第40話 恋人の鐘
遠野からの連絡が途絶えた。
俺は眉を顰めながら遠野からの連絡が途絶えたスマホを仕舞う。
それから顎に手を添える。
するとこんな言葉がユナから飛んでくる。
「多分、光だね。着いたんだね.....」
「奴を正常に戻せる力を持つのはアイツもだからな。だから力が必要だ。羽田の力が」
「そうだね。羽田くんの力は必要だよね」
「ああ。そうだな」
これ以上話をしても飯が不味くなりそうだ。
結論が出るまでは取り敢えず。
思いながら俺は抹茶菓子を食べる。
特製の抹茶菓子を。
「それはそうと。付き合うからにはお互いの趣味を分かち合いたいかも」
「?.....まあ良いが。俺の趣味ってアニメだぞ?」
「アニメかー。私の趣味はドラマ鑑賞だよ」
「良い趣味じゃないか」
そんな事を言うと目を丸くしたユナ。
それから頬を朱に染めてから、そ、そうかな、と笑顔を浮かべる。
それからユナはじゃあ面白いドラマを今度紹介するよ!、とワキワキとする感じで言ってくる。
俺はその姿に、ああ、と返事をした。
それから俺はユナに対して、そんな趣味があるなんてな、と返事をする。
「光が教えてくれたの。面白いドラマを。だから私はドラマが好き。でもアニメも好きになる。だって好きな人が好きなんだから」
「無理をして好きになる必要は無いぞ。そもそもにドラマが好きな人がいきなりアニメに切り替えたら卒倒しそうだ」
「じゃあ徐々に慣らしていくよ。でも観ないなんて選択肢は無いよ」
「さいですか.....」
なら今度俺が好きなアニメを教えてやろうかな。
俺は考えながらユナに笑みを溢す。
すると羽田から電話が掛かってきた。
ビクッとしたが俺は直ぐに電話を取る。
すると羽田が、もしもし、と言ってくる。
「大丈夫か。羽田」
『無事という事かな。無事ではあるよ。優も無事だ。正直言って完璧に交渉が上手くいっては無いけどね。優はやはり君が嫌らしい』
「そうか」
『それで色々と話したけど.....自らの考えは曲げないそうだ』
「だろうな」
だけど確かに祝うべき事かもしれないと取り繕った感じだがユナと君の事を祝っていた、と羽田は言ってくる。
俺は、そうか。有難うな、と告げる。
すると横に居たユナが、羽田くんは今何処に居るの?、と聞いた。
その言葉に羽田は、今は優の家の廊下だ、と回答した。
『優に断りを入れて話してる』
「優の様子はどうだった?」
『マジのかなりに悩んでいる様に見える。だから俺は言ったよ。絆ってのは目に見えるもんじゃないって。優はそれなりには納得した様に見える』
「そうなんだね.....」
でも優は納得出来る部分と納得出来ない部分がある様だ、と羽田は言葉を発する。
俺はその言葉に、そうか、と返事をしながら、羽田。すまないが俺としては遠野がやはり信頼出来ない。だから遠野とは距離が取りたい、と言う。
すると羽田は、そうだろうな、と返事をした。
『.....俺としても君とユナの安全は確保したい。そこで提案なんだが.....暫くは俺達から離れてみないか。ユナと一緒に』
「.....離れるってのはどういう意味だ」
『ユナと暫くは仲間としての士気を高めたいとか.....そういう名目で暫くは俺達から距離を置いて優を納得させるまで取り敢えずは距離を置くって事だ』
「.....それで良いか。ユナ」
「そうだね。一旦みんな頭を冷やす為に離れてから.....仲間同士の交流を控えようかな」
そんな感じで俺に笑みを浮かべるユナ。
俺はその言葉に頷きながら、羽田。取り敢えずはユナと一緒に行動するよ。暫くは、と話した。
すると羽田は、ああ。取り敢えず今からも説明する。優に。だから君達は安心して行動してほしい、と回答してくれた。
「有難い。すまないが頼めるか」
『ああ。君には色々とお世話になっているからな。これぐらいしか出来ないが』
「.....こっちも色々と探ってみる」
『.....そうか。頼む』
それから俺達は電話を切る。
そして抹茶菓子を食べ終わってから立ち上がる。
伸びをした。
そうしてから、さてと。じゃあ次は行きたい所あるか?、と聞いてみる。
すると、じゃあ丘の上の永遠の鐘って所に行かない?、と言ってくる。
「.....永遠の鐘?それって何だ?」
「恋人同士が必ず結ばれる鐘だよ」
「.....そうなんだな。じゃあ行ってみるか」
「そうだね。私は将来結婚するんだし。藤也と」
「早過ぎるわ!!!!!」
そんな感じで俺達はキャイキャイ騒ぐ。
それから笑顔になる俺達。
そうして手を繋いで.....改めて赤面してから。
そのまま歩いて行った。
恋人の鐘、とやらの丘の方角に、だ。
「ねえ。藤也」
「何だ」
君は好きな人は居なかったの?昔は、と聞いてくるユナ。
俺は顎に手を添えながら、居なかったな。やはり事件も事件だったし、と答える。
すると、そうなんだね、と複雑な顔をした。
だが切り返す様に、でも今が幸せだよね、と言ってくるユナ。
俺はその言葉に一瞬だけ考えたが頷いた。
「そうだな。あくまでお前が居るから俺は幸せな気がする」
「.....過去もあるけど.....乗り越えようよ」
「ああ」
俺達は手をソフトに握る。
握り返す。
そしてクスクスとまた笑い合った。
それからゆっくり少しづつ。
目の前の太陽を見ながら歩き出した。
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