第30話 もう遅い
次の日、俺たちはギルドにきた。
ギルドに到着すると、既にカナト達はいた。
そんなカナト達を囲うように、何人もの冒険者が集っている。
「待たせたな」
「あ、アルガ……ラトネは?」
「まずは感謝の気持ちを述べろよ。誰のために危険な迷宮に挑んだと思っているんだ」
「す、すまない……。あ、ありがとう……」
「それで……ラトネは救えたんスか?」
「あぁ。あの迷宮程度、誰でも攻略可能だろ」
俺は影からラトネ像を取り出す。
ゴトッと地面に転がるラトネ像。
そのラトネ像にカナト達は群がった。
「ラトネ!! ラトネ!!」
「……無事だったんスね」
「……よかったです。何よりですね」
嬉しそうなカナトとは対照的に、苦虫を嚙み潰したようなサンズとナミミ。
彼女たちはカナトに好意を寄せているから、ライバルが消えて嬉しかったんだろう。そしてそのライバルが帰ってきたことで、不満を感じているのだろうな。
「アルガ……ありがとう。そ、それで……石化の解呪方法はわかるか?」
「舐めているのか? それは俺の仕事じゃない」
「そ、そうだよな……。わかった、解呪は俺たちがするよ」
まぁ、解呪なんて無理なんだけどな。
それはただの石像で、本当のラトネは熔解したんだから。
「な、なぁアルガ……お前さえよければ、また俺たちとパーティを組まないか?」
「もう遅いと前にも言っただろう。それに……そんなことを言える状況じゃないことに、本当に気付いていないのか?」
周りの冒険者たちの困惑する声が、聞こえてくる。
「おいおい、なんだ? あれは……ラトネじゃないか?」
「石像になっているぞ? ヒュドラやメデューサに敗れたのか?」
「だけど、それにしてはカナト達はピンピンしているし、どういうことなんだ?」
「もしかして……ラトネだけを迷宮に捨てて、自分たちは逃げてきたんじゃないか?」
「確かに……それなら納得できるが、そんな非道なことをアイツらがするか? アイツらは新進気鋭なS級なんだぞ?」
周りの冒険者たちが、現状に疑問を抱いている。
ラトネによく似た石像がここにあって、カナトを含むその他の仲間たちはピンピンしているのだから疑問を抱いているのだろう。
「どうだ、
「捨てたって……そんな──」
「事実だろ。お前たちは自分たちが一番大切なんだ。俺を追放したように、お前たちは不必要な要素は切り捨てるような連中なんだからな」
俺の発言によって、周りの冒険者たちが動揺している。
「す、捨てた……?」
「おいおい、マジかよ。今の発言はつまり、仲間を犠牲にして自分たちだけ逃げてきた……ってことだよな?」
「最低じゃねェか……。パーティを組んだ以上、一蓮托生の仲になるべきだろ? それを自分たちが生き残るために、仲間を犠牲にして逃げるなんて……」
「それに……アルガがカナトパーティを抜けたのも、自分からではなくて追放されたから……みたいだな」
「つまりアイツらが仲間を捨てたのは、今回が初ではないってことか」
「……ゴミクズじゃねェか」
周りの冒険者たちが、厳しい目でカナト達を睨んでいる。
はッ、いい気味だな。
「ち、違う……俺たちは!!」
「そ、そうっスよ!! こ、この腐れテイマーが全然活躍しないから、解雇しただけっスよ!!」
「そうですよ!! 私たちは正当な追放をしただけで、活躍を見せないこのテイマーが悪いのです!!」
と、反論をする3人。
だがどんな理由があっても、一度パーティを組んだ仲間を追放することは道徳に反している。それが冒険者の倫理観だ。
彼らがどれだけ言い訳をしても、他の冒険者は彼らに不信感を抱くだろう。
言い訳をするカナト達と、それを責め立てる冒険差たち。
彼らの喧騒が大きくなってきた時──
「……今の話、本当ですか?」
現れたのは身長2メートルはある、屈強な男性。
ネミラス・ミラスル、このギルドのギルドマスターがやってきた。
「えぇ、ネミラスさん。すべて事実です」
「つまり……カナトさんたちはアルガさんを追放して、さらにラトネさんを見捨てた……という訳ですね?」
「えぇ、その通りです」
さすがはネミラスさん、理解力が高い。
「ち、違う!!」
「そうっスよ!! アルガの件は……部分的に事実かもしれないっスけど!!」
「ですけれど、ラトネさんを見捨てたわけではありませんわ!!」
見苦しく言い訳を続ける、哀れな3人。
彼らもギルドマスターには、強く出ることができないのだろう。
「ですが、客観的に見て……あなた方が追放や仲間を見捨てたということは、事実だと思いますが?」
「で、ですけれど……ラトネは見捨てていませんよ!!」
「だったら何故、ラトネさんだけが石化していて、あなた方は無事なのですか? 納得のいく理由をお聞かせ願いたいのですが?」
「そ、それは……」
「……これ以上の問答は不要ですね」
ネミラスさんは深くため息を吐いた。
そして──
「カナトさん、サンズさん、ナミミさん。あなた方にランクを降格します」
「……え?」
「あなた方は今を持って、E級に降格とします」
と、ネミラスさんは告げた。
「え、お、俺たちが……E級……?」
「ご、5年かけてS級にまで昇りつめたのに……っスか……?」
「ら、ラトネを見捨てただけなのにですか……?」
哀れな連中だ。
因果応報とは、彼らの為に存在する言葉なのかもしれないな。
「じゃあな、E級ども。SSS級の俺の元まで、昇って来いよ」
と、カナトの肩をポンッと叩き、俺たちはその場を去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます