第2話 チョコレートパーティー

少女たちの楽しそうな話し声。部屋中に満ちたバターの香り。太陽の光が、ガラスの天井を通って7色の模様を床に描いている。


あれから、私はポムに教わりながらたくさんのお菓子を作っていた。

生誕の輝きは、お菓子から少女を誕生させることができる、魔法の力。それを使えるのが私だけになった今、ただひたすら少女たちを元に戻すことに専念してきた。


その甲斐あって、メイドオブシュガーの街は活気を取り戻しつつある。

ポムの家にも彼女の7人の妹たちが戻ってきた。絶えないお喋りも、笑い声や喧嘩にも、ポムの眩しい笑顔がよく見られた。


彼女の妹たちも私の存在を快く受け入れてくれて、住む場所のない私を居候させてくれている。


まるで春の陽気のような、いつも通りの朝。そこに玄関のベルが鳴った。


「おっはよーございまーす!郵便でーす!」


明るい声とともに扉を開けた彼女は、手紙の詰まった大きな鞄をさげている。


「おはよう、ガブリエラ!いつもありがとう」


慣れたようにポムが手紙をひとつ受け取って、郵便屋の少女は別の家へと駆けていった。


手紙を開封して読むポムのところへ、彼女の妹たちも内容を知ろうと集まってくる。


「パーティの招待状だ!チョコレート家から、ルーシーと、パティシエールちゃん宛に!」


名前を呼ばれたパイ家の末子、ルショコラ・チョコレートパイはポムから手紙を受け取る。


「パーティー……!」


招待状を見ながら嬉しそうにポニーテールを揺らすルーシーの後ろでリズが立ち上がる。


「パーティー!?新しいドレスを作らなくちゃ!パティシエールちゃん!サイズを測らせて!」


近くにあったメジャーを引っ掴んでリズが駆け寄ってくる。


「チョコ家って身内以外に厳しいから、舐められないようにしないと!みんなを助けてくれたパティシエールちゃんに対して、ひどいことはしないと思うけど……それはそれとして、最高のドレスを作るわ!」


彼女はそう言いながら、慣れた手つきで身体のあちこちをはかっていった。




リズが作ってくれた豪華なドレスを着て、ルーシーと私はチョコレート地区へと馬車を走らせた。


赤いレンガで作られた街は少し小さいが、せわしなく馬車や少女が行き交っている。多くの店が並び、下町のような雰囲気だ。


所狭しと並んだ建物の合間を縫って、一番奥まで進む。そこに建つ黒く美しい城が、パーティーの開かれるチョコレート家の住まいだ。


城の入り口、大きな扉の前に、2人の少女が立っていた。


美しく着飾った長い黒髪の少女と、彼女と雰囲気の似た茶髪の少女だ。

私たちが馬車から降りようとすれば、彼女たちが近づいてきて手を差し出してくれる。


「ずっとお待ちしておりました、ショコラティエール様。私のこと、お忘れじゃないですよね?チョコレート家当主のパトリシア・ダークチョコレートですよ」


私の手を取る黒髪の少女パトリシアは、そう言って美しく微笑んだ。


「キャリー!ひさしぶり!」


背後で、茶髪の少女と手を取り合ったルーシーが嬉しそうな声をあげる。


「ルーシー、来てくれてありがとう!今日は楽しんでね」


そう言って微笑み合う少女たちとともに、パトリシアの案内で城の中へと入っていった。


案内された扉を開けた途端、少女の美しい歌声が響き渡る。そして目に飛び込んでくるのは、落ち着いた色を基調にしながらも、あちこちにきらびやかな装飾をあしらった豪華絢爛な広間だった。すでに少女たちが集まっており、この城に住んでいるチョコレート家、そしてチョコレートケーキ家の姉妹たちが談笑していた。


