第3話 魔王をめちゃくちゃ強く設定してみた
おれたちは、魔王城に裏口から侵入した。途中の雑魚怪物は面倒くさいし興味ないので、全部、おれが全知全能の力を使って消滅させた。
「なんで、こんなことになったのかしら」
「全部、覇樹が悪いんだよ」
「わたしは、おうちに帰らないと」
三人の仲間は全然やる気がないようなので、おれはもう一度、仲間を鼓舞することにした。先頭を歩いていたおれが、後ろを振り返って、演説する。
「いいか。この世界の創造主であるおれは、魔王をめちゃくちゃ強く設定した。きみたちが頑張れば、ぎりぎりで勝てないこともないくらいには調整してあるが、なめてかかると全滅もあり得る。願い事を叶えたかったら、本気で魔王退治をするんだ。全力を尽くせ。気を抜くな」
おれがいうと、さっそく質問が飛んだ。
「強いってどのくらい? 魔王は、戦車や核兵器より強いの?」
「魔王は、戦車や核兵器より強い。あまく見るな。だが、瑞希の剣は、魔王の肉を断てるし、士郎の斧は魔王の骨を砕けるし、もみじの槍は魔王の体を貫ける。がんばれ」
「覇樹は、全知全能の神さまなんだろ。覇樹が倒せよ」
「それでは面白くない。おれは補助にまわる予定だ」
と、おれがいっているところに、心外な意見が出てきた。信じられないことに、本心からいってるらしい。
「あの、魔王さんをなぜ退治しないといけないんでしょうか。話し合いで解決するのが、現代人の良心であり、責務ではないでしょうか」
もみじのバカがいっている。
驚いたことに、士郎がそれに賛同した。
「その通りだよ。ぼくらはあくまでも、非暴力による名誉革命を目指すべきだ。魔王だって、尊い命を持っているんだ。ぼくらの身勝手で殺すなんて許されない。魔王には魔王の価値観があり、魔王の言い分があるはずだ。それは、戦闘ではなく、裁判で裁かれるべきだ。そして、ぼくら四人は誰も裁判官ではない」
「うるせええ。魔王を退治するっていったら、退治するんだよ。これは、命令だ。神からきみたちに課せられた使命なんだよ。それに逆らうことは許さないぞ。ふざけるな」
おれはマジでキレかかっていたが、なんとか、平常心を保ちつつ、仲間に八つ当たりするのだけは避けた。
この四人で、仲よく楽しく、魔王退治をするんだ。それは、おれにとって、人生の目的であり、至福の体験になるのはまちがいない。
そんなこんなで、おれ様が先頭をきることにより、なんとか、四人で魔王の謁見の間にまで辿りついた。そこは、透明の床が霧の上に浮かんでいる不思議な空間で、魔王城の中になんでこんな広い空間があるのか、設定したおれにもよくわからないが、とにかく、おれはそう設定したのであり、その透明の床の上でおれたち四人と魔王は戦うことになった。
魔王は、体長三十メートルくらいあり、太ったおじさんの格好をしている。身に着けている衣装が豪華で、紅を基調とした派手なものだった。口が、十メートルより大きく開き、呑み込まれてしまいそうなのが怖かった。
さすがに、現実に対峙してみると、三人は魔王の恐ろしさにかなり恐れを抱いたようだった。これから、戦わなくてはならないというのが、また怖い。
核兵器より強いってどれくらいじゃねん。
魔王はいった。
「よく来た、栄光の戦士たちよ。世界の所有権をかけて、この魔王と戦うというのなら受けて立とう。この魔王に勝負を挑んでくる度胸のあるものがいるとは思わなかった。その身の程知らずを身をもって教えてやろうぞ」
よし。これから、魔王と戦闘だ。
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