周囲から陰キャとバカにされる俺、実は全国制覇を成し遂げた不良グループの元総長~引退しても何かと不良たちに絡まれるが推しのVtuberの配信があるから邪魔をするなら容赦しねぇ。そこんとこ夜露死苦ゥ!!~
第13話 その陰キャ、不良チーム相手に無双する ①
第13話 その陰キャ、不良チーム相手に無双する ①
――誠二たちが拉致される5日前。
迅は詩織を呼び出し、ある話を通していた。
『坂町、昨日は言い過ぎた。すまん』
開口一番、迅は彼女に頭を下げた。
『い、いや……大丈夫です! わ、私こそ……行き過ぎたことを言って、ごめんなさい……』
次いで、詩織も頭を下げる。
二人の間にあった
『それで、今日呼び出したのはお前に協力してほしいことがあるからだ』
『きょ、協力……ですか?』
全く想定していなかった迅の言葉に、詩織は首を傾げる。
『あぁ。【終蘇悪怒】を壊滅させる。そのために、力を貸してほしい』
『……』
放たれた彼の言葉は、彼女を絶句させるのに十分だった。
沈黙、静寂が二人を包み込む。
そしてそれは、詩織の涙によって決壊した。
『っ……。あ、ありがとう……ございます!!』
『何で泣くんだよ……』
『だ、だって……嬉しくて、安心して……。これで、誠二が助かるって思っちゃって……。あんなでも、一応幼馴染だから……』
流れる涙を無作法に手で拭きながら、詩織は答える。
『別にアイツを助けるためじゃねぇよ。ただ、今回の件は元を正せば僕の責任だ。だから尻ぬぐいは僕がやる。それだけの話だ』
そう、迅にとってこれは誠二のためでも詩織のためでもない。
強いて言うならば自身のために他ならない。
『うぅ……本当に、ありがとうございます……! わ、私なんでもします! どんと言って下さい!』
『いやだから泣くようなことじゃねぇって……まぁいいや。お前にしてもらいたいのは「5日後に咢宮の近くにいる」、これだけだ』
『む、5日後……それって』
『あぁ、咢宮が奴らに指定されてる期間の最終日……要は、アイツがヤキを入れられるために拉致られる日だ』
『で、でもそれって【終蘇悪怒】にとって好都合なんじゃないですか? まだ私、情報源として狙われてるでしょうし……』
『だからだよ。坂町、お前は咢宮と一緒に【終蘇悪怒】に拉致られてもらう』
『えっ!?』
『理由は単純だ。二人まとめて拉致られた方がこっちも把握しやすいし動きやすいからな。後は僕が拉致した野郎を尾行してアジトを見つける。んで、そこに攻め込んで一気に叩く。分かったか?』
『な、なるほど……』
『……』
納得したような詩織に、迅は少しだけ躊躇するように口を開く。
『一応言っとくが、不満があるならここで言ってくれ。拉致られるのが怖いとかなら、また別の方法を考える』
『い、いえ大丈夫です! 全然、私のことは気にしないで下さい! 私、信じてますから!』
『信じるって、僕は昨日お前を脅したんだぞ。そんな僕の
『だって唯ヶ原君……結局今こうして、私と話してくれてるじゃないですか』
『……』
『例え自分のためだとしても、私にとってはそれだけで信用するには十分です』
詩織ははにかむように笑った。迅はそんな彼女を見て、「はぁ」と溜息を吐く。
『不良が好きだったり、脅されても次の日にはケロッとしてたり、お前と話してると調子が狂うな』
そんなことを言う迅だが、その口元はどこか笑っていた。
◇
――現在。
坂町と咢宮を拉致した【終蘇悪怒】を尾行して、僕と龍子はそのアジトを特定。
そしてアジトの壁を蹴り破り、奴らの前に姿を見せた。勿論、変装をしてだ。
ドンキで僕は鹿のマスクを、龍子には宇宙人のマスクを購入しそれぞれ頭に被っている。そして服装はジャージ。
これにより僕と龍子の正体が奴らに
「誰だ、お前ら……?」
相手のこんな問いにも、
「見て分かるだろ。鹿です」
「宇宙人だぜ!」
このように堂々と答えられる。我ながら名案という他無い。
