第41話 長門とユナ、佐藤と山部と

俺はユナが好きなんだと思う。

いや。

ユナが好きだ。


だから俺は.....ユナと一緒に歩いて行けたらな、って思う。

世の中を.....生き辛い世界を。

そんな俺達だが永遠の鐘という丘の上の観光名所に来た。


温泉街から200メートル先。

この場所は.....ユナが目的とした場所だ。

俺は永遠の鐘を見る。


そこにはハート型の真鍮製か?鈍い銀色のそんな鐘があった。

俺はその鐘を見ながら外の景色を見る。

下には温泉街が広がっている。

つまり丘の上である。

カップルだらけだなぁ.....。


「アハハ。恥ずかしいね」


「それは俺もな。.....お前はこういうの耐性があって頑丈で良いよな」


「何言っているの。私だって恥ずかしいって」


「恥ずかしい割にはあっちらこっちら動いているよなお前.....」


写真撮ったりとかさ。

俺は考えながらジト目でユナを見る。

ユナは、まあまあ、と言いながら笑みを浮かべた。

微笑みに近い笑みを、であるが。

俺はその姿を見ながら少しだけ時間が経った空を見る。


「太陽が重なる時にこの鐘を鳴らすんだって。丁度そういう時があるんだって」


「そうすれば幸せになるのか?」


「うん。幸せになるというか永遠に結ばれるそうだね」


「.....そうか。それじゃ鳴らさないとな」


「だね」


前には順番待ちをしているカップルが.....居る。

妊娠している方も居る。

俺達はそれを見ながら恥ずかしがる。

妊娠、か。

それはまだ早いけどな。


「.....ねえ。赤ちゃん欲しい?」


「.....あのな。何考えているか知らないが変態だぞ」


「わ、私は真面目に聞いています」


「真面目に聞いているなら赤くならないで欲しいな。顔が」


「だって恥ずかしい」


「なら言うなよ!?」


俺達がそんな感じで言っていると。

カップル達が退いていた。

俺達はその事に顔を見合わせてから。

意を決して設置されている階段を上がる。

丁度.....今が太陽が重なっている。


「じゃあ鳴らそっか」


「そうだな。一緒に鈴の音を鳴らすのか」


「そうだね。神社みたいな」


「よし」


それから俺達は永遠の鐘を鳴らした。

そして笑みを浮かべ合う。

で。

その永遠の鐘の所にこんな説明書きが。


キスすれば更に全てが結ばれる、と。


冗談じゃないなこんな場所でキスなんか.....、と思っていると。

俺の手を握ってきたユナ。

そして顔を上げて俺の唇を奪った。

俺は真っ赤になりながらユナを見る。

ユナは笑顔を浮かべる。


「これでよし」


「良くねぇよ!!!!!」


「何で?結ばれたくないの?藤也」


「違う!人が多いのにキスなんぞ.....」


みんな拍手して俺達を見ていた。

あまりの事に赤くなる俺。

そしてユナの手を引いてからそのまま次を譲る。

全くコイツという奴は!

