第9話 フェニックスの召喚
フェンリルが目を覚まし、その大きな口を開けて太陽を呑みこんだラグナレクが始まり、リジはとても自分たちが勝てる見込みがあるとは思っていなかった。太陽が消えてなくなり、凍りつくような寒さが地上をあっという間に死の世界に変えた。フェンリルが太陽を呑みこんでから、神々の黄昏が始まった。地上は絶対的な死へと向かった。
リジはワルキューレとして、自分たちが集めてきた勇敢な戦士たちと共にフェンリルと戦った。総大将であるオーディンがみずから突撃していった。オーディンの槍グングニルがフェンリルに突き刺さり、大勢の戦士たちが、巨大な狼フェンリルに跳びついては、斬りかかった。
戦いは長くつづいた。いったい、いつになったら勝負がつくのかわからなかった。記憶がなくなるくらいの戦いの果て、ついに死せる勇敢な戦士たちが勝利をおさめた。フェンリルが退治され、宇宙の遠くへ死体が飛んでいったのである。
みなが喜んだ。だが、この凍りついた大地でどうやって生きていけばいいのか。もう、絶滅するしか道はないのではないか。
そんな時、リジが昔、姉に教わった召還呪文を唱えてみた。
「幾度とある困難をのりこえ、何度でも蘇れ、フェニックスよ。何度燃えつきても、何度燃えつきても未来永劫蘇れ、フェニックスよ」
すると、死んだはずの天空に火が灯った。
ぼおっ、と新しい太陽が現れた。
奇跡だ。
リジは明るくなった世界で、嬉しくて涙を流していた。
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