第十八話
「ルーシア様は婚約者様とどのような関係を築いているんですか?」
「きゅ、急になんですの!?」
ルーシア様も学園に来るようになり、私の周りは以前と同じように騒がしくなった。けれど、今日は私とお姉様についての言い合いではなく、ルーシア様個人についてのようです。
「いえ、先日、父が私にもそろそろ婚約者を見つけるべきだという話になりまして……。その……こう言った話に憧れはありましたが、いざ自分の番となるとあまり想像もつかず、ルーシア様のお話をお聞きしたいと思いまして……ダメ……でしょうか?」
「……いえ、ダメではありませんわ。ですが、あまりリリア様にとっては参考にならないと思いますわよ。それでもよろしいのですか?」
「はい!」
「……私の婚約者、リアム様は王族です。ですので会うのは私の家か、王城。そのどちらかになります」
「どこかにお出かけしたりはなさらないのですか?」
「あまりないですね。護衛を連れて数回はありますが、大抵は家の中です。外は街中と言っても危険が多いですからね」
「そうなのですか……?」
この認識の違いは貴族の階級にあると思う。男爵家や子爵家のような下級貴族は領民との距離が近い。だからこそ自分の足で出かけることを想像する。
けれど、爵位が上になればなるほど、お金目的の誘拐か、命を狙われるかのどちらかが多くなります。そのため、買い物は商人を自分の家に招いてその場で欲しいものを購入する。もしくはオーダーメイドとなります。
私もアースベルト家の一員となってからは自分の足で出かけると言う機会は滅多に無くなってしました。
「あまり参考にはならなかったでしょう?」
ルーシア様が苦笑い気味にリリア様に問いかける。
「この公爵家と王族となると私の想像できない関係なのは理解できました。ですが、寂しくないですか?」
「寂しくはありませんよ。リアム様はこまめにお手紙をいただけますし、プレゼントもその……頂いていますし。予定が空いたら会いに来てもくださいます。ですが、そうですね、リリア様の言う通り一度でもいいので二人で市場に出て自分の足でお買い物をしてみたいですね」
「……申し訳ありません」
「謝らないでください。そうですわ! 私よりもシェリア様はどうなのですか? 確かお相手は公爵家だったはず。それなら私よりもまだリリア様の参考になるのではないでしょうか」
「私?」
ルーシア様がお姉様に話題を振る。振るというよりも丸投げをする。
「シェリア様、よろしければ聞かせてください!」
「私も一般的じゃないよ?」
「はい! それでもお聞かせください!」
「うーん、でも私もルーシアちゃんと同じだよ? レオとはほとんど家で会ってる。違うのは出かける時は二人で一緒にいる事ができる事くらいかしら?」
「そうですか……」
「ごめんね? あんまり参考にならなかったでしょう?」
「貴族の階級の違いを今日初めて実感しました」
そう落ち込むリリア様。普通、もっと違うところで実感するんですけどね……。
すると、何か思いついたように、こちらを見てくるリリア様。
「では! アリシア様はどうでしょうか!」
「残念ながらまだ婚約者はいないわ」
「お決めにならないのですか?」
「なりたいって人はいっぱいいるんだけどね。先約があるから全部断っているの」
「お、お姉様!? それは初めてお聞きしたのですか!?」
「だって言ってないもの」
私の驚きに対して、しれっと返すお姉様。そして、私以上に食い付いたお嬢様が二人
「シェリア様! それはどのようなお方なのですか!? アリシア様にふさわしいお方なのでしょうか!?」
お姉様にすごい勢いで詰め寄るルーシア様。
「シェリア様、差し支えなければ教えてもらえないでしょうか?」
ルーシア様程ではないとは言え、興味津々である事が隠せてはいないリリア様。
「んー、今は内緒かな? まだ準備中みたいだし……」
「お姉様、それは私にも……ですか?」
「そうね、相手が家を通してではなく自分の口から伝えたいって言っているからね。でもアリシアには家の事を考えず、自分の好きな人を見つけてもらいたいの。だから言えない」
「……わかりました」
私の好きな人……か。思いつくのはいつも私を助けてくれていたリオン様。一人で突き進んでいた私を支えてくれた人。
慌てて首を横に振る。リオン様は恩人です。それに私は甘えてばかりで、何もリオン様に返す事ができていません。この気持ちはせめて、この国のために何かを成し遂げてから、もし、もしもその時にリオン様に婚約者がいないのであれば伝えたいと思います。
まぁ、そんなことはないとは思いますけどね。だって、リオン様は王族なのですから……
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