底辺回復術士Lv999 ~幼馴染を寝取られて勇者に追放された僕は王女様達と楽しく魔王を倒しに行ってきます。ステータス2倍のバフが無くなる事に気がついて今更戻ってこいと言われても知りません~
第10話 初めての冒険は薬草取りからの魔族討伐4
第10話 初めての冒険は薬草取りからの魔族討伐4
僕とヒルデは食事を終えると、後片付けをした。お弁当箱は僕の生活魔法の水を出す魔法(クリエイトウォーター)で洗って、テーブルや椅子と一緒にヒルデの収納魔法で全部しまった。
「ようやく食事が終わったか? 私は魔族バフォメット。12魔戦将軍第7階位である」
「ッ!?」
その言葉で、僕は理解した。つまり下から数えた方が早い弱いヤツだという事だ。
「恐怖で、竦んで、言葉も出ないか? 仕方がないだろう、ふっ」
魔族は、僕がこの魔族の事を理解した事を悟ると、ニヤリと笑った。笑う処じゃないよね?
「ええと……まだ最下層じゃないのに、何故ワザワザ出てきたんですか? もしかして親切な魔族?」
僕は呑気な声で言ってしまった。ヒルデの『あーん』で不甲斐なくもテンションが上がってしまっていたので、許して欲しい。
しかし、実はこの魔族は弱いだけでなく、親切な魔族かと問いかけたが、それは違った様だ。
「私が親切…馬鹿なのですか? 最下層直前まで来たのに、呑気に食事をしているあなた達が不愉快なので、わざわざ1階層降りてきたのです。安心しなさい。二人共、殺してくださいと懇願するまで、追いこんであげますよ。女の方は先ずたっぷり可愛がった後に、その顔をズタズタにしてあげます。」
僕は思った事を言った。
「……クズ」
「なんですと? ふっ、なかなか言いますね。壊しがいがありそうですね。勇気と無謀は違うものだと言う事をわからせてあげましょう」
この魔族が狂暴で悪辣なのは当然なのかもしれない、魔族なのだから。そして、この魔族の表情や話し方から、自身が圧倒的に強者であると自覚しており、圧倒的弱者に痛みを与える事で喜びを得る性分なのは明らかだ。
「いいでしょう。本格的に弄ぶ前に、多少痛い目に遇わせて絶望を感じてもらいましょう。安心してください。簡単に殺しはしません。まずは、私に対する態度を覚えてもらいましょう。その後に弄んであげましょう。その頃にはバフォメット様、お願いです。早く殺して下さいと懇願する様になっている事でしょう!?」
魔族は語尾を強めると、そう言って禍々しい魔力を増大させて突然攻撃魔法を使った。
「王女ブリュンヒルト、あなたのその強気な顔が、媚びるように変わるのが楽しみです」
「―――――~~~~ッ!!!!」
闇の刃が無数生まれてヒルデに迫る。以前の彼女なら、ただで済むはずがなかった。だが、
「お願いですから助けて下さい……って言えば許してくれるのかな?」
次の瞬間、僕は魔族の魔法の術式に干渉して、闇魔法の黒い刃の威力を大幅に減らして、素手で刃を振り払った。魔族の闇の刃はヒルデを切り刻む事無く、僕の前で全て四散する。
ヒルデの方に目を移すと、目に♡マークが見えた。彼女は今、多分脳内妄想で忙しいのだろう。だが、ヒルデの表情は穏やかで、恐怖など感じず、温かいものに包まれているかの様だ。
「ヒルデ、大丈夫だよ」
「ア、アル!?」
自分でも気障だなと思ったが、流石にこんな気持ち悪い魔族にあんな事を言われたら、怯えていただろう。僕はヒルデを助けてあげる事にした。いや、ホントはヒルデ一人でも十分簡単に倒せる筈だけど、僕の自意識が彼女を助ける事を選んだ。僕、外面いいんだよね。
「じゃあ、ヒルデ」
「えっ?……」
僕が今まで見せた事が無い、僕の主武器、禍々しい漆黒の剣を持ち、魔族の方へ剣を向けた。ヒルデはなんと言っていいのかわからないのか、言葉を詰まらせていた。
僕は振り返って、優しく笑を湛えて、彼女にこう言った。
「君の国、君のお父さんの敵、僕に討たせてくれ」
「―――――~~~~ッ!!!!」
つい、カッコをつけてしまったが、どうもその言葉は、ヒルデにハマってしまったらしい。頬を赤らめ、まるで吟遊詩人の語るヒロインが如く…王子様を見るかの様に僕を見つめていた。
「お前の相手は僕だ。すまんがヒルデの相手はお前では力不足だ」
「なんて馬鹿なのでしょう。その女よりは簡単に殺してあげたものを…」
自身の魔法をあっさり無効にされた為か、怒りに満ちた顔で僕を見据える魔族バフォメット。人ならざる魔族の表情というものは僕にはわからない。しかし、魔族は獰猛な笑みを浮かべているのだろう。
「流石にこのダンジョンの最下層まで来ただけの事はあります。その力を認めてあげましょう。……どうです? 今なら、その女を差し出せば、魔族の仲間に加えてあげましょう」
魔族は狡猾だ。強敵と認識したとたん裏切りを持ちかける。強敵と戦うより、仲間に引き込んだ方が得だ。だが、僕の決断が揺らぐ筈もなかった。僕は魔王を倒したいのだ。当然この魔族も…
「いや、断固断る。ヒルデは僕の仲間だ。それに僕はお前ら魔族の考え方には同意できない」
これはカッコつけているだけではない。僕の目標は魔王討伐。従って、全ての魔族は僕の敵だ。味方になる事はあり得無い。
「大変残念です。もちろん、本気で味方にするつもりはありませんでしたが、少しでもそこの勇者の女ブリュンヒルトを嬲る事が出来たなら、良かったのですが…どちらにせよあなたは殺して差し上げます」
魔族バフォメットはそう言うと、全身に魔力を漲ぎらせる。そして右腕を上に上げ、左腕を下に下げる。
「ふふふふふっ!? 右手を上げ、溶解させ、左手を下げて凝固させよう…」
山羊の頭を持つ魔族はその姿を変えて、スライムの様に液体へとその姿を変えて行った。
「魔族の力、思い知らせてあげます。私の力、錬金術の神髄、死に行くあなたに刻み込んであげます」
キシン! と凄まじい勢いで闇の魔法の刃が無数襲い掛かってきた。禍々しく黒く光る刃は鈍く光っている。全く予備動作を見せずに襲い掛かってきたことから、無詠唱の魔法だろう。大抵の人なら不意を突かれて一撃で死んでしまうだろう。だが、戦いに慣れた僕は一気にバックステップでかわす、後ろに一気に飛ぶことによって、その刃の脅威から逃れた、筈だった。
更に僕に襲いかかる黒い刃を魔剣で受けると、黒い刃は僕の剣に触れた瞬間に僕の剣を支点に軌道を突然変えて、ぐにゃりと折れ曲がるように曲がり僕の身体を襲った。
「なんだと……」
魔族の無数の黒い刃が僕の身体を貫いた。
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