聖騎士って何だろう 3

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「聖騎士の話をしていましたね」


 サッシャから目を離し、部屋の中へと視線を戻したカインの顔をのぞき込むように、ジャンルーカが声を掛けてきた。後ろにはディアーナやクリスが立っている。


「夏休みはじめに、国境へ私を送ってくれる際に聖騎士の話をしていましたよね。アルンディラーノやクリスが気にしていたので、調べてきたんです。カインも気になっているのなら一緒に聞きますか?」


 そう言ってジャンルーカは部屋の真ん中にあるテーブルセットを指差した。テーブルの上のカップには相変わらず氷は入っていなかったし、空いたソファーの上には木の枝が無造作に放り投げられていた。

 一年生組はもう魔法の議論に飽きてきたらしい。ちょうど良くカインとサッシャが聖騎士の話をしていたので、興味がそっちに移ってしまったんだろう。


「お茶をお入れしますね」


 休憩の空気を読んで、サッシャが再開したばかりの編み物を中断して腰を上げた。




 三人掛けのソファーには、カインとディアーナとアウロラが座り、向かい側の三人掛けにはアルンディラーノとジャンルーカが座った。お誕生日席にあたる一人掛けソファー二つは、それぞれラトゥールとクリスが座っている。


「国に帰って調べてみたんだけど、ウチの国でも『聖騎士』っていう固定の称号は無いんだ。勲章もない。ただ、過去に一人だけ『聖騎士』を名乗ることが許された騎士がいただけだったんだ」


 全員の前に温かいお茶の入ったカップが行き渡ったのをみてジャンルーカがしゃべり出す。


「騎士の叙勲および報奨勲章について定めた書っていうのがあるんだけど、そこには一応『聖騎士』っていう称号が載ってたんだ。『魔獣の上位存在である魔族・魔王を倒し国を守った事を称える称号』『聖騎士の称号は、騎士としてであればどんな爵位よりも優遇される』って解説が書かれていたよ」


 一番最後におまけみたいにね。と言ってジャンルーカはお茶を一口飲んで口を潤す。


「じゃあ、その過去に一人だけいた人も、魔族か魔王を倒したってこと?」


 冒険譚の読み聞かせをねだるような、ワクワクが止まらない顔でアルンディラーノが続きをねだる。ジャンルーカはそこで、カインの顔を見た。


「魔女の村って覚えてる?」

「ジュリアン様の遷都計画の予定地にあった、おっきな魔法陣ですよね」

「そう。むかしあそこには魔女の村があったんだけど、とある一人の騎士がその村に潜んでいた魔族を倒したらしいんだ。そして、魔女の村に隠されていた魔の国とつながった通路をあの魔法陣で塞いだ。魔族討伐と、今後の魔族侵入を防いだという事で勲章を贈ることになったんだけど、その人は凄い人でさ。すでにエリーズ勲章を持っていたんだって。あ、エリーズ勲章っていうのはサイリユウムの騎士に贈られる最高の勲章のことね」


「すでに最高の勲章を持っていたから、臨時でそれを上回る称号を作ったって事か」

「そう。そしてそれ以降、エリーズ勲章を授与された騎士がさらに上を行く功績を残すなんてことなかったもんだから、聖騎士と呼ばれる騎士は過去に一人だけなんだ」


 もはや伝説だよねー。とジャンルーカはカラカラと笑って話を締めた。

 ジャンルーカの話が終わる頃には時間も頃合いになっており、その日の魔法勉強会はお開きになった。


 クリスとディアーナが、それぞれ考え込むような顔をしていたのだが、カインはディアーナの様子にしか気が回っていなかった。

 カインの中でクリスは光属性の少年だったから。

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区切りの関係でちょっと短めです。

いつも誤字脱字報告、本当にありがとうございます。

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