メイド達の出張業務 エピローグ
魔法使いを管理するための刻印。
普段は魔力がしみ込んだインクを付けて、魔法使いになった者へ押して使います。
その際の痛みはありませんが、押された部位にはまるで刻み込まれたような跡が残るのが特徴です。
「で? なんであんたがそんな物持ってるの?」
アズサは疑問をぶつけます。
「ああ、以前旦那様の部屋からこっそりくすねて、複製品を作ったの」
「くすねた!? うわぁ、相変わらず、あんたはもう……」
「しかもこれ、ただの複製品じゃないんだよ。これで印を刻まれた生物は私に従うようになってるんだ」
「え、なにそれ!? っていうかそんなのあるなら始めから使いなさいよ」
「しょうがいないじゃん。持ってたの忘れてたんだからさー。クロ! よーしよしよし、良い子良い子!」
魔獣の顎をくすぐるミクリ。
「クロ? 白い猫ちゃんなのに?」
アズサは尋ねます。
「え、翼が生えてるから鳥じゃないの?」
「いや、そうじゃなくて……。なんで名前がクロなの?」
「ほら、ここ見て」
ミクリは魔獣を抱きかかえると、その額部分を指差します。
「あー、なるほどね」
そこには四葉のクローバーの形をした印が刻まれていました。
ミクリが一番好きなマークを刻印の柄にしたのだそうです。
◇ ◇ ◇
そして大人しくなった魔獣を連れたミクリとアズサは依頼主である町長を訪ねます。
「なんと! 本当に解決してくれるとは!」
長い間抱えていた問題が解決し、町長は上機嫌です。
「いやあ、苦労しました」
ミクリは得意気に言います。
「報酬はたんまり、振り込ませて頂きますので!」
「え!?」
「どうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもありません……」
報酬が振込みという事は、取り分は全て当主の物となります。
あれだけ頑張ったっていうのに自身への報酬はゼロ。
ガックリ肩を落とすミクリ。
その肩にアズサはポンと手を乗せるのでした。
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