第39話  月曜日


 月曜日になってしまった。


 月曜日……。それは、社会人たちが最も忌み嫌う日。


 だが……オレはそうじゃない。


 何も感じない。

 楽しみでもない。

 萎えてもいない。


 ブルーになってないだけ、いいのかもな。


 でも、昨日は本当に暇だったな……。

 スマホはない。

 本もない。

 ラノベがないのが大きい。だってここ、ラノベの世界だし。


 あーー。日曜日が終わったのを嬉しいと感じる……。

 なんたることか……。




「みなさん、おはようございます。休みはどうでしたか? バイト先はどうでしたか? 今週も頑張っていきましょう! 1、2時間目は魔術防御ですね。グラウンドに体操服で集合するように、お願いします」 


 実践魔術系はやはりグラウンドか。

 ま、室内じゃ何が起こるかわからないからな。体育館で火の魔法でも使って、壁に当たったらどうなるのか。

 答えは、当たったところが焦げる。

 自分で生み出した火は制御できるが、触れている時点でその場所は焦げる。

 広がらないようにはできるらしいがな。




 体操服に着替えてグラウンドに着くと、見慣れない物体があった。

 大砲のような、テニスのボール射出機みたいなやつ。

 しかも、大量に。少なくとも10台はあるな。20はない。 


「──では、授業を始めます。金曜日に、攻撃魔法の適性がない人はやったと思います。アレです」


 あーー、そういや、あんなの使ってた気がする。威力の弱い『風弾ウィンドバレット』を出すやつね。


「1発も受けなければ、何をしてもいいです。避けるもよし。武器で弾くもよし。魔法で迎撃するもよし。武器が必要な人は、このあとすぐに武器庫に取りに行きますので、付いて来てください」


 今回は棍でいいかな! 一番使いやすいし。




 武器庫にて、武器を拝借。

 オレは棍。ターバは剣を2本……双剣だな。ヤマルは槍。

 他の奴らも思い思いに武器を選び、グラウンドに戻った。




「ライン、あそこ空いてるし、あそこでやろうぜ」

「おお、ホントだ。そうするか」


 空いていたのは、端っこのものだ。


「えーと、ここに手を当てて、魔力を注げばいいのか?」

「そう! ちょっと入れるだけですぐに満タンになる。満タンに入れないと動かないけど」

「なるほどな。じゃ、ターバ。白線のところに立ってろよ。立ったら魔力を注ぐから。狙いは定めなくていいんだっけ?」

「それが勝手に狙ってくるから大丈夫」

「そうか」


 それはそれは。なかなか有能ですな。


 ターバも位置についたし、魔力を注ぐとしよ……もう満タンだ。

 ほんのちょびっとしか入れてないんだけど。


「よし、入れたぞ!」

「おう!」


 ターバは双剣を構えた。

 身体強化は発動していない。


 すると、装置から『風弾ウィンドバレット』がターバめがけて発射された。


 1発目。てんで的外れだ。頭上をかすることなく飛んでいった。


 2発目。これはターバを真正面から捉えた。だが、左手の剣を一閃させると、『風弾ウィンドバレット』は消え去った。




 10発目から、魔法と魔法の間隔が狭くなった。だが、なんの障害にもならない。


 

 そして、20発すべての魔法をすべて防ぎ切った。


「どんなもんよ? 1学期はこんなもんだってよ。2学期からはもう少し難しくなるらしい」

「ふーーん。まあいい。次はオレの番だな」


 魔力を注ぎ、白線の上に立つ。そして、棍を構える。ダーバを真似、身体強化は発動させない。

 先ほどのターバの時と同じように『風弾ウィンドバレット』が射出される。


 1発目。顔の真正面だ。棍を振るい、掻き消す。


 2発目。これは足元だ。これも、棍を振るって搔き消す。




 そして、10発目から魔法の間隔が狭くなった。なんの問題にもなりゃしねぇがな!



 

 19…………20っと!

 よぉし、終わり! 全然問題はないな。余裕のよっちゃんとやらだ。てっちゃんだっけ?


