第4話
「何するのよ! もっと慎重に渡しなさい! 紅茶が私の膝にこぼれてしまったじゃないの! 火傷してしまったかもしれないわ!」
「それは大変だ! 今すぐ病院へ行こう!」
「……え?」
ウォーレンの言葉に、リンダは驚いていた。
そして病弱という設定を思い出したのか、何事もなかったかのようにベッドに腰かけた。
そして、ウォーレンに反論する。
「病院はダメよ! いえ、行く必要はないわ」
「どうして? 火傷の跡が残ったら大変だ。先生に診てもらおう」
「心配してくれるのは嬉しいわ。でも、本当に大丈夫だから」
「あ、そうか。いつも診てもらっている先生は、亡くなったんだったね」
「え、ウォーレン、どうしてそれを知っているの?」
「昨日、レイラに聞いたから。とにかく、ほかの病院で診てもらおう」
「ダメよ! それだけは絶対だめ! ほかの病院なんて、絶対に行かないわ!」
「どうして、そんなに拒むんだ。やけどが原因で君の病状がさらに悪化したら大変だ。だから、病院で診てもらった方がいい」
「病院は絶対にダメよ! 本当に、大丈夫だから。ウォーレン、心配してくれるのは嬉しいけど、本当に大丈夫なの」
「そうか……。君がそこまで言うのなら、わかったよ。無理に病院へ行けなんて言わない」
「ありがとう、わかってくれて」
私は二人のやり取りを見て楽しんでいた。
どうしてリンダが病院へ行くことをあんなに嫌がっていたのか、その理由が私にはわかる。
まあ、考えればわかることだ。
今日のところは満足して、私は部屋を出て行った。
*
(※ウォーレン視点)
おれはリンダのこぼした紅茶とカップの破片を掃除して、彼女をベッドで仰向けになるのを手伝った。
今日は彼女も疲れただろうから、おれは自分の部屋へ戻った。
リンダの病状が悪化していないか心配だったが、彼女があれだけ大丈夫というのなら、きっと大丈夫なのだろう。
それにしてもレイラの奴、不注意にもほどがある。
リンダは病弱なせいで起き上がるのもやっとなのに、カップの渡し方が雑だ。
あれではリンダが受け損なってしまうのも無理はない。
きちんと注意しておかないと。
リンダの膝は大丈夫だっただろうか。
火傷の跡が残っていなければいいが……。
さすがに彼女のスカートをめくって確認なんてできなかったけど、本当に心配である。
あの時のリンダの驚き方からして、かなり熱かったのだろう。
あんなに勢いよく飛び跳ねて……。
あれ?
飛び跳ねていた?
病弱なあのリンダが?
え、あの時確かに、飛び跳ねていたよな……。
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