えっ?恋愛ゲームのモブキャラ転生?いきなり死亡フラグがありますよね?えっ!ヒロイン達が奴隷落ち!?僕は時空魔法でヒロイン達を救いたい!

花咲一樹

第1章 死亡フラグ編

第1話 ゲームの世界

「あれ?」


 王立セントシエル学院高等部のグラウンド脇。今日は体育祭が開催されていて、次が僕達のクラスも参加する障害物競走だ。とはいえ僕はその競技には参加しないので、観戦用に用意された椅子に座ってボ~としていた。その時に、突然僕は前世の記憶を思いだした。


 前世の僕がやりまくっていた恋愛ゲーム『ドキドキプリンス』、略して『ドキプリ』。ゲームはシンプルで各ストーリー別に美少女と最終的に恋人になるというゲームだ。


 僕はその世界の体育祭で命を落とす所謂モブキャラだ。はい? いま何と? ……命を……落とす!?


「え~~~~~~っ!?」

「ウッセえザコ! 殺すぞ!」

「す、スミマセン、アーベルト様」


 僕を怒鳴ったのはゲーム主人公で第2王子のアーベルト様。顔は超イケメンだが生活態度も性格も悪く、権威と暴力の帝王って感じだ。性格ぶっ壊れキャラの第2王子、つまりシナリオは『王子様暴走編』だ。


 『王子様暴走編』で攻略出来るヒロインは伯爵令嬢のメリッサ様か、男爵令嬢のニーチェ様って事になる。


 更に他のヒロインである女の子達は第2王子の奴隷落ちする胸クソストーリーだ。そっち系の人達には人気のストーリーで、二次創作ネタの薄い本が即売会でバカ売れだとか?


 そしてそのストーリーでは暴走第2王子と対立する第1王子派との絡みがあり、それを主人公の第2王子は回避してシナリオを進めるのだが、それに巻き込まれて死亡する生徒がいる。その生徒の名はルイン。つまり僕である。


 シナリオの展開しだいだが、僕が死ぬ場面は2カ所ある。一つは体育祭で、ルートしだいで体育祭では死なないが野営会で死亡する事になる。いずれにせよ僕には死亡ルートしかない。


「おいザコ!」

「は、はい」

「体育祭かったり~から、俺の代わりにテメエ出ろや!」


 来たよ!主人公の第2王子が死亡しない為の回避ルート。『体育祭をばっくれますか?』『YES or NO』ってやつだ。第2王子がYESを選択した場合は代理でNPCが参加する。つまりは僕だ。


「テメエ、ちゃんとやっとけよ! 行くぞおめえら!」


 僕が断る前にアーベルト様は、取り巻きの男子学生達とその場から立ち去ってしまった。


「…………」


 ここで僕もばっくれるという選択も出来るが、その場合のその後の展開がゲームと異なる為に不測の事態も考えられる。体育祭後のアーベルト様や取り巻き組による虐めや暴力、最悪殺されるなんて展開だ。


 アーベルト様が出るのは次の障害物競走だ。たしかレース途中で食べるパンに毒が盛られていて、代わりに出たルインがそれを食べて死亡する話しだったはずだ。つまりはパンを食べなければいいだけだ。


♢♢♢


「よ~い……スタート!」


 スタートの旗が振り下ろされて僕の番の障害物競走が始まった。一斉に走る6人の男子。


 どて


 スタート直後にわざと転ぶ。僕が組する紅組から怒声が飛び交う。


 起き上がって走りだすが他の5人はすでにハードルを飛び越えている。そして僕はハードルに突っ込みまたまた転倒。


 紅組からの怒声に加え、白組からの笑い声も混じる。起き上がった頃には他の5人は跳び箱を終えてネットを潜っている。ヨシヨシ!


 再々スタートして跳び箱を越えて、ネットを潜り抜けた頃には他の5人はゴールをしていた。


 怒声と罵声と笑い声の中、僕はぶら下がっている毒入りパンを握り、紐ごと手で千切り取るとパンは食べないままゴールをした。


♢♢♢


 昨日の体育祭で紅組は大敗、僕達のクラス順位も最下位と散々な結果だった。クラス順位が悪い原因は、アーベルト様の取り巻き組が競技に不参加して点数を稼げなかったことが大きいのだが、クラスカーストトップのアーベルト様のお供連中に誰一人として文句が言えず、その矛先はクラスカースト下位である僕に向けられた。


 クラスで今までは空気な存在だった僕が、汚物扱いという悲しい結末だ。僕の隣の席に座るヒロインの一人である侯爵令嬢のカトレア様にも厳しい目付きで睨まれた。いや、いつも通りかな?


 しかし僕に後悔は無い。何せ僕の命がかかっていたんだからね。ゲーム設定では体育祭のパンに毒を盛ったのは第1王子派の一人とされているが犯人は不明だ。今さら犯人探しも出来ないし、僕が狙われている訳では無いから犯人を探す必要もない。


 1回目の死亡フラグの回避は出来た。次の死亡フラグは1ヶ月後の野営会だ。野営会の夜に魔物に襲われて僕は死亡する事になっている。襲ってくる魔物は災害クラスB級のデスベアー。この1ヶ月の間に僕はデスベアーから身を守る術を身に付けなくてはいけない。


 クラスメイトの侮辱の目も気にならない。天啓としか言いようがない、このタイミングでの前世の記憶の復活。僕は野営会に向けて自分を鍛える道を進むぞ!


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