周囲から陰キャとバカにされる俺、実は全国制覇を成し遂げた不良グループの元総長~引退しても何かと不良たちに絡まれるが推しのVtuberの配信があるから邪魔をするなら容赦しねぇ。そこんとこ夜露死苦ゥ!!~
第75話 その陰キャ、陽キャギャルとデートする ①
第75話 その陰キャ、陽キャギャルとデートする ①
僕は説明した。
コミケのサークル参加に際し、コスプレイヤーの売り子が必要なこと。それを真白に頼みたいことを。
『ふーん』
「な、なんだよ」
なにやら言いたげな真白に、若干の気まずさを感じる。
『別にー、ただ都合の良い時だけこうやって連絡取ってくることにムカついてるだけ。合宿以降もウチのこと避けるし……』
怒ってるんじゃねぇか。
「あ、アレはクラスでお前と絡んでると目立つからで……」
『言い訳しない。LINEでメッセージ送っても素っ気ないし、そっちからなんにも連絡寄こさないし! あぁもうなんでウチだけこんなにモヤモヤしなきゃいけないの!?』
知らんがな。
そう思ったが、それを口にすると余計に話がこじれそうなのでなんとか喉で留め、真白に意思を尋ねる。
「それで、協力してくれるのかしてくれないのか、どっちなんだ」
『……』
数秒の沈黙、それを打ち破り、どこか拗ねるように真白は言った。
『デート』
「……は?」
『だからデート! ウチとデートするの! そしたらアンタの頼み……聞いてあげる』
「デートか。いいぞ」
『ほ、本当!? いいの!?』
「あぁ」
『で、デートってアレだよ? こ、恋人とかがやるやつだよ? この前みたいなやつじゃないよ?』
なにやら興奮気味に、念押しをしてくる真白。
正直な所、デートというのが実際の所なにをどうすればいいのか分からないが、まぁなんとかなるだろう。
「あぁ。それで僕の頼みを聞いてくれるなら、お安い御用だ」
僕は変わらず、肯定の返事を続けた。
『そ、そっか。いいんだ……へへ』
どこか柔らかな、高揚したような声音で、真白は小さく呟く。
『じゃあこれで
「分かった」
『そ、それじゃあウチ色々準備しなきゃだから! じゃね!』
その言葉を皮切りに、通話は真白の方から切られた。
「……」
スマホをポケットにしまい近くの椅子に座って、天井に目を向ける。
そして、思い出す。
『今は、返事しなくていい。ウチのこと、何とも思ってないのは分かってる。だから……これから絶対、ウチに惚れさせるから!!』
約二か月前、真白が僕に放ったその言葉を。
「……ったく」
呆れるように、僕は呟く。
だが不思議と、悪い気はしなかった。
◇
「っし! よしよしよし!」
通話を切った真白はガッツポーズをしながら、その場で小刻みに足踏みした。
やった! デート、
嬉しみ深しゅぎる!
好きな男とのデートに、心を躍らせる真白。
よーし、ここでメチャクチャ
それで上手くいけばそのまま……っきゃー! なに考えてんのウチ! そういうのはまだ早いってぇ!
ベッドにダイブした真白は、抱き枕に顔を
息を深く吸い込み、平静さを取り戻した彼女はゆっくりと目を開ける。
「はぁ……ホント、ガチでアイツのこと好きじゃん……ウチ」
顔を赤らめながらそう言う彼女は、抱き枕をさらに強く抱きしめた。
◇
八月三日。
牧野さんの懸賞金が取り下げられるまで残り十日。
僕は護衛の任を引き続き龍子たちに任せ、一時的に牧野さんの元を離れある場所へと向かっていた。
「ここか……?」
真白から送られてきた集合場所に到着した僕はその建物に目を向ける。
「なんでこんな所を集合場所にしたんだアイツは……?」
言いながら、スマホのトーク履歴に目をやる。
『場所はスタジオLIP。着いたら裏口から入って来て。スタッフさんには通すように伝えとくから』
「ま、アイツの言う通りにするしかないか」
そうして、僕は裏口へと周り、扉を開けた。
「失礼しまーず」
若干の居たたまれなさを感じながらも、建物内へと入る。
「あ、来た来た! 唯ヶ原君だよね? 真白ちゃんから聞いてるよ」
そんな僕を迎え入れてくれたのは、初対面の女性だった。
「ど、どうも初めましまして」
「あはは! いいよいいよ、そんなかしこまらなくて!」
ケラケラと笑いながら、女性は僕の肩を叩く。
「っと、私の方は自己紹介しなきゃだね。えーと……はいこれ」
そう言って、女性は僕に名刺を差し出してきた。
「ANON編集部……」
「どうも! ファッション雑誌『ANON』の編集記者、
「よ、よろしくお願いします」
松原と名乗った女性に、僕は軽く頭を下げる。
テンションが高いな。黛や来栖とは違うタイプで。
「それじゃあ早速行こうか! 真白ちゃんの所に案内するよ」
「はい」
松原さん後を追い、スタジオの奥へと向かう。
そして、広がっていた光景は……。
「はい、到着」
「……あれは」
思わず、僕は目を丸くした。
「はーい、いいね真白ちゃん! 最高だよぉ! じゃあ次はちょっと目細めて、首も角度つけてみようか!」
そこには興奮気味にカメラのシャッターを切るカメラマンと、
「……」
まるで女優のような
「松原さん……これは」
「あれ? 真白ちゃんから聞いてないの? あの子、読モなのよ。それも超人気のね」
なん、だと……!?