私たちの到着に気がついた少女が、その贅沢なドレスを上品に揺らしながらこちらへと近づいてくる。


「ようこそおこしくださいました、ショコラティエール様。改めまして、チョコレートケーキ家当主、ヴィタ・ザッハトルテですわ。先日は私たちを助けてくださってありがとうございました。今日はそのお礼のパーティーなんです。ぜひ、楽しんでいってくださいませ」


ヴィタは堂々とした雰囲気とともにそう言って微笑む。すると、彼女は私の背後に視線を移して、その表情をがらりと変えた。


「アリー」


そう呟いた声と同時に、扉の開く音がする。振り返れば、そこには赤いドレスのよく似合うふたりの少女が立っていた。


「チョコレートケーキ家、チョコレート家のみなさま、ごきげんよう。アリーチェ・フレジエと妹ベアトリーチェ・フレジエです。お招きいただきありがとうございます」


ゆるくウェーブのかかった白いツインテールを揺らしながら、アリーチェと名乗った少女は上品に赤いドレスの裾をつまんで腰を落とす。

その後ろで、ベアトリーチェと紹介された少女も同じようにお辞儀をしてみせた。


彼女たちの元へヴィタが近寄ろうとしていると、その背後からふたりの少女たちがそっくりな顔を覗かせる。チョコレート家の双子、ルーカ・ストロベリーチョコレートとリーカ・ストロベリーホワイトチョコレートだ。


「あの子が噂の魔力のない子?」


ルーカが、ベアトリーチェを横目で見ながら言う。


「本当に魔力が感じられないわ」


リーカも同じように振舞って、驚いた声をあげた。


「軍の人間を付き添いにつけるなんて」


腕を組んだルーカは、今度はアリーチェの方を睨みつけるように見る。


「あからさまに疑われているみたいに感じちゃうわ」


そういったリーカの声は悲しげに聞こえるが、彼女は堂々とアリーチェの方を見つめていた。

息ぴったりに会話をする双子に対して、アリーチェが言葉を返す。


「ベアトリーチェは軍に所属している以前に、私の妹です。侍従を持たないみなさんと同じですよ。自分たちでやれることは自分たちでまかなっているだけです。一番信用できるのは、姉妹、そうですよね」


堂々と胸を張ってアリーチェは言葉を紡ぎ、最後に柔らかく微笑んで見せた。

それが気に入らなかったのか、ルーカとリーカは吠えるように言い返す。


「そんなの妹って関係を利用して護衛を連れてきたって認めてるようなものじゃない!」


「もうやめなさい」


さらにまくしたてようとする双子に対して、ヴィタが静かに言い放った。

双子は不満げな顔を隠そうとはしないが、おとなしく口を閉ざす。


「ごきげんよう、アリー。来てくれてありがとう」


ヴィタは表情を一変して、愛おしさの滲んだ声で微笑む。


「ヴィタ様、ありがとうございます。こんな素敵なパーティーに招いていただけるようなことを私たちはできていないと思いますけれど……」


先ほどとは打って変わって、どこか困惑した様子でアリーが呟く。


「私たちが開くパーティだもの、好きな相手を招いて当然でしょう?」


にこやかにヴィタがそう言うが、アリーは困ったように笑い返して視線を泳がせた。そして逸れたアリーの視線が私をとらえる。


「パティシエール様!ごきげんよう、先日は助けてくださってありがとうございました」


彼女はそういって嬉しそうに笑う。そのままアリーと談笑を続けていると、徐々にたくさんの着飾った少女たちが広間に集まってきた。


「こんにちは〜!わあ、すっごーい!チョコレートがたくさん!」


まのびした声で入ってきた少女はそう言って、クリーム色の柔らかい髪を揺らす。チーズケーキ家の少女コンテ・スフレチーズケーキは、眠たげな妹の手を取って真っ先にお菓子の並んだテーブルへと向かう。彼女たちの後に続いて入ってきた少女たちもまた同じような髪を持ち、同じようにマイペースな様子だ。


