「ええ。知っているわ」


「それなら、何故です?

貴方は、何故、わざわざこの物語を選んだのですか?」


「愛しているからよ」

悩む事はない。

誰に聞かれたって、答えは決まっている。

「例え、皆が目もくれず、切り離すものだったとしても。

この、後悔と切ない愛おしさに満ちた物語を。

不器用に、誰かを愛した物語を」


「そうでしたか…」


「だって、大事でしょ?

前に進むためには、こういう物語が」

例え、どれだけ苦しくても

「今の私を形成するのは、どうしたって過去だもの。ここから一歩踏み出すために、私は、私の過去を愛する必要があるのよ」

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