旅行の計画と準備はしっかりと

冲田

旅行の計画と準備はしっかりと

 私は、旅行の計画はしっかり立てる派だ。行き当たりばったりで行き先を決めたり、ハプニングを楽しむ派の人たちが信じられない。

 今回の一人旅のプランも完璧だ。行き先、交通手段、食事をとる場所、食べ歩きの軽食、泊まる場所、そこに至る、分単位のスケジュール……。


 こういう計画を立てていると、


「そんなに細かく決めておいて、どこかで計画が破綻したらどうするの?」

 と聞かれることはよくある。


 確かに、人身事故で電車が遅れる、渋滞でバスが動かない、ホームページなどには書いていない臨時休業……そういうことは起こりうる。

 もちろん、その場合に備えたプランABCD……各種取り揃えてこそ、旅行は実現するのだ。

 その場その場で判断し、一部計画を変更するのは行き当たりばったりとは言わない。臨機応変というのだ。下準備は完璧だ。



 今回の旅行は空の旅から始まる。

 予定の時間に家を出て、時刻表通りに来た電車に乗って、想定どおりの早めの時間に空港に到着する。

 幸運なことに天候もよく、運航状況は順調のようだ。

 乗り込んだ飛行機は、整備に時間がかかったとのことで、多少離陸が遅れた。しかしまぁ、飛行機に乗るならこれくらいは折り込み済みだ。


 離陸して、しばらくの時間がたった。

 CAさんが運んできてくれる飲み物も、コーヒーと決めていた。

 今のところプランBを使わずに済んでいる。ああ……計画どおりに進む旅はなんとも心地良い。


「お客様の中に、お医者様はいらっしゃいませんか」


 そう、機内アナウンスが流れて、周囲に緊張が走った。CAさんが、同じセリフを繰り返しながら、通路を歩く。


「はい! 私は医者です」


 名乗り出る医者がいたので、今度はホッとした空気が流れる。

 医者がいても、機内の救急セットでどうにもならなければ、引き返したり近くの空港に降り立つ場合がある。大事ないといいのだけれど……。




 引き返す様子はなかったので、急病人はなんとかなったのだろう。一安心でくつろいでいると、


「この飛行機はジャックした! 要求に応じなければ、前から順に殺していくぞ! さあ、まずは機長に会わせろ!」


 と、突然のたまいはじめる男が現れた。


 男はどうやって持って入ったのか、拳銃を手に、乗客やCAを威嚇している。

 機内には悲鳴が飛び交い、大混乱になった。まさか、自分が乗り込む機内でハイジャックが起こるなんて、まず想定する人はいないだろう。


 ──私以外はね。


「警察の特殊部隊だ! 犯人確保!」


 何人かの屈強な男たちが、ハイジャック犯をあっという間に取り押さえた。



 急病人が出た時のための医師も、ハイジャックが起こった時のための特殊部隊も、私が用意したものだ。いや、正確には同じ飛行機に乗り合わせるよう仕組んだというところか。


 旅行の計画はしっかりと。そして、破綻しないための入念な下調べと下準備が快適な旅には重要なのだ。

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