第4話

 (※ジョエル視点)


「貴様……、私を脅そうというのか?」


 私の声は、僅かに震えていた。

 ただの医師ごときが、この私に楯突こうというのか?

 まさか、こんなことになるなんて、まったく想定していなかった……。


「悪く思わないでください。しかし、私も切羽詰まっているのです。借金返済の機嫌は、すぐそこまで迫っているのです。もう、どうしようもないんですよ」


 彼の顔を、必死だった。

 確かに、私に楯突くのには、ある程度の勇気が必要だったのだろう。

 借金は明らかに彼の自業自得だが、秘密をバラされるのは困る。

 非常に癪だが、まあ、金で解決できるのならそれに越したことはない。


「わかった。金は貸してやろう。ただし、二度とギャンブルには手を出すなよ」


「そ……、そんな……、ギャンブルは、今となっては私の生き甲斐なんです! それを奪うなんて、あんまりです!」


「馬鹿か君は! 借金を作るほど嵌っているのに、何が生き甲斐だ! この条件を飲めないのなら、金は一切貸さないぞ!」


「……ええ。そうですね……、わかりましたよ。ギャンブルにはもう、手を出しません。身を滅ぼす前に辞めるのが、一番いいですからね。これ以上は、本当に抜け出せなくなりますから、ちょうどいい潮時なのかもしれません……」


「わかればいいんだ……。この病院は、君にしか任せられない。今後ともよろしく頼むぞ」


「はい、本当にありがとうございます」


 彼とは、そこで別れた。

 やれやれ……、思わぬ事態になったが、うまく収めることができた。

 私は大きく息を吐いた。


 まさか、彼が私を脅そうとするなんて、思ってもみなかった。

 彼の代わりの院長を探すべきか?

 いや、秘密を知る者は、なるべく少ない方がいい。

 これ以上秘密を知る者を増やすのは、得策ではない。


 それに、彼にクビにすると言えば、間違いなく秘密を漏らすと脅してくるだろう。

 それだけは、避けなければならない。


 まあ、今日はひやりとすることもあったが、うまく収まってよかった。

 これで、私は元の幸せな日常に戻ることができる。


 そう思っていたのだが……。

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