思いながらユナの手を握り締める。


「アハハ。逃避行みたいだね」


「そうだな.....まあそうだな.....じゃない!全くお前という奴は!」


「人が大勢居たって私は君と幸せになる為なら何でもするから」


「.....!」


「.....ね?」


真っ赤になりながら俺はユナを見る。

そして逃げて来た場所でユナはニコニコしている。

俺は盛大に溜息を吐きながら頭をガリガリ掻く。


幸せの為、か。

考えながら俺は、でも確かにな、と言う。

そしてユナの頭を撫でる。


「.....ユナ。愛してる」


「そうだね。私も」


「.....恥ずかしいんだけどな」


「私だって恥ずかしさを通り越した恥ずかしさがあるよ?でもお互い様だね。それだったら。アハハ」


ユナは俺を見ながら柔和な笑顔を見せる。

それから、ねえ。藤也。私写真撮りたいな。丘の上で、と言ってくる。

俺は頷きながら、分かった。じゃあまた行こうか、と穏やかに返事する。

そして動き出す俺達。


「なあ」


「.....何?藤也」


「髪の毛.....茶色も格好良いからまたしてくれ」


「.....!.....藤也が言うならお任せあれ」


「有難うな」


そんな感じでやり取りしていると。

遠くで何か動く影が見えた.....ってオイ。

何かその。


山部と聖羅じゃね?、と思ったのだが。

マスクと帽子とサングラス掛けているが。

何しているんだ。


「みんな俺達を見守っている、か」


「え?どうしたの?」


「何でもない。どいつもコイツもって思っただけだ」


俺は苦笑しながら、じゃあ写真撮るか、と行く。

それから俺達はそのまま写真を撮ってから宿に帰宅した。

山部が偉そうな感じで立っている。

何やってんだコイツは。



「私のお陰で退屈せずに良かったでしょ」


「.....お前ってさ」


「何。何か文句でも.....」


「過保護過ぎるぞ。まるで母性があるっていうか」


目をパチクリしてから。

そのまま羞恥に染まる山部。

やっぱり付けて来ていたな?コイツ。

俺は考えながら更に山部を追い詰めてみる。


「お前はずっと俺達を付けていたろ。何だよ声を掛けてくれれば良いのに」


「.....!!!!!」


「ハハハ。お前は可愛いな.....」


「恥ずかしがらせているわね!!!!?アンタ!」


「バレたか。そんな感じではあるけどな」


でも、と俺は言葉を発する。

そして真剣な顔で山部を見つめる。

お前がそこまで反省しているんだな、って思ったよ。山部。お前とはまた仲良くなれそうだな、と言葉を発する。

すると山部は、まあそうね、と言ってくる。


「.....敵同士でもあって。そこそこに戦友っていうんじゃないかしら」


「まあそうだな」


「アンタとは色々あったけどね。恨むべきが全てなのかな、って思った。アンタ達を見ていて」


「.....ああ」


そう返事をすると。

赤くなってそっぽを見る山部。

すると奥から佐藤が顔を見せた。

それからこっちにやって来る。

何だコイツ。居たのか。


「よお」


「.....よお、じゃねーよ。居たのかお前」


「今さっき来た。.....何だか面白そうな事をしているじゃねーか」


「何も面白い事をしてないけどな。付き合い始めただけだ」


「そうか。実はな。俺も山部に告白した」


「.....何!?」


それで一応付き合い始めたわ、と言ってくる佐藤。

俺は顔をビックリさせながら山部を見る。

山部は、コイツが急に押し掛けて来て誕生日プレゼントとか言ってくるから、と困惑する。

その顔を見ながらユナと顔を見合わせて、ブッ、と吹き出す。

それから、お前誕生日だったんだな、と言う。


「じゃあ盛大に祝わないといけないですね」


「そうだな。確かに」


「止めて!恥ずかしい!!!!!」


散々俺達を恥ずかしがらせてそれは無い。

俺は考えながらニヤッとした。

そして、山部。俺達を散々恥ずかしがらせたんだからそれなりの罰は受けてもらう、と言ってみる。

山部は青ざめて、止めなさい.....何をする気、と目をパチクリする。


「それは、なあ?」


「そうだね。確かにね」


それから俺達は顔をもう一度見合わせてからニヤニヤする。

すると佐藤は、程々にしてくれよ。山部も恥ずかしがっているしな、と言ってからそのまま、トイレに行って来る、と去って行く。

ちょっと待ちなさい!?、と再び困惑する山部を置いて、だ。


「あの男.....」


「まあそれは冗談だが。.....誕生日おめだな。山部」


「そうだね。.....おめでとう御座います」


「.....別に祝ってもらいたい訳じゃないんだけど.....」


まあでも有難うね、と笑みを浮かべる山部。

それから山部は、じゃあ夕食の支度をしてくるから、と席を外す。

佐藤が手伝ったお陰で結構出来てるけど、とも。

するとその言葉を聞いて、あ。私も手伝って良いですか?、とユナが言った。

山部は、いや客にそんな事、と言うが。


「まあまあ。ささっ」


「ちょっと!背中押さないで!」


それからそのまま去って行く2人。

俺は苦笑してその2人を見送ってから歩くと。

聖羅がニコニコして立っていた。

良かったねお兄ちゃん、と言いながら。


「そうだな。まあ良かったんじゃないか。色々とな」


「うん」


「.....こんな感じになるとは予想外だけどな」


「.....だね。アハハ」


それから俺達は客室に歩き出す。

すると鈴木からメッセージが入った。

それは。

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