第4話 かならずアイツがいる

 グレイザークは予選を楽々らくらく突破したに声をかける。


「なかなかの腕前……しかしどこかでお会いしませんでしたか?」


「ふぉっふぉっふぉっ。いや、あなたは知らないかたのようじゃ」

 老人は右腕を胸にかざしながら答えた。


「しかしその独特な言い回し、仕草。……おまえデスゲイズだろう?」


「フガッ。何を言いなさる。わたくしは歌詠うたよみ人チャビシャクというものです!」


「どうも胡散臭うさんくさいな……まあ、次に戦った時にわかるだろう」


「ふぉっふぉっふぉっ。さようなら。お若いの」


 グレイザークは予選を次々と勝ち進み本戦出場を勝ち取った。

 案の定チャビシャクも本戦に残り、本戦8名が決定した。


 再びクジ引きになり、誰と誰があたるか決める事になった。結果一回戦、グレイザークとチャビシャクが早々そうそうに戦うことが決定した。


「休憩をはさみまして本戦が開始されます。銅鑼どらが鳴り始めましたら本戦控室におしください」


 審判員が立ち去ったあとグレイザークがチャビシャクの姿がない事を知り、どこかに隠れているのだろうと考えていた。


 一人の選手がグレイザークに歩み寄り「やあ、あなたはなかなか出来るようですね。他の連中とは違うようだ。お名前を聞いてもよろしいか?」と彼にたずねてきた。


「オレは フッ 名乗るほどでもない…いずれわかるだろう」

 

 グレイザークが名乗らなかったものの相手は自分自身の事を「ワタシは不思議仮面テスパトといいます。お見知り置きを」と言った。

 たしかに相手は不思議なかたちと色合いの仮面をつけ、男か女かわからない様な、ダボッとしたローブを身につけている。


「テスパトさん。良い戦いをな」


「ありがとうございます。またお会いしましょう」


 テスパトと別れ、さて休憩をと思っていた矢先、気配を感じたグレイザークが振り向くとチャビシャクが立っており、テスパトの方を指差しながら彼は言った。


「やつは危険だぞ。グレイザーク…お前には悪いが初戦で負けてもらう」


「フッ テスパトが危険かどうかはわからないが初戦の勝利は この」胸に指を差しながら「グルウェイズァークがいただく!」


「みすみすお前を殺されない様にするためだ"ニヤリ"腹痛!」


 チャビシャクはグレイザークに腹痛の魔法を唱えた!


 グレイザークは反射的に気合を込めて魔法をブロッキングし、腹痛を退けた!


「おっとあぶなぁい。そんな手は食わんぞデスゲイズ」


「俺様がおまえのためを思っての事だ。次は魔力を上げてとなえてやる」


 そうした所に筋肉ムキムキの男がやって来て殺気みなぎる二人に声をかけた。


「ケンカはまだ早いよ!? 本戦で戦いなよ!」


「フッ その通りだ。チャビシャク。またな」

 

 グレイザークはチャビシャクから離れ休憩におもむいた。

 

 屋台のビールを一杯飲み干し、グレイザークは飼い猫を探して歩き回った。

 そうしているとAWA(アルケミストワークスアドベンチャーズ)社のアズマと鳥人ドルフィが並んで歩いて来るのが見えた。


「アズマ!」グレイザークが手を振りながらアズマの元に行こうとすると、グレイザークに気がついたドルフィが『ちょっと用事を思い出したギヒ』と言ってアズマと別れて姿をくらました。


「やあ、グレイザークさん。あなたも大会に出るのでしょうか?」


「フッ そのとおり。本戦の第一回戦だ。ぜひ見ていてくれ…それよりアズマ。なんでドルフィなんかと一緒にいたんだ?」


「ドルフィはぼくの友人ですが何か問題でも?」


「ドルフィはかねにしか興味がない奴だ。おまえがだまされていないといいが」


「だます? 彼はわたしの恩人ですよ」


「フッ そうか。ならいいんだが」


『ニャア』『フミィ』『ギニャア』


 グレイザークの飼い猫が走って彼に寄ってきた。


「グレイザークさんのネコですか? 可愛らしいですね」


「だろう? ピィとチャオとフランソワーズだ」

 

 バァァァァアン

 バァァァァアン

 バァァァァアン


 グレイザークとアズマが会話をしていると銅鑼の音が聞こえてきた。


「開始の銅鑼が鳴った様だ。オレと一緒に行こうアズマ」


「ドルフィはどこに行ったんだろう。まあいいか。一緒に行きましょう」



 客が観客席いっぱいに入り、グレイザークはアズマと別れて本戦控室で出番を待った。


 リングアナウンスが錬金術マイクを使い一回戦の選手入場を告げた。


 グレイザーク対チャビシャクの試合が開始した。


「ふぉっふぉっふぉっ。では、やりますかな?」


「デスゲイズ。おまえは知らないかもしれないがオレは過酷かこくな修行を越えてきた。以前のオレとは違う…! 来るがいい」


 チャビシャクが"ニヤリ"と笑い、間を瞬時に詰めてグレイザークの胸に手をあてながら『かゆみ』とつぶやいた。

 グレイザークは気合で魔法をブロッキングし「見切った!」と叫びチャビシャクの腕を取る!

 そこから腕に関節技を入れた!


「アームブリーカー!」

 グレイザークがチャビシャクがつけている指輪を一つ割った!


「よくぞ指輪を一つ割った…そこまではほめてやろう……くらえ必殺プロトロンビン逆十字固め!」


 チャビシャクの姿が瞬時に消え!

 グレイザークの脚に自身の脚を絡め!


 しかし!


 グレイザークは気合でこの必殺技を返し!

 チャビシャクの頭をねじろうとした!


 チャビシャクは指輪を一つ割りながらねじりあげを回避した!


「なかなかやってくれますなぁ」


 観客席から歓声があがる。


「しかしこの技はどうかな? "ニヤリ" ランドルビーム」


 チャビシャクが腰に左手を当てて、右手をグレイザークに向けて、指先から特大の光線を放出した!


「フッ この魔法! やっぱりおまえじゃねーかよ! デスゲイズめ!」


 グレイザークは光線をヒラリとけた!


 しかし!


 光線はグネリとグレイザークに向きを変えて突っ込んできた!


 グレイザークはチャビシャクの方に走りチャビシャクに光線を当ててやろうと詰め寄り、真上にジャンプした!


 光線はグレイザークめがけ突き進みチャビシャクに当たるか当たらないかという所でグネリと向きを変えてグレイザークに突撃した。


 グレイザークは気合でブロッキングしようとしたが貫通!


 グレイザークは光線に貫かれた!


 しかし! 


 グレイザークがはめている生命の指輪が一つ割れた。


「キサマもつけ始めたのかよ…アムリタの仕業しわざだな」


「チャビシャク、いや。デスゲイズ! 一気にかたをつけてやる!」


 グレイザークは空中で気合を練り始めた……!

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