おりが選んだ十章からなる世界史

木島別弥(旧:へげぞぞ)

第1話 シッダルタがヒンドゥー教開祖に会う

 紀元前5世紀、インドでは農業が盛んになり、食べ物に困らなくなった。そこで、シッダルタは悟った。もう、働かなくても生きていける。

 シッダルタは、釈迦族の王子だったが、十五歳で子をつくると、家出をしてしまった。自由を手に入れたシッダルタの求めたものは、真理の探究だった。

 インドでは、哲学を考え、語り合うことが非常に盛んだったのである。それに参加した人々は、皆、悟った人たちである。つまり、働かなくても、農産物はインドに溢れていると。

 インド人も気のいい人たちだったから、修行者たちに食事を与えることをいとわなかった。シッダルタは、真理を探究すべく、九年間苦行をして、のち、言い放った。

「苦行なんて、何の意味もねえ」

 シッダルタは、そして、三十歳にして悟りを開いた。宇宙がどうできているかに、気づいたのである。それは、永遠など、決して存在せず、諸行無常であることである。

 シッダルタは、そして、その教えを広めて歩いた。多くの人々が聞きに来た。これが成功したのも、当時のインドは豊かな国で、農産物が溢れており、働かなくても生きていけたからである。

 シッダルタは、ヒンドゥーという男にあった。シッダルタはヒンドゥーに話しかけてみた。

「世界は永遠には続かない。必ず終わりが来るんだよ」

 すると、ヒンドゥーは答えた。

「世界は滅んでも蘇るさ。何度でも」

 シッダルタは驚いた。世界より広いものなど、想像したことがなかったからだ。

「きみは、世界が滅んだら、誰が蘇らせるというんだね」

「シヴァさ。破壊神シヴァは、世界を滅ぼした後、次の宇宙をつくるだろう」

 インドの人々はその会話を聞いて、シッダルタよりヒンドゥーを信じた。

 シッダルタの教えは、インドの外へ広まり、東で大流行したけれど、インド人は、ヒンドゥーを信じている。

 インドの西は知恵の遅れた人たちで、宇宙はひとつで、一人の神しかいないと信じつづけたのだそうな。宇宙を何人もの創造神が創造するヒンドゥーでは、愚かな教えだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る