第3話

 (※リンダ視点)


 まさか、サイモン先生が亡くなっていたなんて……。

 そんなこと、全然知らなかった。

 これは、非常にまずいわ。

 あの女、どうしてあんなにも動じていないのかと思っていたけど、このことを知っていたからね。


 本当に、どうしよう……。

 ウォーレンに相談するべきかしら。

 いえ、どうやって説明するというの!?

 彼だって、私のことを病弱だと思っている。

 今更それが嘘だなんて言ったら、彼に嫌われてしまうわ。


 それにしても、どうしてレイラは、私が病弱だというのは嘘だと言いふらさないのだろう。

 サイモン先生が亡くなっていると知ってから、数日が経過しているのに。

 まさか、私が自分でついた嘘がバレないか心配しているところを見て、楽しんでいるの!?

 ええ、絶対にそうだわ。


 悔しい。

 こちらが圧倒的に有利な立場だったのに、逆転してしまった。

 私の命運は、彼女の手のひらの上ということか……。

 でも、バレないようになんとかしないと。

 絶対に周りにバレないように、病弱だと演じ切って見せるわ!


     *


 私はリンダがいる部屋に向かっていた。

 結局、リンダとウォーレンは屋敷から追い出さなかった。

 当然、私も出て行かないけれど。

 ウォーレンとリンダは、離れた別棟にいる。


 普段の生活では顔を合わせることもないので、彼らに苛立たせられることもない。

 それに、最近は小さな楽しみも見つけた。

 今、リンダの部屋に向かっているのも、その楽しみのためだ。


 彼女の部屋に着いた。

 私はドアをノックして、返事が聞こえたので中に入った。

 部屋の中には、ベッドで寝たきりになっているリンダと、そのそばにある椅子に腰かけているウォーレンがいた。


「何の用だ?」


「新しい紅茶を買ったので、そのお裾分けです」


 私はウォーレンの問に答えた。

 そして、カップに入れた紅茶をリンダに渡そうとした。

 しかし、彼女はベッドから自分では起き上がれないので(という設定)、ウォーレンに起こしてもらっていた。


「はい、どうぞ」


 私はリンダに紅茶が入ったカップを渡した。


「ありがとう」


 彼女はそれを受け取った。

 しかし、うまく手渡すことができず、カップに入っている紅茶が、彼女の膝の上でこぼれてしまった。


「熱い!」


 彼女は驚いて、反射的に勢いよく立ち上がった。

 一人ではベッドから起き上がることもできないのに(という設定)、機敏な動きだった。


 そう、最近の私の楽しみはこれである。

 病弱なのが嘘だとバレることを恐れているリンダに墓穴を掘らせ、周りの人たちに彼女は病弱ではないと周知させることだ。


 早速、ウォーレンの前で病弱にあるまじき動きをしているけれど、大丈夫なのかしら?

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