8/15 痕
いつごろからか、左腕の肘あたりにひどく日焼けが残るようになっている。並大抵のものではなく、明らかに火傷を負ったらしいと感じさせる赤みと水ぶくれが、拳ほどの大きさで広がっている。高校球児だったころにはまったくありえなかったことで、これも年だろうかと苦笑いが出る。
先日乗馬をする機会があり、とはいっても軽く歩かせる程度のものだけれども、1時間あまり外にいて、たいそう酷い有様になった。とはいえ念入りに日焼け止めを塗り、事後には保湿をしたものだけれど、翌日はひどく荒れ、数日経った今でもはっきりと痕が残っている。
8月の火傷痕は不吉だ。空襲の映像を、広島の被曝者を記録した写真を、あるいはそれに準じて描かれたいくつかの創作作品と、何より直に聞いた言葉を思い出す。
もう亡くなってしまった祖母は富山大空襲に遭ったという。大八車を牽いて町中から山側へと逃げて、神通川のあたりで憲兵に止められたそうだ。「空襲が来るなど嘘だ、戻れ」と道を阻まれた。
祖母は荷を捨てて田の中を走り、その頃には闇夜も明るくなっていた。たどり着いた川はうめき声、水を求める叫び、それに無数の死体で埋め尽くされていたそうだ。付言すれば、憲兵の言葉を信じて町へ戻った友人と親族は死体も見つからなかったというが。
さて、これ以上に仔細な描写でむやみに気分を害させたりやたらと涙を誘うようなことも、わかりきった何かを提言することもやめようと思う。
ただ事実があった。同時に傷痕は世代を越えて残り続けている。
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