ミクリの危険な闇バイト 1
ミクリが組合事務所のドアをガラッと開けると。
「ミクリ―、こいつら何とかしてよー。いっそのこと始末しちゃってもいいからさ。隠ぺいは任せろ」
トウコがエッヘンと言わんばかりに胸を叩きます。
「こ、このクソアマ何を言ってやがんだ!?」
動揺するカラフルボーイズ。
「そうですよトウコさん。私だってむやみやたら人を殺すなってお嬢様から言いつけられたばかりなんですから」
ミクリは冷静な態度を見せます。
「そうだそうだ! 俺達に危害を加えたら俺達のボスが黙ってないぞ! そうと分かったらこの土地の権利を引き渡しやがれ!」
調子に乗るカラフルボーイズ。
「ミクリ、お前は一体どっちの味方なんだ」
トウコは呆れ気味に言います。
「私はあくまで平和的に解決しましょうと言っているんです。例えば……ほら、スポーツとか?」
「それだ!」
ミクリの提案を肯定するように指を差すトウコ。
続けてカラフルボーイズに向かって言い放ちます。
「野球で決着をつけよう。アニーズに勝ったら土地の権利書でも何でも好きなだけもってけ!」
それを聞いたカラフルボーイズのリーダー(ド派手なレッドのスーツ)はニヤリとします。
「言ったな! その言葉忘れんなよ! お前ら引き上げるぞ!」
「「「へい! 兄貴!!」」」
ぞろぞろと事務所を後にします。
……が、すぐに下っ端の男|(モスグリーンのスーツ)だけが戻って来ます。
「あのう。試合の日時と場所は……」
「下っ端は大変だね。じゃあ今度の週末。河川敷球場でどう?」
即答するトウコ。
「それで大丈夫です」
下っ端は合意して事務所を後にすると……。
「兄貴ー! 試合の日時と場所、聞いてきやしたぜー!」
叫びながら帰っていきました。
そんな後ろ姿を見てミクリが一言。
「下っ端さんは蛍光色じゃないんですね」
◇ ◇ ◇
次の日。
事務所の会議室にアニーズのチームメンバーを集めるトウコ。
「次の対戦相手が決まったので発表しまーす!」
静まり返る会議室。
「その相手は……イケーズです!」
「なんだと!?」
「おい! 嘘だろ!」
「くそう、これじゃあ次も負け確定じゃねーか!」
ざわつく会議室。
イケーズとは地元実業団の若手で構成された、いま乗りに乗ったイケイケ集団です。
チームメンバーの全員がまだ20代。
さらにその大半が元高校球児で、中にはなんと甲子園出場経験者もいるのだとか……。
所詮クラブ活動如きのおじさん集団が敵う相手ではない事は明白です。
その時。
「邪魔するぜ!」
噂をすればなんとやら……。
カラフルボーイズとイケーズのチームメンバーがずかずかと会議室へ入って来ました。
「その様子じゃあ、勝負はもう決まったも同然だな。土地の権利書、ちゃんと用意しとけよ」
嘲笑うカラフルボーイズのリーダー、レッド。
それを聞いた八百屋の店主。
「おいトウコちゃん! 土地の権利書ってなんだ!?」
「そ、それは……」
それを聞いたアニーズの面々は怒りを示します。
「一体どういう事だそれは!」
「ざけんじゃねーよ!」
さらにざわつく会議室。
その様子を見ていたイケーズのエース投手、イケダが大声で笑いました。
「あはははは。これは傑作だ! レッドさん、こんな老いぼれ共は俺達がコールドで叩き潰してやりますよ!」
「そいつは頼もしい限りだ」
「まさかこんな茶番に付き合うだけで大金が手に入るなんて、楽な仕事が舞い込んだもんだぜ!」
イケーズの面々もそれに釣られるように笑います。
挑発に手応えを感じたレッド。
トウコに近づくと、肩に手を乗せて囁きます。
「それじゃあ、週末を楽しみに待ってるからな。逃げんじゃねーぞ」
続けて今度は舎弟に向けて言います。
「帰るぞお前ら!」
「「「へい、兄貴!!」」」
レッドの後に続く舎弟たち。
「俺達も帰ろうぜ」
イケダの声で、イケーズも引き上げていきました。
どうやらカラフルボーイズは用心棒として、イケーズへ仕事を依頼したようです。
野球の試合で勝つだけの簡単なお仕事と称して……。
一連の様子を
引き上げていく
「あの人たち、暇なのかなあ……?」
それは平日の真っ昼間のことでした。
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