第2話:想定外の相方
~前話までのハイライト~
俺の名前は神野夕(じんのゆう)!日向仁というペンネームで活動するラノベ作家!
ラブコメを書きたいのに、全然いい作品が書けない!
それを見かねた担当さんが執筆の手伝いをしてくれる人を紹介してくれるって言ってくれたんだ!女性経験のほとんどない俺としてはこの提案はモチロンウェルカム!!
だが、その相方というのはなんとオタク嫌いで有名な俺の幼馴染であった!!!!
これから俺、どうなっちゃうの~~~~!!!!!!!
以下、本文!
♦♦♦♦
カフェの窓際、景色が一番よく見える4人掛けの席には、一方に女性陣、もう一方に男性陣が(陣、といっても俺だけだが)それぞれ座ることとなった。
タイプは違えど美人二人が同じテーブルに座る様子は、とても華があった、が…。
「…(こいつが、あのパスタ丸さん?嘘だろ!?)」
「…(今日は憧れの日向先生に会えるってはずだったのに、何で神野がいるのよ!)」
「…(やっべー、これ私やらかしたっぽい?ぽい?)」
そこでは三者三様の思いで皆が黙りこくっていた。
「ふ、二人とも緊張してるみたいだね。ほら、リラックスリラックスー」
真っ先に沈黙を破ったのは一番の年長者である前原担当。おそらくこの状況を重く見て、打開を試みるつもりだろう。
「うん、まあ初対面なら何話せばいいのか分かんないもんね!そうだ!じゃあまずは自己紹介から始める?」
前言撤回、この人自分がやらかしてない風にしたいだけだ。汚い!流石大人汚い!
俺の恨みがましい視線を受けて一瞬ひるむも、話を続けようとする。
「ええと、紹介するわね。こちら、
「いえ、どっちの名前も存じ上げております。」
うっと言わんばかりの表情をした後、めげずに俺の紹介に移る。見習いたい、その根性。
「で、こっちの男の子が」
「神野夕」
「…え?」
思わぬカウンターに戸惑う最年長(2〇才)
「神野夕、県立竹之山東高校2年、誕生日は10月5日。…で、あってるわよね?」
初めてこっちを向き、聞いてくる早瀬。
「…正解、よく覚えてるな。」
前原さんはお世辞にも良好そうには見えない俺らの雰囲気を見てより一層慌て始める。
「ええと…二人はどういうご関係で、いらっしゃるんですか?」
「ほら、説明してやれよパスタ丸。」
「へえ、人に任せてないでご自慢の文章力で説明したらどうですか、自称大作家さん?」
「てめぇ…」
「なぁにぃ?」
「どっちでもいいから、メンチ切ってないで早く事情説明して~~~~!」
本来静かなはずのカフェに、妙齢の女性の悲鳴が響き渡った。
~~10分後~~
「————という感じですね。」
結局説明は俺がすることとなった。
「なるほどなるほど、つまりは二人は高校の同級生で、小学校からの腐れ縁ってことだね!」
「「違います!!!」」
息ぴったりで否定する俺達。
「今の俺の説明のどこをどう聞いてたらそうなるんすか!確かに小学生時代は仲が良かったです。それは認めます、だけど俺達は中学から道を違えたんです!あと平然とした顔でここにいますけど、こいつかなりのオタク嫌いって評判ですからね!?」
俺に負けじと早瀬も加勢してくる
「そうですよ!小学生のこいつはそれはそれは可愛かったのに…中学に上がってからは小憎たらしくなって…ほんと、どこでこんな陰キャオタクに道を間違えたんだか…。」
「ほう?」
「何よ?なんか間違ってる?」
「俺には間違えだらけに見えるけどなあ?」
再び立ち上がりメンチを切りあう俺達。
「まーまー落ち着いて二人とも!」
前原さんが間に入り、俺達はメンチを切ったまま席へと戻った。
「————ていうか、お前本当にあのパスタ丸さんなのかよ。」
正直このオタク嫌いな女があの神ブロガーと同一人物だとは未だに俺は思えなかったのだ。