そうしてパーティー会場は賑やかさを増していき、美しく響く歌声や、チョコレートの甘い香りに誰もが酔いしれていた。


そんな雰囲気を切り裂くように、大きな音を立てて勢いよく広間の扉が開け放たれる。誰もが驚いて振り返り、楽しそうに歌っていたディーヴァ・オペラもその歌声を止めた。


そこにはショートヘアの中性的な少女が立っており、上品な装飾の施された服を身にまとっている。しかしそれは、パーティーに参加するための服装としては違和感があった。


その背後から、困ったように彼女を追いかけている少女がいる。


「エテルニル様!落ち着いてください、これはあまりにも……」


懇願するような彼女の声を遮るように、エテルニルと呼ばれた少女は声を張り上げた。


「罪人どもがこんなに呑気に過ごしているだなんて!やはりショートケーキ家の条約は甘すぎたんだ!」


誰もが見つめる中、彼女はさらに言葉を続ける。


「チョコレート家が戦争をおこしたせいで!…母さまは死んだんだ。お前たちの、母親のせいで…!!」


今にも飛びかかりそうなエテルニルの様子に、チョコレート家の何人かが少し怯えた様子を見せた。そこへ彼女たちとエテルニルの間に立つようにして、ひとりの少女が前へと歩き出す。


「私たちのお母様のせいだと分かっているのなら、私たちに怒鳴り散らすのはお門違いだわ。それに、招待もされていないパーティーに突然やってくるなんて、王族のすることとは思えないわね。今咎められるべきなのはあなたの方よ」


エテルニルの目の前で立ち止まり、パトリシアは怖気付いた様子のかけらもなく堂々と言い放った。


静かに、けれど鋭く正論を突きつけられたエテルニルは、ぐっと言葉を詰まらせる。しかしそれも一瞬のことで、彼女は悔しそうな顔のまま口を開く。


「奪い取った地位に居座っているくせに!数多の犠牲の上に成り立つ贅沢をむさぼり食らっているくせに!あまつさえ開き直るのか!」


怒りの収まらない彼女の隣で、ひたすら少女が止めようとしていた。


「エテルニル様!もうお辞めになってください!」


必死に少女が叫ぶが、エテルニルは彼女の声に耳を傾ける様子はない。それを嗜めるように、アリーが静かな声で言った。


「ガム家当主。流石にみっともないですよ。それが王族としての振る舞いですか」


アリーの冷めた視線に一瞬ひるんだエテルニルは、今度はアリーに向けて食ってかかる。


「貴族のフレジエ家にはわからないだろう!戦争で領地を奪われた王家の矜持など!」


「なりません、エテルニル様!」


エテルニルの隣にいた少女は、ついに彼女の手を掴み引っ張るようにして外へと連れて行こうとする。エテルニルはそれに抵抗してみせるが、小さな彼女の身体では抗うことも難しいようで、ずるずると廊下へ引きずられていった。


「お前たちを同じ王族として認めることは絶対にないからな!」


エテルニルは諦めたのか、最後にそう捨て台詞を吐いて抵抗をやめた。そのまま彼女の身体は引きずられていくが、途中でぴたりと止まる。手を引いていた少女を確認するよりも先に、彼女が悲鳴を上げた。


「ま、魔物が!」


金切り声とともに、廊下の暗闇から大きな影が現れた。それは広間の扉を壊すほどに翼を広げ、フクロウのような丸い頭を持っていた。鋭いくちばしをひらいて、空気を大きく揺らす不快な鳴き声を響かせた。


突然の魔物の登場に驚きつつも、少女たちはとっさに武器や魔法を構える。私を隠すように立ちふさがった少女たちの中で、誰よりも先にエテルニルが魔物に飛びかかった。それを合図に、広間にいる少女たちが一斉に攻撃を仕掛ける。


フォークのように先端の分かれた武器を持って、ルーカが飛び上がる。そのまま魔物の翼めがけて切っ先を突き刺そうとした。しかし魔物は彼女を払うようにして大きく羽ばたき、その翼に打たれるようにして、ルーカは弾かれてしまう。


