第23話 配合3

「で、どうして助けるの?」


 シセルさんの宿に戻るや否や、シセルさんから質問が飛んできた。

 まぁ、予想はしていたことだ。こちらも用意していた答えを提示しよう。


「助けませんよ」


 と、俺は答えた。


「え? どういうこと?」


「ラトネは迷宮で殺す予定です。アイツらにはボスの呪いを受けてこんな姿になったと説明をして、適当な人形を渡しますよ」


「でも……そんなの信じるかな?」


「ラトネとカナトは恋仲です。恋人を失い、極限状態なんですから信じると思いますよ」


「そっか。それにしても……エゲツないこと考えるね」


「引きましたか?」


「ううん。仲間を追放するような下衆なんだから、相応の罰は受けないとね!」


 よかった、シセルさんが理解力のある人で。


「でも、復讐はそれで終わり? それで満足なの?」


「いいえ。その後にカナト達の名誉を傷付けます」


「よかった、あんなんじゃ足りないよね」


「えぇ、具体的には──」


「待って! その先は言わないで! 楽しみは取って置きたいんだ!」


「わかりました。楽しみにしておいてください」


 わざわざギルドで引き渡すのには、理由がある。あの場所は常に、冒険者で賑わっているからな。



 ◆



「さて、迷宮に挑む前に最後の配合を行いますか」


「お、配合術ってヤツだね! 楽しみだな!」


 3匹を召喚し、配合を行う。

 素材に選ぶのは、いつもと同様だ。

 ララにはメタルカナブンを。リリにはサバトゴートを。ルルにはゴブリンプリーストを。

 それぞれを素材とし、配合を行う。


「キドラァ!!」


「ガルゥ!!」


「ピキー!!」


 3匹の身体が光り輝き、配合が行われる。

 ……今さらだが、これは"配合"と呼んでいいのだろうか。どちらかというと"融合"と呼んだ方が正しいと思うのだが。

 そんなことを考えている間に、3匹の光は晴れた。

 

「おぉ、スゴい!! ちょっとだけ見た目が変わっているね!!」


「キドラァ!!」


「ガルゥ!!」


「ピキー!!」


「ん? この2匹だけまた輝き出したよ!?」


 見るとララとリリの身体が、またしても光を放っている。

 これは以前にもあった──


「進化の予兆です!!」


 光の中でララとリリのシルエットが、徐々に変わっていく。

 そして光は晴れ、そこには──


「デドラァ!!」


「ルガァ!!」


 大きく変化した2匹がいた。


「デカいし……美しいな」


 ララは身体が大きくなった。

 ヘビを思わせる細長い身体は、10メートルは優に越えるだろう。そんな身体を滑らかに覆うのは、堅牢な鋼のウロコだ。

 背中にはコウモリを彷彿させる、大きな翼が生えている。片翼だけで6メートルはあるだろう。

 長い身体には短い足が4本生えており、ヘビというよりも東洋のドラゴンのようだと形容する方が正しいかもしれない。


 実に美しい身体とは対照的に、頭部はヒツジの頭蓋骨をそのまま拡大して装着したような不気味な仕上がりとなっている。がらんどうな眼窩の奥には深紅の光が灯っており、いっそう恐怖を掻き立てる。

 大きく曲がりくねったツノが生えており、禍々しい雰囲気を醸し出している。


 美しい胴体と禍々しい頭部。

 アンバランスのようだが、掛け合わせると意外にもピッタリと合う。

 そんな不思議なドラゴンに、ララは進化した。


「デカいし……勇ましいな」


 ルルも身体が大きくなった。

 3メートルの巨体になり、四肢と爪牙はより強靭になった。体毛は漆黒のソレから、若干赤みがかかった。

 

 頭部からはこれまた立派な、ヒツジのツノが生えた。ララとは違い、頭部がヒツジの頭蓋骨に置換されたわけではなく、ただツノが生えているだけだ。


 ララとは違い、容姿の大きな変化は少ない。

 だがしかし、圧倒的に強くなったことは見て分かる。

 

