第85話 エミリアとリナ、そしてリーゼの復讐

「リナさん。あなたがダニエル侯爵の娘だからと言って、僕はあなたを憎んだりしませんよ。ダニエル侯爵の罪はリナさんの罪じゃありません。気にしないでください」


僕はリナさんに安心してもらおうとリナさんを説得した。


「そ、それではリナの気持ちがすみません。お詫びに…リナをアルベルト様専用の性奴隷にしてください!!」


「ええっ!?」


突然の申し出に僕はびっくりした。いや、そもそも僕の性奴隷になる事がお詫びになると思っている事にも突っ込みたい。


「リ、リナ! 決してアルベルト様に一目惚れして聖職者なのに、アルベルト様のモノになりたいだなんて思っていないですからね! あくまで、贖罪の為なんですからね! 決して、毎日アルベルト様に抱かれたら、なんて素敵なんだろうだなんて思っていないですからね!」


えっと、どうもヒルデと同じで、心の声が駄々洩れになる仕様らしい。


「そうです。アルベルト様、リナの気持ちを汲んであげてください! アルベルト様がリナを性奴隷として所有してくれないと、リナは一生後悔します! 罪の意識に苛まれます! それに今なら、聖女のわたくしも性奴隷としてくっついてきます!!」


「ええええええっ!?」


僕はエミリアさんも僕の性奴隷になるという発言に驚いた。エミリアさんの目を見ると…駄目だ、目の瞳がハートマークになってる…また増えんの? ところで、僕、既に6人と婚約しているけど、彼女達を食べさせていかなきゃいけないんだよね? 僕、そんな甲斐性あるの?


「アルは全く…何人誑し込んだら気が済むの?」


ヒルデが苦情を言って来るけど、僕だって苦情を言いたい位だ!


「あの、聖職者の二人を性奴隷になんかにしたら、僕の評判悪くなりません? できれば、辞退したいんですけど…」


僕は気が弱いから、つい言葉が弱くなるけど、ここは頑張り処だ。


「聖職者のあなた方を性奴隷になんて、法的にできませんよ。お二人のお気持ちは嬉しいのですが、きっと、僕より相応しい方がいますよ!」


「そんな事を言わないでください! リナは人並みの恋は諦めていました! 聖職者は結婚できません! 結婚するにはシスターを止めないといけません。リナは奴隷でしたから、シスターを止めたら、また奴隷になります! 好きな人と一緒になるには、性奴隷にしてもらうしかないんです! でも、リナは決してアル様に一目惚れした訳じゃないですからねぇ!」


いや、もうバレバレでしょう? リナさん…この子からも残念な香りを凄く感じる。


「わたくしも同じですわ! わたくしも特赦法で、奴隷から聖職者になりましたが、シスターを止めれば、奴隷に戻ります。ここは、わたくしも贖罪の為、アルベルト様の性奴隷にしてください! わたくし、決して、エッチな気持ちに目が眩んで、アルベルト様に激しいハードプレイをして欲しいからじゃないですからねぇ! でも、わたくしの〇という〇は全部アルベルド様のモノです!!」


こっちはエロ目? エミリアさんって、多くの人から敬意を集める聖職者…なのに正体はとんでもエロい女の子?  なんか残念な香りしかしない。


「下僕はまた性欲の処理係を増やして…何人毒牙にかけるのかしら、呆れてものが言えないわ、でも、断る方がやっかいな事になるわよ」


断ると厄介な事になる? どうゆう事?


「あ、あの、僕がその性奴隷の件、お断りしたら、どうします?」


「やけっぱちになって、聖職者を止めて、街の中で、全裸で『わたくしはアルベルド様に所有してもらえなかった性奴隷です、どなたかわたくしを所有してください!!』って、大声で叫びます!」


「リ、リナも同じにします!!」


「ええっ!」


僕は驚いたよ、これ、もう脅しじゃん。


「あ、あの、アルベルド様…我らの敬愛するエミリア様が…それに慈悲深いシスターリナまで…しかし、二人がどこの誰ともわからない男の性奴隷になる位なら、アルベルド様に所有してもらえませんか? あなたはエロい事には歯止めが効かない事で有名ですが、人格だけは優れていると聞き及んでいます。決してお二人を酷く扱う事はしないと思えます」


僕、エロい事に歯止めが効かないって思われているの? もの凄く傷つくんですけど?


「アル、諦めなさい。もう7人も9人もあまり変わらないわ」


「そうよ、下僕は自分の立ち位置を理解しなさい、それとも鞭でうたれないとわからない?」


僕はどんな立ち位置だよ? 僕、一応英雄だよね? こんな扱い酷くない? それにヒルデはなんで愛人や婚約者や性奴隷が増えるの平気なのかな?


☆☆☆


「それにしても困ったね。まさか捕えた麻薬密売人とケーニスマルク家との接点が出て来ないとは…」


僕達は困っていた。この教会の麻薬密売人を捕えれば、ケーニスマルク家の悪事の証拠が手に入ると、そう思っていたけど、密売人は下っ端ばかりで、話にならない。


多分、重要な事は悪魔に憑依されていたエミリアさんが取り仕切っていたのだろう。しかし、彼女は何も覚えておらず、悪魔ベリアルはフィーネに殺されてしまった。


「これじゃ、ケーニスマルク家に復讐できない…特にエーリヒ!! 婚約者だったリーゼを陥れるなんて、ゆ、許せない!」


「待って下さい。今、ケーニスマルク家への復讐、それにエーリヒに陥れられたって? その話に、わたくしも加えて下さい。わたくしもエーリヒのおかげで奴隷になったのですから!」


「えっ?」


僕は驚いてリーゼと顔を見合わせて、リーゼが仔細を聞く様頷く仕草をすると、聞いた。


「シスター エミリア、あなたの身の上に何があったのですか? 僕達の仲間になるのでしたら、教えてください。あなたとエーリヒの間に何があったのですか?」


「わかりました。その前にわたくしの本当の姿をお見せします。故あって本当の姿は晒せませんでした」


パチンとエミリアさんが指を鳴らすと、エミリアさんの姿が変わった。その姿は人間からエルフへ、髪の色も瞳の色も変わる、すると?


「クラウディヤ!! あなたクラウディヤなのね!!」


突然、お姉さんが大声で彼女をクラウディヤと呼んだ、彼女を知っているのか?


「その節はありがとうございました。勇者エルフリーデ様」


エミリアさん、いや、クラウディヤさんは立ち上がり白い聖職者のローブの裾をあげて、貴族の令嬢のように挨拶をした。この人、元貴族?


ところで、エルフリーデ様って、誰なんだ? お姉さんの事みたいだけど…やばい、僕、お姉さんの名前を知らない。婚約の時もお姉さんと呼んでいた。僕、やばくない? 婚約者の名前を知らなかっただなんて、知れたら、風評被害がきっと大変な事になる!


「変化の指輪ね…何故あなたが奴隷になって、今はシスターになっているの?」


「次第を説明します…」


クラウディヤさんは彼女に起きた悲劇を話してくれた。それがリーゼの復讐への手がかりになるとは、この時は思っていなかった。

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