第45話 アマルフィのダンジョンへ2
僕達は砂浜のキラーラビットを魔法の一閃で滅ぼすと、明くる日の朝にはもうダンジョンに挑んでいた。
目の前には大きなダンジョンの入り口、 ただの洞窟ではなく魔族が作ったばかりのダンジョンなので、街中に突然洞窟の入り口が開いている。そして、警備の守衛、ダンジョンの中は瘴気と魔力で薄明かりが灯っている。
「ダンジョンに入る前にやっておきたい事があるんだ」
「どうしたの、アル? 何をしておきたいの?」
「ヒルデ、それは愚問よ、この性犯罪者は私達を性欲の処理に使いたいのよ。全く警察は何処にいるのかしら?」
「そんな訳ないから!!…って何をキョロキョロとお巡りさんを探してるの!?」
周りをキョロキョロとしだしたリーゼがマジそうなので、慌てて止める。流石にこんな処で職務質問されたくはない。それにエッチな犯罪の大半が推定有罪で決まると聞いた事がある。リーゼの言う事を聞いたお巡りさんがどういう判断をするのかが怖い。
「じゃ、どうしてそんなにリーゼの事を凝視するの? それに落ち着きがない」
「そ、それは……」
「……怪しすぎるわね。とっとと自白して罪を償ってきなさい」
リーゼが僕に迫ってくる。
「下僕が生意気にもリーゼに告白でもするつもりなのかしら、気持ちが悪いわね」
「ええっ!?」
よくわからない勘違いを絶対リーゼはしている。僕はリーゼが心配でレベルをあげようと…それに言葉とは裏腹にリーゼは熱い目で僕を見ている。さっきから何度も僕の方を見ているのも、落ち着きがないのも、凝視しているのもリーゼの方が酷い!
頬を朱に染めたリーゼには悪いけど、本当の事を言おう。だって、リーゼの命に関わる事なんだから、
「リーゼ、君にオーブというレベルを上げる魔導書を読んで欲しいんだ。君は一番レベルが低い。でもこれから謎の魔族と戦う必要に迫られる。だから、少しでもレベルを上げて欲しいんだ」
リーゼが髪をかきあげると、
「そうね……『リーゼの事が好きです。僕の妻になってください』って言えたら、特別に読んであげてもいいわ」
「ええっ!?」
斜め上を行くリーゼの提案に驚く僕…でも、言葉とは裏腹に顔を真っ赤にして、切なそうな顔のリーゼ…これ、絶対、僕に告白して欲しいサインだよね?
僕はリーゼに告白する事にした。僕にとってヒルデもリーゼも大切な女の子だ。でも、告白と言っても、愛しているとかじゃない…大切な仲間…かけがえのない…大切な人を失った僕はまだ新しい恋は始められそうにない。でも、リーゼが僕にとって、かけがえのない人なのは事実だ。
「リ、リーゼはた、た、たいしぇつなぁ、あれ、ちょっと? はあはあ…」
僕はリーゼに告白しようとしたら、突然しどろもどろになって、上手く話せない。
「リ、リーゼはた、大切な、なななな、仲間なんだ…」
うう、上手く言えないよ…僕、良く考えたら、結構ヘタレかもしれない。
「はぁ、アルはヘタレすぎるよぉぉ……」
ヒルデが嘆息する。そんなヒルデみたいに単純になれないよ。リーゼだって不器用だし。
でも、リーゼは僕よりずっと緊張していて、その表情はまるで怯えているようだ。
「(……仲間のままじゃ嫌なの! でも、いつか…好きって言うのよ? リーゼの大好きなご主人様)」
小さな声で震える声でリーゼは僕の耳元で囁いた。
僕もリーゼと同様に耳まで赤くなった。
「情けない男ね。冗談でも口説けないだなんて。とんだヘタレ糞豚野郎だわ」
「面目ない…」
ホントに僕はヘタレ野郎だ。返す言葉もございません。
閑話休題
「じゃあ、これがオーブだよ。封を切って、読んでみて?」
「下僕が泣いて頼むなら仕方ないわね」
別に僕は泣いて頼んではいないけど、今はそれをつっ込んでいる場合じゃない。
リーゼはオーブの書を読み始めた。すると、
「んっ……ああっ……」
リーゼの息が荒くなる。ちょっと、エッチな風にも聞こえる。そして、しばらくして収まると僕はリーゼに聞いた。
「ステータス魔法使えると思うよ。レベルはいくつ? あと、もしかしてユニークスキルがもらえたかもしれない、確認してみて?」
「仕方ないわね。そんなに私の中が見たいのね?」
「その言い方!?」
僕がエロい事言っているように聞こえるのは気のせい?
「あら、レベルが99になっているわね。それに魔弓のスキルを宿したようよ」
「ええっ? 魔弓?」
驚いた。凄いスキルを引き当てた。でもリーゼは上限のレベル99になっても、他のみなみたいな高ステータスは得られない筈、底辺剣士…僕と同じで、星一つの剣士より低い才能の筈だ。
リーゼにステータスを詳しく聞くと、やはり芳しくない内容だった。
…この街の魔族を滅ぼしたら、リーゼはミューラー騎士団長に預かってもらおう。ミューラーの話では、リーゼのお父さんの潔白の証明は順調だ。しかし、もう少し時間がかかるだろうとの事だった。本当はリーゼをミューラーの元に預けたかったが、彼の手元にいると、返ってリーゼの生存がバレてしまって危険になりそうらしい。身の潔白が間違いないものになるまで、僕の元で預かって欲しいとの事だった。
この街の魔族が討伐できる頃にはリーゼの潔白が証明されて、貴族に戻れる。そうすれば、僕はリーゼにさよならをしなければいけない。リーゼと離れるのは辛い。でも、リーゼの為には貴族に戻った方がいい。それに僕はいつまでもリーゼを守りきる自信がない。
リーゼは他の娘みたいに強くないんだ。
僕はそれが間違いだと気づくのに随分と時間がかかった。
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