第25話

 (※ジョエル視点)


 私はカールトンに呼び出され、彼がいる病院へ向かっていた。


 こういうシチュエーションが、以前にもあったな、と思っていた。

 ゲイブに借金を迫られていた時だ。

 しかし、彼とカールストンは違う。

 彼は、ギャンブルはしないと言っていた。


 たぶん、仕事のことで何か相談があるのだろう。

 新しい器具が欲しいとか、そういうことのための金なら、べつに問題はない。

 おそらく彼が私を呼びだしたのは、そういう相談があるからだと思う。

 しかし、そうではなかった。


 私は彼の部屋に入り、彼から衝撃的な言葉を聞いた。


「あの、実はお願いがありまして……、昨日、ギャンブルで大負けしてしまったのですが、その、借金を背負ってしまったんです。それで、返済期間までにまとまったお金を用意しなければならないのですが、お借りすることはできませんか?」


「貴様は、何を言っているんだ!」


 私は思わず怒鳴り散らしていた。


「ギャンブルで負けただと!? 貴様、ギャンブルはやっていないと言っていたではないか! 神に誓って嘘ではないと、言っただろう!」


「いえ、言っていません。あ、もちろん、神に誓って嘘は言っていませんよ。私の言葉を、正確に思い出してください。私は、ギャンブルはやったことがない、と言ったのです。その時点では、本当にやったことがなかったので、嘘ではありません」


「何を屁理屈を言っているんだ! どうしてギャンブルに手を出したんだ!?」


「すいません。先日、旧友に誘われまして、その日は大勝ちしたんです。それで、自分にはギャンブルの才能があると思って調子に乗っていたら、見事に負けてしまいました」


「ふん、そんな馬鹿な奴に貸す金などない! ほかを当たれ。そして、二度とギャンブルはするな!」


「そんな……。あなたしか、頼れる人がいないんですよ。ギャンブルは金輪際やらないと約束しますから、どうか……」


 カールトンは頭を下げた。


「今後はギャンブルはやらないと、神に誓うか?」


「え……、それは……」


「神に誓うか!?」


「はい! 神に誓います! だからどうか、お金を貸してください!」


「しかたがない、今回だけだぞ」


「あ、ありがとうございます!」


 カールトンは笑顔になった。

 しかし私は、この時の選択を後悔することになるのだった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る