「真昼間からその名前で呼ばないで!っていうかアンタこそ…」
しばらく何か考えているような眼で俺をじっと見つめてくる。
「初期案でのジルの髪の色は?」
これは俺のデビュー作にして唯一世に出た作品、「銀狼の翼人」に関する問題か…だが、作者に質問とはいい度胸だな?数瞬の間の後、俺は答える。
「——金髪。”銀狼”なのに金髪なんですか!?って前原さんにツッコまれたな…」
懐かしむ俺の前でうんうんと頷く前原さん。いやあ、その節はご迷惑をおかけしました。
「じゃあ、ヒロインのフミちゃんの剣にこめられた技のうち、原作で最後まで明かされなかったのは何種類?」
「二種類。4番と6番だな。」
「じゃ、じゃあジェイク様の出自に隠された謎って何?」
この女、最早ファンとして裏設定を聞きに来ている…。」
「ああ、ジェイクの過去?あれなんか掲示板とかでやたら騒がれてたけど実際ショーもないんだよな…」
「おい、ジェイク様にしょうもないとか言うな、例え作者でも許さんぞ。」
早瀬が今まで見たことがないほど怖い目で睨みつけてくる。ああ、そういえば…
「そういえば、パスタ丸さんってジェイク夢女子でしたね~。しかもかなり重度の。」
「ええ、俺もすっかり失念してました…」
確かブログ内でジェイクアンチとコメ欄で争ってたレベルだった、こいつ。
「認めざるを得ないわね…悔しいけど、アンタ本当に日向先生だったんだ…。手を込んだドッキリかなんかだと思ってた…。」
いや、何でそんなことわざわざお前にしなきゃいけないんだよ。
と、ここでパチンという音を立て、前原さんが手を叩く。。
「じゃあもう自己紹介とかは十分ですかね。じゃあ後は早瀬さん、日向先生、お伝えした通りにお願いしますね。」
「え?俺ホントにこいつとラブコメ書くんですか?他の人にしましょうよ、他の人に!」
「そうですよ!さすがに無茶ですって!」
俺と早瀬の必死の説得にもかかわらず、彼女は顎に指をあて、小首をかしげる。くそっ、この人いい年して若い仕草が様になってやがる…。
「え?でも私からしたらお二人はすごくいいコンビに見えますけどね?」
「「いやいや、何言ってるんですか。」」
「ほら、息ぴったりじゃないですか。」
二人とも押し黙る。
「あと、早瀬さん先生の新作見たいですよね?」
「ええ、まあ確かに見たいっちゃ見たいですね…。」
やばい、早くも幼馴染が陥落しそうだ。
「あと、日向先生についてですけど…」
さあ、どんな切り口から攻めてくる前原さん。
「俺は何言われても陥落しませんよ…」
「先生は相方さんが見知らぬ女の子だったら取材の前に多分碌に話せすらしないのでアウトです。」
「ぐはぁ」
正論の右ストレートをモロに顔面に受けた気分だった。
俺たちのリアクションを見て満足そうにうなずく。
「ま、ですから私としてはこのペアでお願いしたいんですが、ダメですか?」
そういって彼女はテーブルに手を伸ばす。
「————分かりました。そういう事なら協力させてもらいます。」
そういって彼女も手を重ねる。
「ほら、後は先生だけですよ。」
はあ、まったくこの人は。一体どこまで読んでたのか…。俺も無言で手を重ねる。
それを見て前原さんは満面の笑みを浮かべる
「じゃあ、日向先生の新作ラブコメの完成を目指して、頑張りましょう!」
「「「おー!!」」」
こうして俺達は奇跡的な再会を果たし、奇妙な協力関係を結ぶこととなったのであった。しかしこの出会いが、いずれベストセラーを産むことと———
「———あのー、他のお客さんもいらっしゃるので、お静かにお願いします…。」
「「「すっ、すみません…」」」
スタートから全然締まんねぇなホントに!
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