閑話 その後の俺たち【カナト視点】
俺たちの評判がガタ落ちして、2週間が経った。
この2週間、俺たちは……浮浪生活を送っていた。
「クソッ、最悪だ!!」
「どうして、こんな目に合うんっスかね……」
「いつになったら、こんな生活が終わるのでしょう……」
カネはなく、宿には止まれない。
ギルドで依頼を受けようにも、他の冒険者が邪魔をしてくる。
冒険者に邪魔をされるが故に、カネを稼ぐことはできない。
かつて俺たちのファンだったヤツを訪れたが、憲兵を呼ばれた。
仕方なく借金を借りようとしたが、俺たちの顔を見ただけで職員は追い出してきた。
本当に……最悪だ。
「全部、全部アルガのせいだ!!」
「そうっスよ!! アイツさえいなければ、ボクたちはこんな目に合わなかったんスから!!」
「なんとかして復讐をしたいですね……」
こんな話をしても、何も変わりはしない。
そんなことはわかっているが、どうしても愚痴は消えない。
泥を啜って飢えを凌ぐ今の生活では、愚痴をして空腹を紛らわせることしかできないのだ。
しかし……、絶対にアルガは許さない。
こんな極貧生活をいつか抜け出してやり、アルガ達に復讐してやる。
俺たちをこんな目に合わせたんだ。死ぬことよりも恐ろしい、凄惨な復讐をしてやる。
「おぉ、こんなところにいたか」
アルガへの復讐を誓っていると、1人の少女が話しかけてきた。
少女は10代に見えるが、なんというか……不思議な雰囲気を纏っている。
出会ったことなどないハズなのに、どこか懐かしいような……そんな雰囲気をした少女だ。
「えっと、キミは誰っスか? 迷子っスか?」
「いやいや、貴様らを探していたんだ」
「? えっと……どこかで会いましたっけ? いえ、会った気はしますけれど……」
「ワタシのことはどうでもいいだろう。それよりも、貴様ら──悔しくないか?」
少女は真っ赤な瞳を輝かせ、そう語った。
「悔しい……?」
「アルガに嵌められて、悔しくないか?」
「どうしてその話を……。いや、その話は小さな女の子でさえも知っているくらい、既に広まっているのか」
「そりゃあ悔しいっスけれど、でも……どうしようもないっスよ」
「いつかは復讐をしたいですけれど、少なくとも……今はその時ではありませんね」
2人の言うとおりだ。
俺たちにはカネがなく、何もできない。
冒険者としてもE級に成り下がり、権力も失った。
今の俺たちには、何一つとして無いのだ。
「ワタシなら、今の状況を打破できるぞ?」
少女は荒唐無稽に、そう語る。
ただの子どもの戯言、とは思わなかった。
何故かはわからないが、その言葉は真実なのだと悟った。
「……本当だな?」
「あぁ、ワタシの手を取れ。そうすれば、貴様らに──力を授けよう」
俺たちは少女の小さな手を──取った。
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