落ちていく彼女の陰から、彼女そっくりな少女リーカが飛び出す。ルーカと同じ武器を持った彼女は、ちょうど羽ばたくのをやめた魔物の翼にそれを深く突き刺した。


落ちてきたチョコレート家の双子を、コンテは羊毛のクッションのような魔法で受け止める。


「ちょっと!私を盾みたいにしないでよ!」


「だってちょうどよかったんだもーん」


柔らかい魔法に受け止められ、双子たちは喧嘩を始める。


「戦闘の時だけは本当にタイミング合わないよね〜」


彼女たちの後ろで、どこか楽しげにコンテが呟いた。


その間にも、エテルニルは地についた魔物の足を狙って攻撃する。その痛みに不協和音を絶叫し、魔物は仰け反った。さらされた首をめがけて、パトリシアの魔法が容赦なく追撃する。


少女たちの猛攻によってふらふらと足元のおぼつかない魔物に対して、アリーが一歩前に出た。


「これで終わりです」


そう呟いた声すら飲み込むほどの大きな魔法の塊をつくりだし、勢いよくそれをぶつける。

避けることすら叶わない魔物は一身にそれをくらい、そのまま大きな音をたてて後ろに倒れた。やがてその闇のように黒い巨体は、煙のように散っていく。


アリーはこちらに振り向き、優しい笑顔で笑って見せた。


「お怪我はないですか?もう大丈夫……」


「ここからが本番のようだわ」


穏やかなアリーの言葉を遮って、ヴィタが焦ったように言った。


彼女の言葉にアリーも向き直り、その視線の先を辿る。


廊下の先、深い暗闇の中から、フクロウの魔物の煙を蹴散らすようにして、大きな獣の足が見えた。


徐々に近づいてくるその存在に、電気を帯びたように空気が振動するのを感じる。


歩みを進めるにつれて、きらびやかな明かりに照らされたそれは、やがて全貌をあらわした。


太い獣の足を持った深い闇色の狼。その背中には人が乗っていた。彼はその手に持った鋭い剣をきらめかせ、人を不快にさせる笑顔で少女たちを見下ろした。


「本当にここにいた。絶望を振りまく存在よ」


彼は楽しそうに笑いながら、そのおぞましいほど真っ黒な瞳で私を捉えた。彼の放つ言葉はよく響き、全身の肌が粟立つ。


「63番目の悪魔、不和の侯爵アンドラス」


ヴィタは彼から視線をそらさずに呟いた。その言葉に武器を構え直した少女たちにも緊張が走る。彼の視線から守るように、アリーが目の前に立った。


「愚かだなあ。誰も理解しておらんのか。ここに住む者たちは聡いの効いたのだがなあ。おい、そいつは神のなり損ないだぞ」


悪魔は私から視線をそらさずに、まるで残念そうな声色でそう告げた。その言葉を聞いて、パトリシアが息を吸い込む。


「彼女は決してなり損ないなんかではありませんわ!彼女は私たちを救ってくれました。私たちにとっては、本物の神様よりも信じられる存在です!」


その瞳に混じるほんの少しの恐怖を覆い隠すように、パトリシアは堂々と胸を張った。彼女の勇気ある行動に、他の少女たちも怯えを押し込んでいく。

しかしその言葉を聞いた悪魔は、大きな声をあげて笑い出した。びりびりとした空気の振動が、肌から伝わってくる。


「あっはっは!やはりこの世界の餌はどこまでも愚かだなあ!これがまさに盲信というやつか!いいぞ、悪魔らしく助言をしてやろう。この世界は沼の上澄みだ。水の量は少ないが、そこだけが美しく保たれている。しかし、足りないからと言って沼の底から水をひっぱってきたらどうなるだろうか」


悪魔は一度言葉を区切り、三日月のように歪めた口を再び開く。


「ほんの少し、たったひとりでも沼の底から引きずり上げたのなら、美しい上澄みまでもすべて、黒く濁ってしまうのだ!それを沼底に戻したとしても上澄みは戻らない。振りまかれた絶望は、すべてを穢してしまうのだ!」


