第27話
(※レナード視点)
「怪しい人物というのは、いったい誰なんですか?」
「それは、彼です」
彼女は資料に載っているある人物の写真を指差した。
それは、ゲイブの病院の経営者であり、彼の遺体の第一発見者でもあるジョエルだった。
「彼がですか? なにか、根拠があるのですか?」
「そうですね……、今のところ確かな証拠はありませんが、調べれば出てくると思いますよ。おそらく彼は、詐欺師です」
「詐欺師!?」
思わぬ言葉が出てきて、私は驚いた。
「えっと、どういうことでしょう? どうして彼が、詐欺師なんですか?」
「今のところ証拠はありません。ただ、資料を見て、そうとしか思えないと考えただけです。でも、彼を調べれば、すぐにわかりますよ。ゲイブは難病を治せる医者として知られていたみたいですね」
「え、ええ、そうですね」
「そして今、また新たに難病を治せる医者が現れています。それが偶然にもまた、ジョエルが経営している病院です」
「確かに、そうですね……」
「まあ、本当に難病を治せるノウハウがあるのかもしれませんが、私はこう考えています。難病を治してもらった患者は、そもそも難病ではなかったのです」
「え……」
彼女が何を言っているのか、私にはわからなかった。
そもそも、難病ではなかった?
でも、実際に治してもらっているじゃないか……。
「まず私が気になったのは、難病になった人物が、ここ最近かなり増加していることです。そして、難病を治せるといっても、全員を治しているわけではありません。何人かは、亡くなっています」
「ええ、そうですね。しかし、どんな凄腕の医者でも、全員を完璧に治すなんて不可能ですよ」
「そうですね。でも、私はこう考えています。なくなってしまった人は、本当に難病にかかっていた人で、治った人は、最初から難病ではなかったのです」
「え、まさか……」
ようやく私も、彼女が何を言おうとしているのか、ぼんやりとわかってきた。
「すべては、病院の自作自演だったのです。まず、初期の診断で、難病にかかっていると嘘をつく。そして、薬を過剰に投与したのです。毒薬変じて薬となるといいますが、まさにそれですね。彼は、薬を毒薬にしたのです。どんなに良い薬でも、過剰に与えれば体に悪影響が出ます。そして、体調が悪くなった患者を、今度は適切な量の薬を与えて、治してあげるのです。これで、あたかも難病が治ったように見せかけることができます」
「な、なるほど……。憲兵を総動員して、ジョエルや病院関係の捜査しようと思います。これだけの患者がいるから、何か証拠が出てくるはずだ」
私は彼女の助言をきっかけに、捜査に乗り出した。
そして、その結果……。
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