メイド達の出張業務 3

 魔獣の猛攻を何とか躱しながら逃げ続けるミクリとアズサ。


 そろそろ箒で飛ぶ気力も限界に近づこうとしている中、ミクリは大胆な作戦を思いつきます。


「捕獲だって!?」


 驚くアズサ。


「うん。ほら、私たちってこれのせいで魔法に制限があるでしょう?」


 そう言って自身の服の胸元を少しだけめくるミクリ。


 そこには小さな六芒星の印と数字が刻まれています。


 これこそが管理されている証であり、魔法を制限する素因なのです。


 身分証明としても使われる為、普通は手の甲に刻むのですが……。その辺について触れるのはまた今度にしましょう。


「ミクリ! それが何だって言うの!?」


「だから、それと同じ原理で言う事を聞かせるの」


 ミクリは箒の高度を下げながら急停止し、魔獣を自身の前方へ行かせます。


 魔獣はすぐにミクリ達の方へ振り向きますが、双方の間に多少の距離が生まれました。


 ミクリは透かさず何かを懐から取り出し、魔獣に向かて投げます。


 そして――。


「さあ、掛かって来なさい!」


 魔獣の口からビームが放たれます。


「あぁぁぁああああ! 死ぬぅ! 今度こそ死ぬ!!」


 喚くアズサ。


 その時。


「起動、オブジェクト変更!」


 ミクリの声と共に、先ほど彼女が魔獣に向かって投げた物が巨大化していきます。


 それは刻印でした。


 そう、魔法使いを管理するために使用する刻印。


 そしてついに魔獣の口から放たれたビーム!!



 しかし――。



 巨大化した刻印はミクリとアズサを守るように盾となって、ビームを吸収し始めたのです。


「さあ、覚悟しなさい!」


 ミクリが人差し指をビシッと魔獣に向けると、先ほど吸収したビームが今度は刻印から魔獣へ向かって放たれます。


「ギャオオオオ!!」


 ビームを食らった魔獣は悲鳴を上げ、みるみると縮んでいきました。


 そのまま両腕で抱えられるくらいの大きさになると、ふわふわとミクリの所へ近寄って来ます。


「さあ、おいでおいで」


「んみゃー、ごろごろ……」


 そして甘い声を出すと、ミクリの胸に飛び込んできました。


「よーし、よしよしよし……。良い子だ!」


 それを撫でるミクリ。


 後ろから見ていたアズサは理解が追い付かなく混乱します。


「え? 何? どういう事? 終わったの?」


「バッチリ! 捕獲成功!」


 ミクリは親指を立てました。

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