美容室は怪奇な所でございます【弐】

高峠美那

第1話 お出かけ致しましょう

 夕方六時。夜の闇が冷たい空気を誘いたわわにみのったレモンの木をらした。静まり返っていた古民家風こみんかふうの可愛らしい店に明かりがともる。


「セキー。出かけましょうー」


 うなじをあらわにした和服美人が現れる。


「はーい。お供します♡」


 男性なのに色っぽくウインクして答えるセキ。


「オーナー、俺達も出かけるから店空みせあけるけどいい?」


 仮装パーティーかと見紛みまごう個性豊かなスタッフ達が、店を留守にする心配をしているらしい。


「構わないわよ。行ってらっしゃい」


「オーナーが店にいなきゃ、この扉開かないのよ。それと、オーナーと会話した人でないとねぇ」


「便利だな。んじゃ、でかけるか」


「遅くならないようにね。シンデレラ〜♡」


「セキー。おまえ殺すぞ…」


「あたし、死んでるから殺せないわよ〜」 



Hair dressingヘアドレッシグ Lifeライフ


 ここは美人オーナーが営む美容室。

 本日は表向きの定休日。


 着流し和服であだっぽく話すセキ。

丸メガネにバンダナを頭に巻いたゲンスケ。

ハリネズミみたいに短髪をたて、長い片耳ピアスをキラキラ揺らして歩くエモト。

 長い黒髪にちょこんと小さな帽子を飾り、黒いリボンに白いレースのゴスロリのユナ。

それと只今ただいま見習みならい中の麗奈れいな

 彼等は幽霊でありながら人間相手に営業している変わり者。

 娯楽ごらくこのみ、好きな事はおおいに楽しむ。

 欲求に忠実ちゅうじつで、ウジウジ悩むのは大嫌い。

 

 さあ、今夜も楽しい一夜に致しましょう!







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