「貴方は、とても不器用な方ですな」


「おかしい、かしら…」


「とんでもない」

彼が、何故か嬉しそうに笑う。

特徴的な、自身の顎髭を撫でながら。

「よく、時間が痛みを忘れさせてくれると言いますが、あれは嘘です」


「そうなの?」


「ええ。人は忘れる生き物だと言いますが、実際は慣れる生き物なのです。痛みにしろ、喜びにしろ」

慈愛に満ちた表情で、彼は話す。

「ですから、前に進みたいなら、人は痛みに慣れなくては行けません」


「でも、痛みに慣れてしまうのは、何だかとても怖いわ」

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