松原さんの言葉に、僕は驚愕した。
◇
「はーいお疲れ真白ちゃん! お茶いる?」
「もらう。ありがと朱里ちゃん」
そう言って真白は松原さんからのお茶を受け取り、飲み始める。
「す、スタジオって書いてあったんでまさかと思ったんですけど、本当に撮影スタジオだったんですねここ。僕入って良かったんですか……?」
「あー、だいじょぶだいじょぶ。真白ちゃん以外も彼氏さんとかよく連れてきてるよ」
「ぶぅぅ!!!」
松原さんの言葉に、真白は勢いよくお茶を噴き出した。
「ゴホッゴホッ……!! ちょっと朱里ちゃん、なに言ってんの……!?」
「えー? 彼氏じゃないの? だって真白ちゃんがあんなに楽しそうに男子の話するなんて初めてだったから、てっきりそうなのかと。こうしてスタジオにも連れて来たワケだし」
「違う! い、いやいつかはそうなれば良いなぁ……とは、思ってるケド……」
ブツブツと小さい声で呟く真白。
無論僕の耳には全て届いているので無意味である。
「って、そんなことより!」
ハッと顔を上げる真白は、真っすぐに僕の目を見た。
「ど、どうだった迅……?」
「どう、って……なにがだ?」
「さっきの撮影、見てたでしょ? だから、その……」
そう言って真白はもじもじと指を合わせる。
先ほどとは異なり、今度は小さく呟いてすらいないため、真白がなにを言いたいのか分からなかった。
「ふふ。多分、真白ちゃんはさっきの感想が聞きたいんですよ」
その時、松原さんが助け船を出してくれた。
なるほど、撮影の感想か。それならば……。
「カッコ良かったぞ。かなり雰囲気もあって、目が離せなかった。凄いんだな、お前」
「~~////」
率直な思いを告げると、一瞬にして真白の顔面が紅潮する。
――ポンポン。
急に横から肩を叩かれ、そちらに目をやる。
すると松原さんが僕に向け、グッドサインを出していた。
次いで、彼女は真白へ話し掛ける。
「いやぁ良かったね真白ちゃん。唯ヶ原くんバッチシ褒めてくれて!」
「えへへ~」
「これからも沢山モデルの仕事頑張って、唯ヶ原くんに真白ちゃんの色んな姿見てもらいたいよね~?」
「モチ!」
「それじゃあウチの専属モデルに……」
「それはイヤ」
「なんでぇ!? イヤイヤ今のは完全にオーケーする流れだったでしょ!? 流れだったでしょ!?」
「何度も言ってんじゃん。他のファッション誌出れなくなるから試着の
「うぇ~!! そこをなんとか~!! 真白ちゃんがモデルやると部数が伸びるの!! ウハウハなの!! お願いぃぃぃぃ!!」
松原さんの切実な叫び。
だがそれに慣れているのか、真白は全く動じる様子はない。
「なに泣いてんのよ全く。ホント
呆れるように溜息を吐く真白。
「あれ、真白じゃねぇか」
その直後、彼女に声を掛ける第三者が現れた。
見た目はとてもチャラそうな男は、悠々とした足取りで真白に近づく。
当の真白はとてもダルそうな顔をしていた。
「……」
なにか面倒なことが起こりそうな気がする。
僕の直感が、そう訴えかけていた。
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