彼氏がいる。
私はいつもヒデ君の事をカッコいいよって言うけど本人は否定する。
でも、身内のひいき目に見ても、ヒデ君は十分カッコいい。
170センチ後半はありそうなスラっとした高身長。
小学校の頃からサッカーをやっている為、全身は引き締まっていて、細マッチョって感じ。
サッカーをする為に、短く切り揃えられた黒髪は凄く爽やかで見ていて気持ちがいい。
二重の瞼は大きく、キリッとした印象で凄く男前。
それに、いつも私の事を気に掛けてくれて、何度惚れ直してもキリがないくらい優しい。
そんなヒデ君とは幼稚園の頃からの知り合いで、所謂幼馴染と言う関係。
ヒデ君と知り合った頃の幼い私は内気な性格で引っ込み思案だった。
それには理由がある。
私は生まれた時から髪の毛が亜麻色をしており、他の子達と見た目が違っていた。
その為、幼稚園でいじられ、酷い時にはイジメみたいな目にもあった事がある。
でも、そんな私をいつもヒデ君が庇ってくれた。
私を庇った事によって、ヒデ君もイジメられるのではないかと私は不安になった。
でも、ヒデ君は毅然とした態度で大丈夫だと言ってくれた。
私はそれが堪らなく嬉しく、ヒデ君の胸の中で泣いた記憶がある。
幼い頃の私はそんなヒデ君に依存していて、いつもべったり後ろにくっ付いていた。
でも、多分その所為でヒデ君は度々私を庇った事による怪我をしていた。
多分上級生とも喧嘩したんだと思う。
私はいつも守ってくれているヒデ君に感謝しながらも、いつも私の所為で怪我しているヒデ君に、自分自身がどうしようもなく情けなく感じて、たまにお風呂で泣いた。
でも、泣いてばかりじゃ現状は変わらないと思い、私自身も変わる覚悟をした。
私がそう決意した頃には、私へのイジメは鳴りを潜めていた。多分全部ヒデ君のお陰だと思う。
私はヒデ君には感謝してもし切れない恩がある。それに幼い頃の私はヒデ君の事が好きだったのだと思う。
幼さ故にその恋心をはっきり理解はしていなかったが、今にして思えばそういう節はあった。
だから、その頃の私はヒデ君に追いつきたくて必死になった。
その頃のヒデ君は小学四年生で地元のサッカークラブに所属し始めた。
運動神経の良いヒデ君はすぐにクラブ内でも頭角を現し、すぐにレギュラーの座を勝ち取った。
そんなヒデ君を見て、さらに自分がどれだけヒデ君に相応しくないかを思い知らされた。
でも、私は諦めなかった。
周りのませた女の子達がヒデ君の事をカッコいいと気にし始めたのも私の背中を後押しした。
まずは内気な性格を変えようと思った。だって、その所為でヒデ君が怪我をしたのだから。
でも、性格自体はすぐに改善した。
多分私は元々社交的な性格だったのだと思う。イジメによって抑圧されていただけなのだろう、今にしてそう思う。
でも、運動神経の良いヒデ君は、頭も良くて、いつもテストで良い点を取っていた。
私は鈍臭くて、努力しても運動の方は全然ダメだったけど、せめて、勉強はヒデ君に追いつきたくて必死に勉強した。
そのおかげで、同じ高校に通えている。
そんな劣等感を抱いていた私にもヒデ君はずっと優しかった。
中学生の頃も私達は相変わらず仲良しで、私は凄く幸せだった。
でも、大変だった高校受験を終えた頃に、さらに私を幸せな気持ちにしてくれる出来事が起きた。
ヒデ君が私に告白してくれた。
私は今まで生きてきて、あれ程の幸福は他にないと言えるぐらいの幸せを感じた。
だって、ずっと好きだった人から好きって告白される程の幸福など他にあるだろうか。
私達は恋人になってからの初デートでキスをした。
凄く緊張したけど、ヒデ君の逞しい腕に抱かれながらするキスは何物にも代えがたい幸福感があった。
そして、高校に入学する前の長めの春休みに、ヒデ君は私を抱いてくれた。
幼い頃から想っていた最愛の人に抱かれる喜びは表現のしようがない。
「ここがクラスの子に教えてもらった所だよ」
「mojojo? あまり聞いた事がないなぁ。でも、見た感じ雰囲気いいな」
「だよね〜、じゃ、早速中に入ろ? ここのオススメはフラットホワイトっていうカフェオレに似たものらしいよ」
「カフェオレみたいなら甘いんじゃないのか? 俺は甘いのはちょっとなぁ・・・」
「ヒデ君ならそう言うと思ったけど、そのフラットホワイトは甘すぎないらしいよ。だから、ヒデ君でも飲めるかもってオススメして貰ったんだ〜」
「そうなのか? なんかわざわざ俺の為に悪いなぁ・・・」
「ううん、全然気にしないで。ヒデ君の優しさに比べればこんなのなんて事ないよ」
「そっか、ありがとう」
ヒデ君がお礼と共に屈託のない笑顔を私に向けてくれた。
私も満面の笑みで、どういたしましてと返した。
あぁ、私は今凄く幸せ。
ヒデ君。私はどんな事があろうと、あなたを想い続けます。
しかし、世の中は残酷なもので、こんな私達の仲を引き裂こうとする悪意はすぐそこまで忍び寄っている。
でも、私はその存在に気付いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます