涙の隣にいる僕の名は〜キミがボクにすべてを与えてくれた~

幽美 有明

告げる想い

 片思いが終わらなかったのが1週間前で、片思いを終わらせようとするのが今日で。

 僕の心は移ろいすぎじゃないだろうか。まだ愚弟に好意を抱いているわけじゃないし、まだまだ涙のことが大好きなままだけど。

 あーあ、愚弟の看病なんてするんじゃなかった。そうすれば僕はずっと片思いのままで入れたのに。

 思えば僕はずっと、誰かを愛することを恐れていたのかもしれない。

 片思いだって好きの延長線上で、好き以上愛未満だ。

 僕は、あの両親の血を引いている。人を愛した時どんな人間に豹変するか分からない。愛は人を根本から変えてしまうものだから。それが、怖かったんだろうか。その答えを僕自身も知らないわけだけど。

 はぁ、このままじゃだめか。


 ずっと僕は涙の家の前で立ち止まっていた。これから遊びに行くと、連絡はしてあった。でも、インターフォンを鳴らす勇気がでなかった。

 片思いを告げようと思い至ったはいいが、覚悟がまだ曖昧だった。

 インターフォンを鳴らせば、今までの僕ではいられなくなる。

 涙もこんな気持ちだったんだろうか、あの先輩に告白する時は。


 悩むなんて僕らしくないか。男なら当たって砕けろと言うじゃないか。インターフォンを鳴らしたら、あとはどうとでもなるさ。


『ピンポーン』


 インターフォンを鳴らすと少しして、『ガチャ』と鍵が開けられる。


「いらっしゃい、委員長」

「お邪魔するよ、涙」


 靴を脱いで家に上がる。二階に続く階段を登りながら、二人で話す。


「委員長が私の家に遊びに来るなんて久しぶりだね。何して遊ぶ?」


 確かに久しぶりだ。いや、僕は始めてくるけど。昔はよく遊びに来てた。


「遊びに来たって言うより、今日は話したいことがあってきたんだけど」

「そうなんだ、じゃあ先に私の部屋で待ってて、私お茶持ってくるから」

「あっ、うん」


 静止するまもなく、涙は一階に降りていく。

 昔の記憶を頼りに、涙の部屋を探そうとしたけど。その必要はなかった。【涙】と書かれたネームプレートが扉にはかけられてあったから。


 ドアノブを回して、扉を引いて開ける。

 部屋の中はぬいぐるみが沢山置いてあった。見覚えのある僕が買ってあげたぬいぐるみだ。ベットの上、棚の上、床の上、モニターの上、にも置いてある。

 これだけ見たら可愛い女の子の部屋なんだけど。服などかが、床に落ちていた。ゴミは落ちてないけど、そうじゃない物が床に散乱してた。

 涙は昔となんにも変わってない。


「お待たせ委員長」


 僕の目の前に置かれた飲み物は紅茶。しかも私が好きだった奴だ。僕になってから遊びに来てないのに、よく覚えてる。それが嬉しかった。

涙が僕の向かい側に座るのを待ってから話し始める。


「ありがとう、涙」

「気にしないで。それで話って何?」

「話っていうのは、」


 口が固まる。急に口の中が乾燥してべたつく。舌がうまく動かない。紅茶を一気飲みして潤った口を頑張って動かす。


「僕は、涙のことが好きなんだ」

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