「ターバ、これ、簡単すぎねぇか?」

「……周りを見てみなヨ」


 ターバが小声でそう言うから、周りを見てみた。

 ……何人か、完全に避けきれていないようだ。でも何人かは全て捌ききれている。

 スゥやヤマルがいい例だ。


「なるほどな。理解理解」

「ま、これでもトレーニングにはなるからいいだろ」

「そうだな。でも、余裕過ぎる……」

「我慢だ我慢!」


 そう……だな。

 今学期を我慢すれば……いや、次学期でも余裕だろう。今の状態であくびが出そうなんだから。


「あ! いいこと思いついた」

「なに?」

「ターバ……縛り入れようぜ」

「縄でどこを縛るんだよ」

「違う違う。縛りってのは制限って意味。動きに制限入れようぜってこと」

「なるほどな。……たしかに面白そうだ。で、どんな制限を?」


 こういうときに入れる縛りはいくつか思い浮かぶ。

 1つ目は、行動範囲の制限。

 2つ目は、使用部位の制限。


 とりあえず思い浮かんだのはこれらだ。


 …………1つ目の「行動範囲の制限」がいいだろう。


「行動範囲に制限を入れようか。そうだな……一歩も動くの禁止とかどうだ?」

「異議なし。面白そうだ。言い出しっぺのライン、お先にどうぞ」

「では、お言葉に甘えて」


 ターバに魔力を注いでもらい、白線の上に立つ。装置から白線まで、およそ20メートル。


 よし、来る!

 もちろん、身体強化は発動していない。




 すべて棍で掻き消すことができた。


「――順調ですね。魔法に対抗するには、武器に魔力を込めたほうがいいですよ。これは弱い魔法なので問題はないですが、『火球ファイアーボール』とか『石弾ロックバレット』なんかを迎撃するとき、魔法を込めていない武器だと、武器が傷つくのでね」

「「わかりました!」」


 武器に魔力を注ぐ、か。

 やってみるか。

 身体強化で感じた、血管のようなもの。あれが武器にも流れていくように…………よし。できた。


「ライン、できた?」

「おう! ……ターバもできたようだな」

「意識したら簡単にな」

「自習のとき、ヤマルに教えようか。破壊力が増すしな」

「そうした方がいいな」


 見た感じ、先生はさっきのことを話していないようだ。できているようすもないしな。






 次は回避か。体操服のまま4階の回避教室に移動する。


「皆さん、安心してください。この回避の授業でやることは3年間変わりませんが、一番楽しいと評判です! ……そこで、これを1人1個持ってください」


 そう言って配られたのは、


「ボール……?」


 それは、ゴムボールだった(この際、イメージするゴムなのかは置いといて)。


「これを、投げるんです。一人が的になって、その人に向けて投げます。その人は、それを避けるだけ。出席番号1〜20はあちらに。21〜40はこちらの壁に集まって、やってください。順番とかは任せます」


 広さが2クラス分あるからな。長方形の短い辺に集まるのか。ちゃんと線が引かれている。


 投げる方も投げられる方も楽しそうだ。投げれるのは一人1回まで。つまり、19発。


 あえて的外れな場所を狙うのもいいな。クククッ。嗚呼……最っ高に楽しみだ……っ!




 ……ようやくオレの番だ。

 2人やったところで、一人1回投げるのはつまらないとなったので、時間を決めることになった。

 その時間内ではいくら投げてもよし。ゴムっぽいから跳ね返ってくるしな。


「ライン、用意は?」

「問題ない。もういける」

「じゃぁ……3……2……1……0!」


 アラームと同じ働きの魔法具を起動し、スタートだ。

 もちろん、身体強化はなし。

 授業で使うこと自体、あまりないんだけどな。


 同時に3発……。だが、オレには当たらない。的外れだ。

 それに続くかたちで4発目以降が投げられる。複数人が投げてくるせいで、同時に攻撃されるから厄介だ。

 これを全部避けることは、ほぼ不可能とみていいだろう。……身体強化なしでもありでも、な。


 


 終わった…………。一回だけでもさすがに疲れる。

 スコア――当たった回数は8回。少ないほうだ。的外れな場所に投げられたりもしたが、避けた方向に投げられたりしたから、当たっちまった。



 

 その後、手加減など微塵もなく――男女関係なく――全力で投げた。

 みんなそうだから問題にはならなかった。


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