メイド長への手紙 7

 12年前……。


 サーヤの両親を殺害し自宅に火を放ったのは、このサクマでした。


 ある日その事実を知った時から、サーヤはずっと彼の行方を追い続けていたのです。


 いつか必ず復讐を成し遂げると心に誓って……。




 そして現在――。


 サクマに操られた少女は笑みを浮かべます。


「ねえ、サーヤ。あの時と同じですね? あ、そうか! まだ足りない物がありました」


 少女が指をパチンと鳴らすと、周囲から一斉に火の手が上がります。


「もう貴方は虫の息だ。でも不思議な事があるんですよね。あの時の貴方もこんな状態だったのに……。どうして貴方は助かったのでしょう……?」


「まあ、いい。今度は念入りにらなくちゃあいけないね。貴方は最近、私の事をしつこく嗅ぎ回っていたようですから……。それでいて中々隙をみせない。本当に困ったものですよ」


 サーヤはカグラザカの権力ちからを利用して、ずっとサクマの手掛かりを追っていました。


 しかしそれはサクマに気づかれていたようなのです。


「そう、だからこそエサを使ったのです。目障りな貴方を油断させ、おびき出すエサを……」


 全てが仕組まれた罠だった。


 それを悟ったサーヤ。


 自然と涙が溢れてきます。



 ちくしょう……。



 もう声を出すことも叶わず、心の中で叫び続けます。



 ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!




 ちくしょうがあああああ!!!!




「ふっはははは! 貴方もそんな顔をするんですね! これは傑作だ!」


 少女は手にしていた包丁を思いっきり振りかざします。


「さあ、今度こそ死ねええええ!」



 その時――。



 チュン! ガキン!!



 包丁が何かの衝撃を受けて弾き飛びました。


「――ッ!?」


 今こちらに向かって何かが飛んできた。


 その方向を確認する少女。


 サーヤも渾身の力を振り絞り、視線をそちらへ向けました。


「だはああ~、間に合った~!」


 脱力したような声と共に現れたその人物。


 サーヤはぼやける視界で彼女を見ると。


「ク……ノ……ン……?」


 そう呟いて気を失いました。


「もう! 違いますよ! 私はミクリ! メイド長の可愛い部下です!」

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