⑥
手を伸ばせば、触れられる程の距離にいる、彼女に
心をくすぐるような、春の温かなそよ風のような、そう思わせる声で笑う、その人に
手を伸ばす。
二度と、離さぬように。
綿毛のように、掴みどころのなさそうなその人を、
二度と、逃してしまわぬように。
伸ばした手が、はしゃぎながら笑う彼女に触れる瞬間、雪の勢いが強まり、目の前の映像が、早送りのように流れる。
次に映し出されたのは、どこかの家の室内だった。
見覚えのある場所に、よく似ていた。
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