高らかに言い切った悪魔は、また楽しそうに笑い出す。


「悪魔の言うことに耳を傾けてはいけません」


アリーが苦しげにそう告げて、再び戦闘態勢をとる。大きな魔法の塊を生み出して、悪魔に向けて勢いよく放った。広間の壁はその衝撃で崩れ、土煙を上げる。しかしその煙を割り裂くようにして大きな黒狼が飛び出してきた。


牙をむき出して低く唸る狼を合図に、少女たちは再び、一斉に攻撃を始める。


その大きさに似合わず俊敏な狼は、少女たちの魔法を軽々とかわしてみせた。しかしそれが分かった途端、少女たちは狼を囲うようにして攻撃を繰り出していく。


コンテは大きな羊毛の壁をつくりだし、狼の進路を塞ぐ。悪魔はその柔らかい壁を突っ切ろうと試みるが、緻密な弾力がそれを拒んだ。


どんどん行動範囲の狭まっていく狼めがけて、エテルニルは大きく剣を振りかぶる。しかし、その隙をついた狼の上の悪魔が、彼女に剣を振り下ろした。

エテルニルは目を見開くが、振りかぶった剣を戻すことは間に合わない。そう思った時、走り出したヒールの音が響いて、彼女の首根っこを勢いよくひっぱった。


悪魔の持つきらびやかな大剣は勢いを殺さず床に突き刺さる。


「さっきの威勢はどうしたのかしら。それとも、王族ってひとりじゃなにできない箱入りのことを指しているの?」


パトリシアはそう言いながら掴んでいたエテルニルを離した。怒った彼女が振り返るよりも先に、パトリシアはエテルニルの背中を強く押す。それは悪魔のいる方向、しかし彼は今、床に刺さった大剣を引き抜こうとしている最中であった。


「うるさい!ガム家当主としてこれくらい!」


エテルニルはそのまままっすぐ駆け出し、再び剣を大きく振りかぶる。背後に向かって大きく叫びながら、今度こそ悪魔めがけてその剣を振り下ろした。

動けない悪魔に攻撃は命中し、彼はあまりの痛みにうめき声を上げる。


ペースの崩れた悪魔に対して、少女たちは畳み掛けるように追撃を重ねていった。

回避を阻まれた狼もその身体で衝撃を受け止め、もはや悪魔をのせることすら叶わなくなる。黒煙の中取り残された人型に対して、少女たちは躊躇なく魔法を放った。


金属のぶつかり合う音、爆発の衝撃音、崩れ落ちていく壁と、立ち込める土煙。


エテルニルが突き刺した剣を引き抜いて、そのまま力なく倒れた悪魔を合図にして、戦闘が終わりを告げた。




豪華絢爛だった広間はその姿を一変させ、今や一部の壁が完全になくなってしまっていた。簡単に片付けられた瓦礫の合間を縫うようにして、少女たちが帰っていく。


「今日はちゃんとお礼ができませんでしたから、また改めてお礼をさせてくださいませ。ここには好きな時に遊びに来てくださいね。私たち姉妹はいつでもあなたを受け入れ、歓迎いたしますわ」


ヴィタは堂々とした雰囲気を崩さないまま微笑んで見送ってくれた。


様々な波乱の訪れたパーティー会場を後にして、ルーシーとともに帰路につく。


「今日のこと、というか悪魔に会ったこと、ポムお姉ちゃんには内緒にしよう?きっと心配しすぎて倒れちゃうから」


ルーシーは今日見た中で一番怯えたような顔をして、小指を差し出してくる。私がその細い指と自分の小指を絡めれば、彼女は嬉しそうに笑った。


ルーシーとの約束どおり、戦闘のことを内緒にはしたものの、翌日の新聞を読んだポムが朝から騒ぎ出すのはまた、別のお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る