「ふざけてるのか……?」
が、相手様はどうしてか不快そうな顔で、苛立っているかのような声を上げた。
「ふざけてねぇよ。鹿は鹿だ」
「宇宙人は宇宙人だ!」
えっへんと、鹿(僕)と宇宙人(龍子)はめげずに胸を張る。
えーと、とりあえず状況としては……。
僕はキョロキョロと周囲を見渡す。
そして坂町が服を破られているのと咢宮が逆さ吊りにされ水攻めをされているのを確認した。
見た所、坂町と咢宮の近くにいる男がそれぞれ【終蘇悪怒】の幹部だろう。他の奴らよりも強いことは僕の目に明らかだ。
「おいおいおい、どーやら死にてぇみたいだなぁ」
すると、咢宮が足に括りつけられている鎖を持っていた男がその鎖を手から放し、僕たちに言葉を吐く。
「ごぼっ!? おぼぼぼぼぼぼ!!」
それにより、咢宮は水の入ったドラム缶に無慈悲の全身入水をした。
とりあえず
「宇宙人。僕は咢宮を助ける。お前は坂町を助けろ」
「了解だぜアニキ!」
「鹿だ!」
「鹿のアニキ!」
「そうじゃねぇ!?」
清々しい程に単純な龍子に思わずツッコむ僕。
「何ワケ分かんねぇこと言ってやがるてめぇらぁ!!」
くっ、相手が更に怒り出した。さっさと動くか。
そうして僕と龍子は、
「っと、大丈夫か咢宮」
「がっ……ごほぉ……ぉ! あ、あぁ……?」
「ははは服破られてやがる! ウケるな詩織ぃ!」
「……あ、ありがとうございましゅ……」
『ぐあぁ……』
ついでに、下っ端の雑魚を圧で全員気絶させた。
「は……? な、何だ……今何が起きた……?」
「ど、どうして……ソイツらがそこにいんだよ……?」
あまりにも突然のことに驚いたのか、幹部二人は目を見開いている。
「さてと、これで後はてめぇらをぶっ潰せばチーム解体だな?」
「……何ナメたこと言ってやがる、てめぇ……!!」
「ここまでして、生きて帰れると思わないことだね……!!」
チーム解体の言葉に反応したのか、幹部二人は怒りの視線を僕に向けた。
「
『っ!?』
「ん?」
「何だぁ?」
その時である。
アジトの奥から何かがこちらへ向かい歩いてきた。
その何かは、僕と龍子以外を十分に恐怖させていた。
「「そ、総長!」」
幹部二人が現れた巨漢に対し、頭を下げる。
その巨漢は、一週間前に坂町に見せられた写真の男だった。
僕は直感と理論で理解する。この男こそが【終蘇悪怒】の
名前は確か、
「何が起きた。説明しろ望月、橋本」
「そ、それがですね……!!」
「あ、アイツらが突然乱入してきたんです!」
「アイツら……?」
伽藍は僕たちを見た。
「……ここは5階だ。てめぇら、どうやって入って来た?」
何を言われるかと思えば、そんなの決まっているだろう。
「え、普通にジャンプして来たけど」
僕は正直に答えた。
「……はは、はははははは!!」
すると何故か、伽藍は大声で笑いだした。
「良い!! 良いなぁ!! 久しぶりに、潰し
「や、やべぇよ……総長がこんなに笑うなんて……!!」
「こんなこと、チーム結成以来初めてのことだ……!!」
幹部二人は恐れ
どうやら総長様は随分とテンションが上がっているようだ。
「てめぇらはこれで死刑確定だ!!」
「自分の運の無さを恨むんだね!!」
「おーおー、何かあんなこと言ってるぜぇアニキ」
調子づく幹部二人に、龍子はケラケラと笑う。
「幹部の方はお前がやれ。僕は大将首を獲る」
「っしゃー!! 久々に暴れるぜぇ!!」
僕の指示に、龍子は張り切るように腕を振った。
「運が無いのはてめぇらだぜ三下共。アタシとアニキを相手にする時点で、てめぇらの負けは確定してんだからなぁ!」
「あんまり煽るなって……ったく、さっさと終わらせて帰るぞ」
そう、僕は早急に帰宅しなければならない。それも、後一時間以内に。
何故かと問われれば、そう……。
――後一時間で、
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