「2匹とも……立派になったな」


「デドラァ!!」


「ルガァ!!」


 俺に抱きついてくる2匹。

 デカくなった分、抱きしめづらい。


「スゴいね!! アルガくん!! 私、こんな魔物初めて見たよ!!」


 興奮気味のシセルさん。

 かわいらしいな。


「そうだ、ステータスを確認しなくちゃな」


 ────────────────────


【名 前】:ララ

【年 齢】:1

【種 族】:メタル・デーモンドラゴン

【レベル】:1


【生命力】:4989/4989

【魔 力】:5769/5769

【攻撃力】:9867

【防御力】:2786521

【敏捷力】:1784


【汎用スキル】:剣術 Lv6

        短剣術 Lv11

        体術 Lv8

        引っ掻き Lv68

        噛みつき Lv77

        突進 Lv74

        超音波 Lv5


【種族スキル】:ドラゴンブレス Lv62

        ドラゴンテール Lv61

        ドラゴンウィング Lv61

        ドラゴンクロー Lv61

        ライトニングタックル Lv42

        ライトニングサンダー Lv41

        ニードル Lv7

        毛棘飛ばし Lv4

        火炎車 Lv6

        毒爪 Lv10

        メタル化 LvMAX

        

【固有スキル】:鋼の鱗 LvMAX


【魔法スキル】:《下級の火球ファイア・ボール》 Lv4


────────────────────


────────────────────


【名 前】:リリ

【年 齢】:1

【種 族】:ヘルビースト

【レベル】:1


【生命力】:10789/10789

【魔 力】:3415/3415

【攻撃力】:16549

【防御力】:9921

【敏捷力】:21114


【汎用スキル】:引っ掻き Lv98

        噛みつき Lv94

        突進 Lv91

        嗅覚強化 Lv90


【種族スキル】:肉裂爪 Lv62

        電磁防壁 Lv61

        ライトニングタックル Lv61

        ライトニングサンダー Lv60

        スパークカッター Lv55

        サンダーブレス Lv51

        ヘルサンダー Lv50

        ヘルブレス Lv42

        ヘルフレイム Lv42

        超音波 Lv6

        ニードル Lv6

        毛棘飛ばし Lv11

        火炎車 Lv8

        毒爪 Lv20

        地獄の遠吠え Lv44


【固有スキル】:地獄の霹靂神はたたかみ


【魔法スキル】:《下級の火球ファイア・ボール》 Lv3

        《下級の闇球ダーク・ボール》 Lv3


────────────────────


 2匹とも以前までとは、まるで比べ物にならないほど強くなった。

 ステータスも1万を超えるモノが出てきて、新たなスキルもいくつも習得できた。


 何よりも2匹とも、固有スキルを獲得している。

 固有スキルとはその名の通り、特定の個体のみが獲得可能なスキルだ。

 一般的に100万分の一の確率で生まれる個体にしか現れないとされ、とても貴重なスキルとなっている。


 俺は2匹が得た固有スキルを確認した。


【鉄の鱗】

 強靭なウロコを持つ個体のみが獲得可能なスキル。

 物理ダメージを20パーセント減少させる。


【地獄の霹靂神はたたかみ

 雷に愛された個体のみが獲得可能なスキル。

 雷属性の攻撃を行う際、消費魔力が半減される。


「両者ともかなり強いスキルだな」


 恐らくサバトゴートを配合素材としたことによって、2匹とも雷系の攻撃を覚えたのだろう。

 サバトゴートは基本的に無属性の魔物だが、ごく稀に雷属性を操る個体が現れる。

 いちいち配合素材のスキルを確認したりしないから気づかなかったが、知らず知らずの内に雷属性を司るサバトゴートを配合素材にしていたのだろうな。


「ララはメタルカナブン以外にサバトゴートを配合素材にして、どうやら正解だったようだな。メタルカナブンだけだったら、今の姿にはならなかっただろう」


 メタルカナブンは防御力は高いが、それ以外の能力が低い。

 それを補うために何度かサバトゴートを配合素材にしたが、どうやら今回はそれが功を成したようだ。


「リリはララよりも多くのサバトゴートと配合したから、より雷属性の影響が表れているな。このまま雷属性に特化したアタッカーとして、育てるとしよう」


 リリの成長方針も正解だったようだ。

 サバトゴートが持つ悪魔系の特徴も顕著に表れており、普通に獣系と配合するだけでは得られなかった強さを獲得できた。


「スゴいねアルガくん!! 私、こんな魔物は見たことがないよ!!」


「これからより一層、強い魔物を見せてあげますよ」


「楽しみにしているね!!」


 2匹とも強さはSS級上位。

 カナト達が敗れたイザルト迷宮はSS級程度だから、ハッキリ言って余裕で踏破可能だろう。


「さぁ、明日を楽しみに待ちましょう」


 そう告げ、俺はシセルさんの宿を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る